291【領主様との会談・その八】
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2話連続投稿します(2話目)
しばらくして、領主様が口を開いた。
「ならば、何も言うまい。ランドルフ、おまえの人生だ。おまえの信念に従って生きよ」
「ありがとうございます、叔父上」と一礼するランドルフ。
領主様は、それを確認すると、こちらを見た。
「サブ殿、金子は大丈夫か」
「ご心配にはおよびません。魔導具などの収入もありますし、各種の依頼達成の報酬もございます」
「何か、希望があれば、申してみよ。できることならば、叶えようぞ」
「いえ」と答えながら、とあることが、頭に浮かんだ。あれか。「ええと」
「何か」
「領地内の一画をいただくことは、可能でございますか?」
「土地を、か」
「はい。街道を逸れた森の中に、我々が欲しいものがあったので、そこを荒らされたくないのです」
ランドルフも気付いたようだ。領主様の反応を伺っている。
「森か。ふむ。場所にもよるが。いったい何があるか」
「こちらです」とガラス瓶を出す。
「なんだ」
「蔓植物のタネで、ムカゴといいます」
もちろん、現在はない。これから栽培させていこうと考えているのだ。
「このムカゴが、なんだと」
「まだなんとも言えませんが、調味料が作れるのではないかと考えております」
領主様の片眉が上がる。
「調味料?」
「はい。アズマノ国では、一般的な調味料です。ですが、あちらは遠く、保存が効くものではありません」
「こちらで作ると」
「はい」
「ふむ」とオレを見つめながら、考える領主様。それからランドルフを見た。「ランドルフ、その調味料とやらを知っているか」
「はい。サブが作った試作品で、調理した料理を何度も。味は保証いたします」
「ここに試作品はあるか」
醤油と味噌を出す。かなり使ったので、残りが少ない。
「ちなみに」とオレ。「これは国王陛下にも試食していただき、よろこばれております」
「国王陛下も食されたか」
「陛下は、これをゴウヨーク国立て直しの策のひとつにしたいと申されておりました。そのためには、原材料の数を確保し、製造して、販売ルートに乗せる必要がございます。これまでその原材料の数を確保することが難しく、陛下も苦々しくお思いに」
「わかった。その調味料、すぐにできるか」
「いいえ。まず原材料が一時期しかできません。そして、採取しても、そこからさらに時間がかかります。ですので、最初の出荷は試作品程度。販売に乗せるにはさらに時間が必要です。しかもまだ確実に製造できる段階ではありません」
「なるほど。すぐは難しいか。それで陛下は諦めたか」
「いいえ。ほかのものも含めた計画を練っておられるごようす。その一画がこちらのものかと」
「そうか。場所は示せるか」
「示すことは可能です。しかし、その場を荒らされたくございません」
「荒らすつもりはない。そのムカゴが大事なのであろう。私は、場所と広さを知りたいだけだ。場合によっては、国の所有地となり得るからな」
「誰も送り込みませんか?」
「特別なことが起こらぬ限り、送り込まぬ。魔法契約しても良いぞ」
その言葉に、オレは地図を出して、場所と広さを示した。広さは集落を中心とした狩猟可能範囲だ。
「広いな」
「はい。ムカゴの収穫などの管理に、人員を割く必要がございます。人員はこちらで確保いたしますが、勝手に土地を使用するわけにもいかず、どうしようかと悩んでおりました。領主様からの許可を得られれば、陛下にもご報告できます」
「そうだな。わかった。のちほど、利用許可証を発行しよう。陛下への報告に、私のことも」
「もちろん、一緒に報告させていただきます。使用許可をいただいた、と」
「頼む」
領主様も人の子、国王陛下には取り入りたい。しかも新たな国王陛下に、敵対しているとは思われたくない。
オレも一応、安堵する。あの隠れ里が、領主様からの使用許可があれば、正式な役割とともに、活動させられる。
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