003【服と装備】
連続投稿になります。ごめんなさい。
オレたちは街なかに逃げ込んだ。本当ならば、城下町から離れたいが、いかんせんオレたちの格好は目立つ。高校生たちはブレザーの制服だし、オレはスーツ姿だ。ここのふつうの服装ではない。髪色も目立つ。
そこでまず、裏路地に入って、四人にあるものを手渡す。
「何、コレ?」
「変装グッズ。城からもらってきた」
「変装?」
「街なかを歩いていて、オレたちが目立っていたのに気付かなかった?」
「えっ?」
「外人の中に日本人が固まって歩いているんだ。目立つだろ」
「あぁ、そうか。異世界召喚ものテンプレの黒目黒髪か」
「そういうこと。それは魔導具で、髪や瞳の色を変えられるらしい。バキュームしてリストアップしたら入っていたんだ」
「すごいな。そんな魔導具まであるなんて」
使い方は鑑定を使えばわかった。
円筒形で上下にダイヤルがあって、ダイヤルを回して、なりたい色にセットして、円筒形の上のボタンを押す。魔導具には鎖がついていて、首にぶら下げていればいい。
みんな、それぞれに変わったが、やはり日本人。街の人たちよりも、子どもに見える。仕方あるまい。
同い年でも外人は大人っぽい色っぽい。まぁ、身体の造りが違うからな。
次は、服を購入することにした。
服屋を見つけると、店員さんにお願いして、ふつうの服装を揃えてもらう。
新品もあるが、この土地では、中古が基本らしく、値段も落差が酷い。
それに新品を購入すると、それだけで目立つ。人々の中に紛れたいのに、目立ってどうするというのだ。
四人は新品じゃないことにブツブツ言うが、“逃げているんだから”と小声で説得するとなんとか着てくれた。
店員さんが、オレたちの服を欲しがるが、“買取価格が安すぎる”として却下する。
オレたちの服が市場に出るのはまずい。すぐに追手に追いつかれる。
ちなみに、お金はバキュームした城の財宝から。というより細かいので個人財産な気がするが。
街なかを五人で歩く。あまり違和感なく、受け入れられている気がする。ちなみに、マナミは化けてはいない。そのままで通用するから。
次に、服屋の店員さんに教えてもらった冒険者御用達用品店へ。
結構、大きな店。店先には、セール品が並べられている。入り口は広くとられ、奥まで明るくて見通せる。
「なんか」とマナミ。「スポーツショップみたい。バッグやテントもあるわ」
「武器防具もあるな」とハルキ。
「ここで」とキヨミがオレに問う。「何を買うんですか?」
「冒険者の装備一式。逃亡生活には必要だろ。それに冒険者ギルドで登録するから、舐められないように、だな」
「冒険者ギルドで登録ですか?」
「オレたち、身分証明書、持ってないだろう。街を出るにしても国を出るにしても、身分証明書が必要になる。まぁ、街を出るのに必要かはわからんがな」
「それって」とエイジ。「オレたちだってバレて、追跡されるんじゃ?」
「登録時はまだ勇者召喚をしたなんて、ギルドは知らされてないと思う。それにオレと君たちは、登録するギルドを変える」
「えっ?」
「オレは商業ギルドに登録するつもりだ。君たちは冒険者ギルド。それで別行動する。とは言っても旅は一緒だ。できれば、オレが君たちを指名依頼して、護衛してもらう」
「なるほど。少なくとも五人ひとまとめではなくなりますね。でもギルドって両方あるんですか?」
「城下町の地図で確認したよ。ギルドもテンプレで国をまたぐ組織だとわかっている。残念ながら細かいことがわかっていないんだ。それが不安要素だな」
とにかく、店内を奥へと進み、店員さんに頼んで、彼らの装備一式をお願いした。
奥から出てきた店長さんには、それらしいウソ話を聞かせて、オレがお礼に装備一式を彼らにプレゼントすることにした、と話す。
ちなみに、そのウソ話とは、旅の途中、賊に襲われたが、そこを彼らに助けてもらった、というものだ。街道やほかの町や村の名前を出していたし、実際に盗賊の被害も報告書に書かれていたし、店員さんもそれを知っていて、ウソとはバレていない。
「そうか。災難だったな。被害は?」
「このとおりです」と両腕を広げ、ケガひとつしてないことを見せ「荷物も無事でした」と笑む。
「よかったな」
「はい。彼らがろくな装備を持っていなかったので、こうして購入に来たわけです。ちょっと高くついてしまいますが、自分の命を助けてもらい、商売のタネである商品も無事でしたから、安い買い物です」
「確かにな。命があれば、商売は続けられるしな」
「はい」
店長さんと話しているうちに、四人の装備が揃った。
オレは請求された金額に、顔をしかめ、値段交渉する。
「さっきの大盤振る舞いの言葉は、どうした?」と店長さんに言われる。
それに笑って答える。
「それはそれ、これはこれですよ。これでも商人ですから」
「商人相手はこれだからなぁ」
店長さんは困った顔をして、少しだけ安くしてくれる。こちらも“仕方ありませんね”と折れることで、商談成立。
お金を払い、握手。
装備を背負った四人を従えて、店を出た。
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