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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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291/648

291【領主様との会談・その八】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


2話連続投稿します(2話目)

 しばらくして、領主様が口を開いた。

「ならば、何も言うまい。ランドルフ、おまえの人生だ。おまえの信念に従って生きよ」

「ありがとうございます、叔父上」と一礼するランドルフ。

 領主様は、それを確認すると、こちらを見た。

「サブ殿、金子は大丈夫か」

「ご心配にはおよびません。魔導具などの収入もありますし、各種の依頼達成の報酬もございます」

「何か、希望があれば、申してみよ。できることならば、叶えようぞ」

「いえ」と答えながら、とあることが、頭に浮かんだ。あれか。「ええと」

「何か」

「領地内の一画をいただくことは、可能でございますか?」

「土地を、か」

「はい。街道を逸れた森の中に、我々が欲しいものがあったので、そこを荒らされたくないのです」

 ランドルフも気付いたようだ。領主様の反応を伺っている。

「森か。ふむ。場所にもよるが。いったい何があるか」

「こちらです」とガラス瓶を出す。

「なんだ」

「蔓植物のタネで、ムカゴといいます」

 もちろん、現在はない。これから栽培させていこうと考えているのだ。

「このムカゴが、なんだと」

「まだなんとも言えませんが、調味料が作れるのではないかと考えております」

 領主様の片眉が上がる。

「調味料?」

「はい。アズマノ国では、一般的な調味料です。ですが、あちらは遠く、保存が効くものではありません」

「こちらで作ると」

「はい」

「ふむ」とオレを見つめながら、考える領主様。それからランドルフを見た。「ランドルフ、その調味料とやらを知っているか」

「はい。サブが作った試作品で、調理した料理を何度も。味は保証いたします」

「ここに試作品はあるか」

 醤油と味噌を出す。かなり使ったので、残りが少ない。

「ちなみに」とオレ。「これは国王陛下にも試食していただき、よろこばれております」

「国王陛下も食されたか」

「陛下は、これをゴウヨーク国立て直しの策のひとつにしたいと申されておりました。そのためには、原材料の数を確保し、製造して、販売ルートに乗せる必要がございます。これまでその原材料の数を確保することが難しく、陛下も苦々しくお思いに」

「わかった。その調味料、すぐにできるか」

「いいえ。まず原材料が一時期しかできません。そして、採取しても、そこからさらに時間がかかります。ですので、最初の出荷は試作品程度。販売に乗せるにはさらに時間が必要です。しかもまだ確実に製造できる段階ではありません」

「なるほど。すぐは難しいか。それで陛下は諦めたか」

「いいえ。ほかのものも含めた計画を練っておられるごようす。その一画がこちらのものかと」

「そうか。場所は示せるか」

「示すことは可能です。しかし、その場を荒らされたくございません」

「荒らすつもりはない。そのムカゴが大事なのであろう。私は、場所と広さを知りたいだけだ。場合によっては、国の所有地となり得るからな」

「誰も送り込みませんか?」

「特別なことが起こらぬ限り、送り込まぬ。魔法契約しても良いぞ」

 その言葉に、オレは地図を出して、場所と広さを示した。広さは集落を中心とした狩猟可能範囲だ。

「広いな」

「はい。ムカゴの収穫などの管理に、人員を割く必要がございます。人員はこちらで確保いたしますが、勝手に土地を使用するわけにもいかず、どうしようかと悩んでおりました。領主様からの許可を得られれば、陛下にもご報告できます」

「そうだな。わかった。のちほど、利用許可証を発行しよう。陛下への報告に、私のことも」

「もちろん、一緒に報告させていただきます。使用許可をいただいた、と」

「頼む」

 領主様も人の子、国王陛下には取り入りたい。しかも新たな国王陛下に、敵対しているとは思われたくない。

 オレも一応、安堵する。あの隠れ里が、領主様からの使用許可があれば、正式な役割とともに、活動させられる。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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