510【行方不明事件の聞き取り調査】
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2話連続投稿します(1話目)
今話は、少し短めです。
レイバク町までは、上空から見た感じ、これといった異変はなかった。
途中の人通りのないあたりで、移動機(仮)を降り、収納すると、透明化して浮遊する。
まずは、町のまわりを飛ぶ。三周したが塀にも異常はないし、まわりのようすにおかしなところはない。
原因は、町の中か?
そこで、街道からふつうに町に入った。
衛兵のひとりに尋ねる。
「なぁ、領軍が来たって聞いて、商売に来たんだけど。どこにいるかな?」
「領軍? いなくなったよ。広場に下っ端、置いてさ」
「なんで?」
「知らんよ。下っ端たちも困ってたよ」
「その下っ端は?」
「広場にいるよ。金は持ってるから、多少は商売になるんじゃねぇか」
「わかった。行ってみるよ」
お礼を言って、広場に向かう。
広場の入り口には、衛兵が待機していた。大きい広場では、冒険者同士の諍いが多い。それをたしなめるためにいるのだ。
「こんにちは」
「なんだ?」
「オレは商人なんだが、こちらに領軍の残りがいると聞いてきたんだ。商売になるかと思ってね。いるかい?」
「ああ。奥の」と指差す衛兵。そちらに目をやるオレ。「テントだ。領軍の兵士たちがいなくなったままでな。その帰りを待ってるよ。旅人が多くなって、テントが張れないと文句を言われたので、使わないテントを畳ませたんだ」
「そうか。ありがとう」
オレは、その示されたテントへと向かう。
テントのまわりには、馬が数頭、草を食んでいる。馬車があり、荷が積まれ、シートで覆われていて、ロープで固定されていた。
近付くと、剣戟が聞こえてきた。音からすると、木剣だ。それが三つほど。
そちらに行くと、やはり木剣での訓練をしていた。ふたり一組となり、六人でやっている。そこから外れて、四人が休んでいた。みな、若い。
「おーい」と声を掛ける。
全員が振り向いた。訓練を中止して。
剣戟を交えていた中から、ひとりが声を返した。
「何かご用でしょうか」
「B級冒険者のサブと言います。領主様より調査を命じられ、こちらにまいりました」
「領主様から!」
彼だけでなく、全員が驚きとともによろこんでいる。それだけ困っていたのだろう。
オレたちは、地面に車座になって座った。
まずは、オレの身元を明かす。それから領主様からの依頼書を見せた。
納得してもらえたので、話をすることに。
「まず、君たちは?」
「領軍の兵士見習いです。主に下働きをしています」と最初に声を返してきた男性。
「人数はここにいる全員?」
うなずく。
「君たち自身に困ったことは?」
「ありません。食料も持ってきていますし、活動資金の金銭もあります。大金なので、それを守る必要があり、それが負担に」と苦笑い。
「わかった。ケガや病気はしていないんだね」
うなずく。
「では、状況を整理して教えて欲しい。領主様のお話では、軍団長が率いてこちらに来たんだったよな」
「はい」
彼は出立から話してくれる。
盗賊団の被害が多くなり、軍団長はじめとした領軍50人(彼らも含む)で出立。
到着したはいいが、被害の報がなくなっていて、幹部が相談して、まずは様子見として領軍を休ませた。そのあいだに情報を両ギルドから仕入れた。
情報を精査し、盗賊団がいると思われる場所を特定して、そこを虱潰しに探索することに決まった。
領軍がここを発ったのは、四日前のこと。彼らはそれ以来、領軍の帰還を待っていると言う。
「探索して盗賊団を討伐するには、長過ぎる時間が経ちました。しかし、誰も戻ってきません。途方に暮れていたところでした」
「なるほど。彼らの持っていった食料は、どの程度の量?」
「一日半。長くなれば、誰かを寄こして、食料を我々で運ぶことになります」
「わかった。何かがあって連絡できない状況と考えられるな。二日ならば食べずとも生きられる。水があれば一週間はイケる。そのあいだに彼らを見つける必要があるな」
全員がうなずく。
「探索範囲はわかるか? 地図があれば、示して欲しいが」
ひとりが立ち上がり、テントに入る。
オレは考えるフリをして、探知してみる。まずはレイバク町の周辺にいる人間。バラバラで、まとまって行動している者はいない。範囲を広げても反応なし。
さっきの彼が戻ってきて、地図を広げた。
「ここからここまでの範囲です」
「わかった。君たちはここで待機。オレは冒険者ギルドから、領主様に一報を入れてくる。それから、戻ってくる。いいね?」
はい、全員が答えた。
オレは冒険者ギルドに向かいながら、探索の条件を変更していた。人間ではなく、魔獣に。小型は排除。スライムが大量にいたからな。盗賊団も領軍も魔獣にやられたとすれば、力量不足で討伐できず、逆に倒された。そう考えれば、急に姿を消したことに納得がいく。
ゴブリン、ウルフ、オークはいるが、それほどの群れでもない。オーガにいたっては存在すらない。
どういうことだろうか?
ダンジョンがあるのか、と探索してみたがそれもなかった。
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