288【領主様との会談・その五】
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2話連続投稿します(1話目)
「しかし」と考え込む領主様。「サブ殿のやり方を我ら騎士団は受け入れがたいであろうな」
「よくは知りませんが、騎士ひとりひとりにも役職というか、技能はあるのでしょう? 中には魔法を使うような人も」
「魔法は生活魔法レベルだ。騎士は、馬術、剣術、槍術、弓術などの武術を磨いた者ばかり。魔導具を使っての闘いは、考えておらぬ」
「サブ」とランドルフ。「騎士とは、そういうものだ。おのれの技量のみが自分を生かすのだ、と信じて疑わない」
「なるほどな。しかし」と領主様に問う。「魔獣を倒す効率の良い方法を模索しないのですか?」
「剣や槍や盾の使い方を考える程度であるな」
「では、魔法使いを騎士団と同行させることは?」
「多くの魔法使いは、戦闘には向かぬ。長時間の戦闘ともなれば、なおさらであるな」
「活用されようとお考えにはならない、と?」
「活用?」
「そうです。それぞれの特徴を活かし、運用する。ベルタルク辺境伯様は、さまざまな人材を現場に連れてまいりました。運用方法は見ることはかないませんでしたが、鑑定した者たちは、それほど力のある魔法使いではありませんでした。ということは、運用次第で、人は使える、ということでしょう」
ムムッ、と唸ってしまう領主様。
ヒントを渡すか。
「領主様、お屋敷では、多くの人を雇っておいでかと思います」
話題が変わったので、面食らう領主様。
「うむ」
「そのすべてを領主様が指示されておいででしょうか?」
「いや。指示などせずとも、屋敷はまわっておる」
「指示を出すときは?」
「家令に言っておるが?」
「人の運用は、それと同じでございます」
最初はわからなかった領主様だが、次第に脳に染み込んでいったようだ。
「そういうことか。つまり、人を使う人間を配置すれば、良いのだな」
「まさしく」
「なるほど。良い提言をいただいた。感謝する」会釈程度に頭を下げた領主様。
それから少し考え込む。上目遣いにオレを見る。
「ちなみに、これまで、魔獣は、何を相手にしてきたか。ゴブリン、ヒュージアント、ほかにもいるであろう」
「討伐したのは、ツノウサギ、ウルフ、アーマードベア、オークにオーガ。あと、ボアもいたか。本体は見ていませんが、ドミネイト・ビーという蜂系魔獣の卵を植え付けられた魔獣の繭を見つけたので、それを生き埋めにしましたね。ちょっと数が多過ぎたので。ほかの魔獣が狩ったのは、ジャイアントディアー、レッドボアーかな」
「サブ、おまえの従魔を忘れているぞ」
「えっ、アイツらも入れちゃうの?」
「相手しているだろう?」
「それもそうか」
「待て待て」と領主様がオレたちの会話を妨げる。「サブ殿は、テイマーでもあられるのか」
「まぁ」
「それで何を」
オレが答える前に、ランドルフが答えた。
「エッへ・ウーシュカとケルピーとスノータイガーです、叔父上」
「なんだ? エッヘ?」
「ご存知ありませんでしたか。魔獣図鑑には、書かれてあったのですが」
「魔獣図鑑……隅々まで見たが」
「湖の魔獣です、叔父上」
「湖だと?」それをヒントに思い出そうとする領主様。顔を上げた。
「思い出した。確かにその記述があった。しかし、お伽噺や伝説の類いだと」
「そうです。私もこの目で見るまでは、そういうものだとばかり思っておりました。実際は、川に住んでいたケルピーが、湖に生活の場を変えて、長い年月をかけて、育ったものでした」
「なんと」と信じられない顔。「そんな魔獣をテイムした?」と今度はオレを見る。「どうやって、倒したのか」
「いや、倒してはいませんよ。四頭とも」
「四頭?」
「ええ。スノータイガーは番いでテイムしました。彼らは、冬場にメスが妊娠して、エサとなる魔獣が少なくなり、人間の村を襲う寸前でした。それで私が近寄り、話をして、保護することにしました。その過程でテイムした次第です」
「待て待て。話をした、と」
「はい。私のスキルで、他種族の言葉を理解する、というものがあります。それで話しました。といってもこの口で話せる言葉だけですけど」
「そんなスキルがあるとは。それで、スノータイガー以外は」
「エッヘ・ウーシュカについては、倒したゴブリンの処理に困って、湖に流していたら、エッヘ・ウーシュカが現れて食べたので、それからはほぼ毎日、ゴブリンを流して、与えました。それで懐かれて。まぁ、そんな感じです。ケルピーについては、そいつが欲に溺れて、勝手に契約されました」
「はぁ?」
「いや、そのケルピー、普段は馬の姿をして、人間を騙していたのです。それで鑑定でケルピーだとわかって。ケルピーは雑食性なので、肉を食べるのか?と聞いたら、食べたい、と甘噛みされまして。で、人間の前では食べるなよ、と約束させようとしたら、勘違いして契約されたのです。その間違いを指摘したら、かなりのショックを受けてました」今、思い返しても笑える。
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