284【領主様との会談・その一】
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2話連続投稿します(1話目)
ひとりの騎士が、隊列を離れ、ヒュージアントを確認してまわる。それを領主様は咎めない。
「領主様、こちらを」と騎士。
領主様が、近寄る。そして、騎士が示すものを見た。
「どれも首を切断されております」
「確かに。だが、ふつうの鉄剣では斬れぬはず」
「ミスリル剣かと」
「ふむ」こちらを見る領主様。「サブとやら、ミスリル剣を使ったか」
「はい。我らのものと冒険者ギルドが集めたものです。合計して、二十本ほどだったかと」
「我らのものと? どこで手に入れたか」
「私が作りました」
「そなたが? 鍛冶師なのか?」
「彼は」とギルマス。「鍛冶師でもありますが、魔導具師でもあります」
「なんと、魔導具もか。見せてくれぬか」
こっから長くなりそうだな。
「領主様、お見せするのは、構わないのですが、彼らを集めた理由は、ただ見たいだけでしょうか? ならば、ここで解散、ということをお許し願いたいのですが」
「ムッ」と唸ると、冒険者たちを見る。「それもそうだな」ちゃんと向き直る。「此度のヒュージアント討伐、ご苦労であった。このとおり、礼を申す」と頭を垂れる。ひと呼吸後に顔を上げた。「死亡者が出なかったのは、誠に僥倖。ヒュージアントもすべて討伐した。これも僥倖。よって、少ないかもしれぬが、褒美を取らすゆえ、それで我慢してもらいたい」
おお、とどよめき。
「ギルマス、のちほど、渡すので、手配を頼む」
「ハハッ」
「何か、あるならば、ここで聞くが、どうか」と冒険者たちに尋ねる。
誰もが首を振り、文句などありません、という顔をしている。
「よろしい。では、解散せよ!」
冒険者たちが、領主様に一礼しながら、訓練場を出ていく。
オレとランドルフが残り、仲間たちに、訓練場を出るように言う。待ってなくてもいい、とも。
領主様は、騎士たちに「身体を動かしておけ」と命令。
オレは、さっさとヒュージアントを収納しておく。出しておいても意味ないからね。
ギルマスを先頭に、領主様、オレ、ランドルフと続く。
執務室に落ち着く。いや、全然、落ち着かないんだが。
「まずは、機転を効かせてくれたこと、感謝する」と軽く頭を下げられた。「つい、驚いてしまい、優先すべきことを忘れていた」
「謝罪は不要です。よくあることですので」
「なるほど。サブ殿のことは知りたいが」おっ、殿付けになった。「まずはヒュージアント討伐について、聞こう」
そこでオレがギルマスから今回のことを聞き、動くことにしたこと、冒険者たちを引き連れて、巣穴に行ったこと、そこからの討伐の手順を話して聞かせた。
「ううむ、数を削る、か。だが、一匹でも手こずる相手だというのに、どうやって倒したのだ」
そこで魔導具を出す。
「閃光発生器と呼んでいます。強烈な光を照射して、ヒュージアントの脳を一時的に焼きます」
「焼く? どういうことか」
「人間だと強烈な光を浴びると、目に痛みを訴えます」領主様がうなずく。「ところが、ヒュージアントは強烈な光を浴びると、動きを止めてしまうのです。それでそうなのでは、と。兵隊アリだと十呼吸、運び屋だと二十五呼吸、羽アリのオスだと死んでしまいました」
「待て。どこからの情報か」
「実地調査によるものです」
「実地調査、ということは、遠くから観察して?」
「それもありますが、間近に近寄り、照射して、行動を見ました。運び屋あたりは、別に良かったのですが、兵隊アリは二度目に照射しようとしたら、前脚で払い落とされてしまいました。その後は、結界を張ることで、接近し、首をハネて、討伐していきました」
「最初からミスリル剣でか」
「いいえ。ほかの面々は鉄剣がほとんどでしたから、試しに斬ってみたのですが、ほとんどキズつかず。それでミスリル剣を使うことに。それでも甲殻は硬くてキズを負わせる程度。ならば、と首を。なんでもそうですが、関節部は弱いですから」
「サブ殿は、冒険者歴は長いのか」
「一年ほどかと」
領主様は顔をランドルフに向けた。オレを見たまま。
「本当か、ランドルフ」
「本当です、叔父上。同じ時間を過ごしておりますが、最初は商人見習いでした。別に剣術を習っていたわけでもありません。しかし、魔導具使い、と言われるほど、魔導具を使っています。今回の討伐依頼もサブの魔導具あったればこその達成かと思います」
「これだけでかね」
「サブ、お見せしなさい」
肩をすくめて、出す。
「これは」とヘッジちゃんバリア・静の説明。「魔獣を結界に包み込んで出られなくするものです」
次を出す。
「こちらは」と雷爆弾・静。「今回は最初の検証で使いましたが、有効性がありませんでした。結界の中に雷魔法を放つものです。ゴブリンやウルフなどの集団によく効きます」
次。
「こちらは、その対象を個体に絞ったもの」
次。
「こちらは、単なる結界を張るものです。中から外に攻撃できます。主に自分の身を守るためのものです。これらは、発表を控えています。人間に使用すると、危険に晒されますので」
今まで出したものを回収して、ほかのものを出す。
「これらは、すでに発表済みです。魔導飲用水ポット、魔導コンロ、魔導ライターです。旅に必要だと作りました」
それぞれを使って見せる。コンロに火を着け、ポットをその上に。で、ライターを使う。
「これは……発表、ということは、もう売っておるのか」
「はい。商業ギルドに登録していますので、作れる人がいれば、作れるでしょう。そんなに難しいものでもありませんから」
「ムムム、高いのだろうな」
それぞれの値段を言う。
「意外と安いな。領軍に配備を検討させるとしよう」
「ありがとうございます」
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