516【ガーネス】
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2話連続投稿します(1話目)
翌日。伸びをして、欠伸をすると、まわりを確認した。たまに、魔獣が粘っていたこともあったからだ。
今日は、魔獣はいなかった。代わりに男性がいた。背中を向けているので、年齢はわからない。マントを毛布代わりにして座りながら、コクコクと居眠りしていた。
一応、野営の道具類を見られても大丈夫か確認してから、遮音の魔導具を止め、声を掛けてみる。
「おい!」
ビクッとする男性。
「大丈夫か?」
その言葉に、男性はこちらを振り返った。同時に剣を構えて。それなりの冒険者のようだ。黒褐色のエルフ、ダークエルフだった。
オレを見る目がはっきり覚めたところで、彼は剣を収め、詫びた。
「剣を向けて、申し訳ない」
「謝罪を受け入れます。なぜ、ここに?」
「あー、街道をそれたら、道に迷ってしまって。そんなときに焚き火を見つけた」
「それでここで野営を?」
「そうだ。しかし、結界で入れぬし、大声で叫んだが、聞こえておらぬようす。諦めて、ここで野営した。二回、ウルフの群れが来たので、倒した」
あたりを見るが、死骸はない。
「空間魔法で収めた。ニオイが広がるのはマズいのでな」
「わかった」
鑑定さんが彼のステータスを出してくれる。特別な状態でもなさそうだ。善悪はわからないが、変なスキルもない。
安心ではないが警戒しながら、結界を止める。
「結界を外した。茶でも飲むか?」
「ありがたい」
そうして、湯を沸かし、お茶を淹れる。
こちらが飲んでから、勧める。
そのあいだに、小さくなった焚き火を片付ける。
「尋ねてもいいだろうか?」
「どうぞ。内容によっては答えないがね」
「それでいい。私はB級冒険者のガーネス・ブレイズファング」
「オレもB級冒険者だ。サブと呼んでくれ」
「わかった。なぜ、こんなところに?」
「迷ったわけじゃない。適当な場所があったから、野営した。それだけだ」
「ふつう、ひとりで野営するものじゃないぞ?」
「人のことを言えるのか?」
「失礼した」と頬を掻く。「ここで狩猟でも?」
「旅の途中。ダイナーク国へ向かってる。仲間がそっちに向かっててな。あっ、急いでいるから、同行は断るぞ」
「残念だ」と笑む。「ゆうべは全然聞こえなかったのか?」
「遮音の魔導具を使ってたからな」
「遮音か、なるほど」お茶を啜る。
「迷ったのは聞いたが、なぜ街道からそれる必要があった? 答えなくてもいいが」
「追手だ。心配ない。撒いたのを確認してある」
「ガーネスは、犯罪者か?」と聞くが、そうではないのは、鑑定さんが保証している。
「逆恨みだよ。依頼で犯罪者を追い掛けて、抵抗されたので、切り捨てた。そしたら、その弟から追われる羽目になった」
「御愁傷様」
「イザとなれば、切り捨てることにしている。すでに冒険者ギルドには相談済でな」と懐から書類を出して、オレに振って見せる。
「ならなぜ?」
「切り捨てないか? 犯罪者でもない相手だぞ。ただ、しつこいだけで、撒けばいい。それに護衛らしい冒険者はいても、ランクは低そうだしな。盗賊か魔獣に襲われるだろう。そっちを期待しているのさ」
「なるほど」
少なくとも怖い思いをすれば、追ってはこないだろう、と期待してか。それとも、盗賊や魔獣に始末させるとか? まぁ、いい。
「朝飯は?」
「もらえると助かる」
道具を取り出し、鍋を火に掛ける。鍋にはゆうべの残り。アイテムボックスだから、時間経過しないが、彼の前では温め直すフリをする。
「マジックバッグ。それも時間経過軽減か」
「これのおかげで、随分と助かってるよ」とバッグをポンポンと叩く。
「だろうな」
彼が荷物から、受け皿を出す。そこにはスプーンも。どちらも木製だ。木製は軽量だし丈夫だし、ダメになっても、買い替えが楽だからな。彼がそれなりの冒険者である証拠とも言える。
その受け皿を受け取り、ごった煮を入れて、渡す。
「おお、根菜がゴロッと。いいニオイだ」
「味付けは、独特かもしれん。どうぞ」
オレも自分の受け皿に入れて、食べる。
味噌を入れてある。出汁は根菜やキノコからだ。肉も入れてある。
「あるだけだが、お代わりもどうぞ」
ハフハフしながら、うなずく彼。
「はぁ。ありがとう。温かいメシはやはり良いな」
三杯お代わりしたガーネスは、腹をさすっている。
「お粗末様」
お茶を渡す。
鍋は見事にカラになった。
受け皿とともに余分な汚れをボロキレで拭き取り、クリアして、しまう。魔導コンロなどの道具類も。
お茶を啜り、ひと息つく。
「それで? ガーネスとしては、どうしたいんだ? 街道までなら案内できるが、こっちも急ぎの旅なんだ」
「それで頼む。街道に出れば、どっちかの村には着けるだろう」
「どっちがいい、とかないのか?」
「どっちもどっちだ」
「それもそうか」とオレは肩を竦めた。
ガーネスを街道まで、徒歩で案内する。
それで、どっちが村に近いか教えた。
「ありがとう、助かった。この礼は」
「いらないよ。じゃ」
オレはすぐさま来た道を戻る。
ガーネスから見えないところで、透明化して、浮遊する。
そうして、とりあえず魔導バイクを出せる場所へと移動した。
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