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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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294/648

294【身分証明書】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


2話連続投稿します(1話目)

「五年から十年くらいのあいだに、ですか?」

「ええ」

 商業ギルドに来ている。できれば、ということで、ギルマス執務室に。

 ギルマスは、女性スタッフに記録の調査を指示して、こちらに疑問の顔を向ける。

「とある旅人から聞いたのです。そのギルマスの邸宅から逃げ出した、と。その話では、そのギルマスは邸宅内に、多くの違法な奴隷を奴隷商人から買い取り、(もてあそ)んでいた、と。それで奴隷の一部が、反旗を翻し、ギルマスを殺して、邸宅に火をつけた、と」

「なるほど。その話は存じております」とギルマス。「確か、八年前だったかと思います。詳細は忘れましたが、そのギルマスが邸宅の火災で死んだあと、他殺が疑われ、丁寧に調べられました。結果、多くの犯罪に手を染めていたことが判明したのです。また、邸宅の焼け跡からは、獣人の腐乱遺体が見つかり、それが元冒険者であることが確認されたのです」

「ギルドカードが?」

 スタッフが見つけた資料をギルマスに渡す。内容を確認するギルマス。

「いいえ。その元冒険者はとても特徴的でした。猿獣人の中でも変わり種で、蜘蛛猿獣人。ご存知ないかと思います。その特徴は、小柄な体格、手足の細長さです。どうやら、彼を捕まえたそのギルマスは、獣人とは思わずに、珍しい魔獣と思ったようです。おそらく、その元冒険者は、調査のために服を着ておらず、キーキー泣きわめき、魔獣を装ったのでしょう。彼の遺骸を確認したのは、問題の商業ギルドの副ギルマスでした。内々に元冒険者に依頼していたそうです、ギルマスの悪事の証拠を掴んで欲しい、と」

「そうでしたか。となると、彼が死んで、それほど経たずに、ギルマスは殺されて、邸宅に火が着けられた、と」

「そのようです。ですから、そのギルマスは、殺される以前から、犯罪者でした。そこから逃げ出した方々は、ギルド奴隷法に照らしても、奴隷ではありません。犯罪被害者です。連絡が取れるならば、お伝え下さい。“あなた方は、国が認める民である”と。“犯罪者ではない”と」

「わかりました。そうなると、身分証明書については?」

「近場の商業ギルドか冒険者ギルドにて、登録していただければ。場合によっては、すでに登録されているでしょうから、ギルドカードの再発行となりますが、犯罪被害者ですので、再発行の料金は必要ございません。ただし、被害者であるという証明が難しいこともあり、複数の方がいらっしゃる場合は、一括での処理をお勧めいたします」

「わかりました。手続きは、こちらでないと、難しいでしょうか」

 ギルマスは、少し考える。


「サブ様が、みなさまをお連れになることは、可能でございますでしょうか、近くのギルドに」

「可能性はあります」

「わかりました」

 ギルマスは、獣皮紙にペンを走らせて、内容を確認し、そこに署名を書き入れ、インクを乾かし、丸めると、青いリボンを結び、ロウを垂らして、スタンプを押す。封蝋がされた正式な書類である。


 それを寄越してきた。

「どこのギルドでも構いません。ギルマスに提出してください。こちらに確認が来ますので、内容証明書類を返送いたします。ただし、有効期限は、本日より二年間とさせていただきます。よろしいでしょうか?」

「ありがとうございます。みなもよろこぶことでしょう」

 書類を受け取り、お(いとま)しようと、立ち上がった。


※蜘蛛猿

  ウィキペディア参照。


※蜘蛛猿獣人

  独自人種。

  昔、月刊誌『ムー』に蜘蛛猿人間の

  記事がありましたね。書いていたら、

  思い出しました。あれ、蜘蛛人間かも。

  あやふやです。ごめんなさい。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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― 新着の感想 ―
【巨大な蜘蛛型UMA!?】という、なんだコレ!?な映像は見たことありますよ。 ロシアの団地の壁面をよじ登って越えていく……って内容でしたが、 脚が4本なのに蜘蛛?とか、 窓の外の柵はまだしも、壁面に…
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