276【行列より手軽?】
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2話連続投稿します(1話目)
翌日。朝日が登る前のまだ深夜に、オレたちは巣穴に向けて移動を開始した。
本来ならば、深夜に行動するのは、魔獣に襲われる可能性が高いので、安全な場所でジッとするのがふつうだ。
しかし、この周辺はヒュージアントが魔獣を一掃していて、たいした危険がない。
それにヒュージアントは、夜間行動はしない。
だから、警戒はしているが、行進には支障はない。
目的地の巣穴近くに到着した。朝日はまだ顔を出していない。それでも空が白けてきている。
慌てずに、巣穴を観察できる木を探す。
オレたちが浮遊して、その木の枝にロープを垂らして、みんなを上がらせる。
ここで運び屋と兵隊アリが出掛けて、お留守になるのを待つのだ。
本当は、出てくるところをバッサバッサと討ち取りたいところだけど、巣を広げられて、別の場所から出てこられても、それはそれで困る。そういえば、索敵にもそんな穴の存在はなかったな。何か理由があるのだろうか?
そんなことを考えながら、木の枝で寛いでいると、明るくなってきて、巣穴入り口から、兵隊アリが警戒しながら出てきた。
入り口を守るように仁王立ち(座ってもいないし、伏せてもいないので、こういう表現するしか……)する。
後ろから、次々と兵隊アリが出てきて、仁王立ち。
巣穴を囲うような配置だ。
それなのに、まだ兵隊アリが出てくる。巣穴を囲った兵隊アリとは違い、まるで運び屋のように、一列に行列を作って、移動を開始する。
どうやら、先発隊の感じ。
そのあとから、運び屋がズラズラと出てきて、先発隊にくっついて移動していく。
その左右を新たな兵隊アリが並んで移動。コイツらは、完璧な護衛だ。
行列がどんどんと伸びていく。百メートル、二百メートル、三百メートルと。その分、多くの兵隊アリも護衛に就く。
行列が、森の中へと消えた。巣穴のまわりには、兵隊アリが仁王立ち。巣穴からはゴミを持ち、上がってきた清掃係(?)が出てきて、巣穴から離れた森近くにゴミを捨てて、巣穴に戻っていく。
あの清掃係なら、兵隊アリから離れるから殺れそうだ。
「ちょっと一匹、殺ってくる」
「どうするつもり?」とダルトン。
「あの清掃係?の数を減らすために閃光発生器の覆いを変更する」
「了解。気を付けてな」
笑顔でうなずく。
隠遁して、地上へ。一匹の清掃係の真正面で照射。首チョンパ。回収。元の枝へ戻る。隠遁を解く。
それから頭だけを出して、それに合うように閃光発生器の覆いを修整する。
「これでまわりには、気付かれにくくなる、と思いたい」
頭を収納。
「ひとりで行くのか?」とランドルフ。
「もうひとり、首切りを任せたい」
ランドルフは、ハルキの肩を叩く。
「ハルキ、おまえだ」
「おう」
「よし。ハルキ、ひとまず木の陰に隠れていてくれ。オレが何匹かに照射する。おそらく、運び屋と同じくらいの動作停止だと思う。もしかしたらもう少し長いかも。でも期待はするな。まずは十秒ほどだと思え」
ハルキがうなずく。
「斬るだけに専念してくれ。回収はオレがやる。行くぞ」
まずは、ハルキが浮遊して、木の陰を隠遁しながら降りていく。次にオレが隠遁。最初の清掃係に近付く。
真正面から覆いをかぶせ、照射。
固まる清掃係。
それで次々に照射していく。
とりあえず、四匹。
ローブから手を出して、合図する。
近くを風が抜ける。
次々と清掃係の頭が落ちる。
それをオレが回収。
剣を下段に構える手が見えた。待機。
次の清掃係四匹に照射。
手で合図。
これの繰り返しで、清掃係を十六匹討伐。
兵隊アリを見やるが、まだ気付いていないようす。
続ける。
さらに二十匹を殺ったところで、一匹の兵隊アリがこちらへとやってきた。
ハルキに手で、戻れ、と合図。オレも戻ることに。
相変わらず、清掃係はやってくる。
兵隊アリは、ゴミ山の周囲を確認している。やがて、満足したのか、もとの位置に戻っていった。
「ちょっと殺り過ぎたか。間引く感じの方がいいかも」
「なんか」とハルキ。「暗殺者になった気分ですね」
「隠遁マントなんて、ハルキは、普段、使わないもんな。さて、照射したのはわかるな。固まったのを確認したら五秒後に斬ってくれ。今度は間引きだから、慌てずにな」
「はい」
「あっ、もう木の陰に隠れなくてもいいな」
「ですね」と笑むハルキ。
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