285【領主様との会談・その二】
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2話連続投稿します(2話目)
「叔父上」とランドルフ。「サブを疑るのならば、私もその一翼。嫌疑をかけるならば、私にもかけられよ」
領主様が嫌な顔をする。
「ランドルフ、おまえ、父親に似てきたな。わかった。嫌疑はかけぬ。だが、信頼は寄せられぬ。わかるな」
「はい、叔父上」
「そんな顔をするな。背中は預けられぬ、と言っておるだけよ」と笑む。
「承知しております、叔父上」とこちらも笑む。
こうして見ると、確かに似ている。親子だと言われれば、信じてしまうくらいに。
そこへビープ音。すぐに全員の目がそちらに向く。魔導通信機が着信した音だ。
まぁ、領主様がいるんだから、当然か。
女性スタッフが天板を開け、受け取る。内容を確認し、宛先の人物に差し出した。
「えっ? オレ?」
「どうぞ」
受け取って、内容を確認。
「確かに」と答えて、内容を読む。あはは、頭を抱えたくなった。
その書類をテーブルに載せ、領主様に差し出す。
怪訝な顔をする領主様。オレを見て、書類を見る。内容を読む、と書類を手に取り、オレを見て、また書類を見て、またオレの繰り返し。
「サブ、なんなんだ?」
「ジョージからの手紙。ゴブリンとヒュージアント討伐に対する感謝と褒美を出せない詫びと、領主様がここに来ているのを心配してくれたみたい。保証人になるってさ」
「なるほど。よかった、な?」と首を傾げるランドルフ。
「なんで疑問形なの? まぁ、ありがたいけどね」
「サ、サブ殿」と領主様が復帰した。「国王陛下と面識がおありか」
「あります。ものの運搬と護衛の仕事をしたら、受け取り相手は国王陛下だった、というだけです」
「いったい何を」
「お答えできません。お聞きになりたければ、国王陛下に直接お伺いください」と少し低めの声で答えた。
「ムッ……わかった。だが、一国の王がここまでする、というのが――」
「それこそ、国王陛下にお尋ねください」
「ムッ……わかった。面識はあるのだな」
「ございます」
「そうか……どんなお方か」
「国のことを憂いておられる方でした。今は国を支えるのが大変なのですが、そのためには、手段を選ばぬとか」
「そうか」
「先王とはまったく違います」
「そうか……ん? 先王とは? 先王とも面識がある、と申すか」
「一度だけ。ですが、先王はこちらの顔を覚えるような方ではございませんでしたから」
ふふふ、と笑い出す領主様。
「わかる。私も何度かお会いしたが、一度も覚えられたこともない。顔を知っている、というレベルでもない。どこを領地としているかさえも知らなかった」
「なら現国王は、あなた様のことをご存知、ということでしょう。こうやって、書き記すくらいには。そして、注意しろ、とも書いていないのですから」
「そうかもしれぬな」ホッとしている。すぐに気を引き締めた。「聞くことを忘れておったのだが、サブ殿は、冒険者の級はどのくらいか」
「B級です。とあるギルマスに強引にC級冒険者にされまして、その後、いろいろあり、B級に。商人だけでやるつもりだったのですが」
「強引に、というのはどういうことか」
「叔父上、それは私から」
ランドルフが掻い摘んで説明してくれた。
「なるほどな。冒険者にも誇りがある、ということか」
「誰にでも誇りはあります。小さな子どもでさえも。農家の人が作物に誇りを持つように。家庭の奥さんが作った食事に誇りを持つように。鍛冶師が打った剣に誇りを持つように。誰でも誇りを持っているんです」
領主様がオレの圧力に仰け反る。
「わ、わかった。悪かった。私の了見が狭かった。許せ」
「ランドルフ、君の叔父上は、本当に謝っているのか? 貴族様らしい命令口調だが? 親に謝るのに、子どもは“許せ”と言うのか?」
ランドルフが軽くため息をつく。
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