511【事件の原因】
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2話連続投稿します(2話目)
頭を悩ませながらも、冒険者ギルドに到着した。
とりあえず、領主様の使いだと言って、ギルマスとの面会を求めた。
すぐにとおされた。
ギルマスとは、面識がある。とはいえ、面会したのは一度だけ。厳つい男性だ。
ともにいるのは、小人族の女性。副ギルマスだ。ダルトンの出身地のとなり村の住民らしい。彼女とは二度の面識。
「ギルマスのロイドだ。領主様の使いと聞いたが」
「お久しぶりです」
「ん?」
あっ、わかってないな。
オレは、スタンガンを取り出して、一度起動した。バチバチバチッと激しい音がする。すぐに止めた。
「おまえ!」
やっと気付いてくれたな。
「どうも」
「お、おう」
スタンガンはしまう。代わりに、領主様からの依頼書を出して、渡す。
それを読むふたり。
「それで?」
依頼書を返してくれる。
「領主様に報告したいんだが、その前に領軍の情報が欲しい。わかっている範囲で構わない」
「領軍か。広場に下っ端がいる」
うなずく。
「四日前に、町を出てから、帰ってこない。盗賊団の討伐で来ていたはずだ」
「盗賊団の方は?」
「六日前から報告が上がってきていない。パタリとやんだ。しかし、ひとりが町で捕まって、自白させた。そいつは盗賊団と内通していて、めぼしい商隊がいたら、盗賊団へと知らせていた。そいつによれば、六日前から連絡が取れていないそうだ」
「アジトの場所は?」
「知らないそうだ。連絡方法は門を出て、キャンプを張り、そこでひと晩過ごす。そこに連絡役が来る」
「前日には、獲物のことを知るわけか」
「そうだ」
「魔獣の方はどうだ? 何か強い魔獣が現れたとか」
「この辺にいるのは、ツノウサギやゴブリンやオーク、ウルフがいるくらいだ。そんなの、領軍ならば敵じゃない。よっぽどの大群ならば別だが、そんな報告もない」
「いいですか?」と副ギルマス。
うなずいて、促す。
「関係あるかはわかりませんけれど、魔獣の出現が、ここのところ、少なくなっています。依頼も討伐も買い取りも減っています」
「減ってる? そんなに目に見えて?」
「いえ。減ったなぁ、くらいの程度です。冬になれば減るのは当然なのですが、この時期に減ることはありませんので」
「なるほど。わかりました。領主様への報告を書きます」
用紙をもらい、わかったことを書き出す。
「至急、届けるようにお願いします」
副ギルマスが受け取り、用紙の一部にその旨が書き足された。それから魔導通信機で送られた。
「それで、おまえとしてはどうするつもりだ?」
「とりあえず、あたりの探索をするつもりです。塀の周辺には目を通したので、森の中を」
「ひとりでか?」と怪訝になる。
「ええ。軽く見てまわる程度です。危険には近寄らないようにします。危険と判断したら退き、お知らせします」
「……わかった。誰か付けろ、と言いたいところだが、いらねえだろ?」
「ええ。同行者がいては、集中できませんからね」
「なんかあったら、どうする? おまえさんが囚われたとか」
「ありえますが、そのときは二日待ってください。戻らなければ、領主様に連絡を。そのころには死んでいるでしょうから」
「縁起でもねぇ! そういうのはやめろ!」
「とにかく、今日中には戻ってきます」
「おう、そうしてくれ」
レイバク町の門を出て、しばらく歩くと、森の端に到着する。
しかし、大勢の人間の反応がない、ということは、すでに死んでいると思っていいだろう。それは仕方ない。
問題は、その原因だ。強力な魔獣や群れを作る魔獣ではない。すでに探知済だ。ダンジョンでもない。
どうやって探せばいい?
オレは、歩みを進めながら、考える。探知は常時発動しているから、危険が迫ったら、反応できる。
しばらく考えて、思い付いた。もっと早くに思い付くべきだった。まぁ、それはいい。
探知の条件を剣に切り替える。そう、剣だ。盗賊団も領軍も剣を携えていたはずだ。その剣が少なくとも二箇所に固まっているはず。盗賊団と領軍のものが。
念のために、武器防具も含める。
探知開始。
当たった!
周辺に危険な魔獣は? いない。
とりあえず、それなりに距離もあるし、飛んでいくことにした。透明化も忘れずに。
現場に到着した。
上空からは、木の枝が邪魔で確認が取れない。それでも陽が当たって、金属の煌めきが見えた。
降りていくと、枝が間近になり……突然、探知が危険を知らせてきた。
反射的に、上昇に切り替えた。
次の瞬間、何かが枝の中から飛び出して向かってきた。
だが、オレに届く手前で、重力に逆らえずに落ちていく。
なんだ?
鑑定すると、出た。
「スライム!?」
スライムが飛ぶのはあるが、それほどのジャンプ力はない。
鑑定内容をよく見てみる。
うわっ、肉食スライムだって。しかも獰猛とある。それで飛び掛かってきたわけか。
「どうしよ」
肉食スライムがあの一個体だけとは思えない。アレを条件にして索敵。
「うわぁ~、あかんわ」
なんと、そこら中にいる。
これは想定外だわ。
最弱だと考えていたスライムが、獰猛な肉食。それが、これだけの数、襲い掛かってきたら、混乱すること請け合いだ。
盗賊団も領軍もこれにやられたのだろうな。魔獣が減ったのも、このスライム群が原因だろう。
あー、まいった。
こんなもん、どうしろと?
いや、とにかく、これは危険だ。どのくらいの増殖スピードがあるかはわからないが、この場だけに留まっているとは思えない。
少なくとも、このエリアを封鎖しなければ。
証拠として、領軍の兵士のものと思われる剣をひとつ、バキュームする。
それから、肉食スライムの存在を探知して、存在している範囲を確認する。
地図にバッテンを付けて、おおよその範囲を示す。ギルマスに見せるために。
上空から地面の見える場所に、ゴブリン一匹を落としてみた。
どのくらいの消化速度なのか調べるために。
地上に届く前に、スライムが飛び付いた。次から次へと。
地面に落ちたときに一瞬離れたが、すぐに飛び付く。ほかのスライムたちも飛び掛かってくる。これが人間なら混乱して暴れまわり、鼻や口を塞がれて窒息死するな。
消化は思ったほどのスピードはない。死骸ならば、急ぐ必要はないからな。しかし、死体は残ることはない。骨まで溶かすだろう。
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