277【ヘッジちゃんバリア】
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2話連続投稿します(2話目)
ということで、一匹殺ったら、一匹逃がす、という感じで、どんどん片付ける。
今度は、兵隊アリも疑問にも思わないようで、なんの反応もない。それでも敵地なので、オレたちは警戒はしている。
やがて、清掃係が途切れた。最後の方は、殺らずにスルーした。これで清掃係が減ったことにも気付かれにくいだろう。それを期待。
ハルキに合図して、戻る。隠遁を解く。
「とりあえず、ってところだな」
「今度は兵隊アリかい?」とダルトン。
「動作停止が息十回ほどではなぁ。でもアイツら、なんとかしたいな」
「あの数なら」とエイジ。「なんとかなりませんかね?」
巣穴を守る兵隊アリは、全部で八匹。間隔を空けて、ほかのヒュージアントがとおれるようにしている。
「一匹一匹を隔離できればいいんだけど……ん? 隔離?」
オレは、アイテムボックスから、あるものを取り出して、ジッと見た。それはミゼス町のパラリシスポイズンヘッジホッグ(通称ヘッジちゃん)を捕らえた結界を張る魔導具。名前はなかったが、今、命名。“ヘッジちゃんバリア”と。
えっと、起動時間と半径と継続時間の指定がある。
これを使えば、捕らえられる。タイミング次第だけど。
これに個人レベルの結界を張れば、イケそうかな。
でも、ふたつしかないんだよなぁ、これ。
まぁ、やってみるか。
そこで作戦会議。まぁ、殺るのは、オレと首チョンパ役のハルキと閃光発生器を照射する役の三人。
「じゃぁ、今度は私ですね」とキヨミ。すでにローブを纏いはじめている。
「わかった。オレとキヨミは結界を張るけど、首切り役のハルキは結界があると、干渉して、結界がなくなるだろう。気を付けろよ」
「はい」
ヘッジちゃんバリアの起動時間を起動後すぐ発動にして、半径一メートル、継続時間は十秒にセット。ふたつとも。
すぐに自分たちの結界を張る。それから隠遁。兵隊アリの一匹に近付く。真正面からではなく、真上からヘッジちゃんバリアを起動して落とす。すぐに結界が張られる。これで捕らえた。
手で合図を出す。真正面で強烈な光。すでにまぶたを閉じていたが、かなりの光量。まぶたの裏が真っ赤よりも白くなった。三秒後、照射が終わった。まぶたを開ける。
複眼が白になったと同時に、首が落とされた。
ヘッジちゃんバリアを回収。
次の兵隊アリを同様に屠る。
そうして、八匹を討伐した。
隠遁を解除して、手でみんなを呼ぶ。
「エイジ、兵隊アリの身体を土魔法で持ち上げて、カモフラージュしてもらえるか?」
「わかりました。でも、どうしてです?」
作業をしながら、オレからの回答を聞くエイジ。
「運び屋たちが帰ってきても、たぶん、コイツらは動かないのがふつうだろう。中から出てくるのもな。まぁ、同じ兵隊アリならわからないが」
「なるほど。これでいいですか?」
「いいねぇ」
「次はどうするの?」とダルトン。
「もちろん、帰ってくる運び屋君たちを始末するよ。ちょっと計画が狂ったけども、な」
「なら、みんなを呼んでくるよ」
「よろしく」
みんなが木から降りてきて、集まった。
「見てのとおり、あの兵隊アリたちは、すでに討伐してある。あれは不信感を与えないようにするための処置だ。まぁ、案山子だな。それで、これから帰ってくる運び屋を始末してもらいたい。今、こっちに向かっている。兵隊アリは現場あたりから動いていない。もちろん、念のために、オレたちが警戒しておく。そのあいだに頼む」
みんながうなずいた。
「装備を点検してくれ。魔石は足りているか? 大丈夫そうだな。よし、いったん離れよう」
木の陰に隠れる。
待つこと、十分ほど。
肉団子を持った運び屋がヨタヨタと歩いてきた。その後ろにも続いている。
今回は、オレたち《竜の逆鱗》が警戒するので、運び屋討伐はほかの三チームでやってもらうことにした。
巣穴からも出てこないとも限らないし。
ヨタヨタの運び屋が来たので、配置に着く。
まずは、最初の三匹の運び屋を始末。
次々と始末していく。回収はキヨミとマナミに任せた。
巣穴からは、何も出てこない。
しばらくして、兵隊アリが殿として、戻ってくることが、索敵でわかった。
できるだけ、運び屋を討伐したあと、木の上に避難した。
間髪入れずに、兵隊アリたちが姿を現した。少数の運び屋を伴って。
巣穴まわりの倒した兵隊アリの横を護衛の兵隊アリたちは不信感も抱かずに、巣穴へと入っていく。
「よし。エイジ、来てくれ。カモフラージュを解く」
エイジとともに巣穴まで行き、死んだ兵隊アリを回収。死骸を支えていた土台をエイジが均す。それで戻る。
少しようすを見る。
「あのままでもよかったんじゃ?」とハルキ。
「いや。あのままだと、腐りはじめて、ニオイが出るだろう。放置はしない方がいい。仲間の死骸を巣穴に持ち帰るアリを見たことがあるんだ」
「そういうことですか」
もうすぐ陽が暮れる。
「さて、今日はここまでだな」
ほかのパーティーにハンドサインを送る。ホッとしているのが、わかる。
今日は、このまま木の上で、野営だ。
糧食と水を配っていく。身体を固定するためのロープも。寝て、枝から落ちてしまうのを避けるためだ。
魔獣を索敵してみる。どうやら少しずつ草食性魔獣がこのエリアに戻ってきているようだ。このままいけば、環境も戻るだろう。
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