275【案山子】
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2話連続投稿します(2話目)
翌日。行列に混ざる兵隊アリが倍化していた。タンク役がランドルフだけでは足りない。そこに三人が名乗りを上げた。だが、彼らの盾は大盾ではない。
それならそれでと、魔法使いと相談。土や氷で脚を固定できないか、と。首を振られた。魔法使いとは言っても、魔法で礫を飛ばすとかで、敵の注意を逸らし、アタッカーの攻撃を手助けする程度だとか。
「撤退しよう。兵隊アリの数が多過ぎる」
オレの言葉に、全員が撤退を開始。
兵隊アリに追われたが、行列からある程度、離れたことで、追わなくなった。
街道に出たところで、各パーティーごとに、メンバーの確認。これで誰かいなかったなんて、洒落にならないからな。
全員の無事が確認された。
そこで作戦会議。
やはり、兵隊アリが厄介だ。
「みんなでミスリル剣で斬れないか?」とリーダーのひとり。
オレが答える。
「寄ってたかって斬りつける前に、ヤツに薙ぎ払われるだけだぞ。それにヤツらが多過ぎる。ケガだけでは済まないぞ」
みんな、唸って考え込む。
「遠くからの閃光発生器は効かないかな?」と別のリーダー。
「一時的な目眩まし程度だな。おそらく動作停止すらしないだろう」
「あのぉ」とひとりの女性が手を上げた。
おどおどしている。それなりの体格なのだが、背中を丸め、小さくなっている。
「ミリンダ、なんだ?」
どうやら彼のパーティーメンバーらしい。ちょっとトゲがある。苛ついている?
「か、案山子を襲わせたら、ダ、ダメ、かな」どんどん声が小さくなる。自信がない?
いや、今は彼女のことではなく、彼女の案が重要だ。
「案山子か。いいかもしれない。襲わせて、そのときに閃光発生器で照射する。固まったところを首切りか。やってみる価値はあるな。ありがとう、ミリンダさん、助かる」
お礼を言ったら、いえ、と小さく答え、もじもじする。
彼女のパーティーメンバーたちが、彼女のことを呆れた顔で見る。あまり、いい関係に思えないな。
それはともかく、その案で作戦を考える。
さきほどの行列に戻った。
すでに案山子は用意した。たいしたものではない。木の枝を組み合わせ、長袖の服を着せ、かろうじて人間に見えるようにしただけのもの。
それをタンク役が背中の取っ手を掴み、兵隊アリに向かう。その背後には閃光発生器を持つ者と首チョンパする者が続く。
充分に近付くと、兵隊アリが戦闘体勢を取り、向かってきた。
ランドルフは立ち止まり、案山子を軽く動かして、それっぽく見せる。
兵隊アリが異物を排除しようと、前脚で払おうとする。
「今だ!」とランドルフがタイミングを待つエイジに声をかける。
エイジが案山子の肩から、閃光発生器を撃つ。
兵隊アリが固まった。
そこをハルキが首チョンパ。
兵隊アリの頭と身体が崩れた。
三人がこちらを見て、うなずく。
「よし。まずは兵隊アリを倒そう」
おお!と全員が駆け出した。すでにチーム分けはできている。案山子も用意できている。さっきのミリンダさんも案山子を持って駆けていく。タンク役だったのか。
手の空いた者たちには、まわりを警戒させ、イザというときに備える。
最初こそ、彼らは手間取っていたが、案山子作戦は、おおむね成功だ。
次々に倒される兵隊アリ。
これ以上はいない、と確信できたところで、いったん休憩を取り、運び屋退治に移行した。
こちらは慣れたもので、淡々と進む。適度に休憩を入れ、運び屋の仕事が終わったら、討伐終了だ。
三日後。兵隊アリの数がさらに倍化した。さすがに、これは厳しい。案山子を使っても、まわりから襲われてしまう。
「撤退しよう」
誰も反論はしなかった。
冒険者ギルドに帰ってきた。すぐに執務室へ通される。
「どうした? 早いじゃないか」
「兵隊アリが倍化しました」とオレが報告。「あれでは手が出せません」
「ムッ、守りを強化してきたか」
「ええ。それだけ、食糧が枯渇しているのかもしれません」
「その点は、悪くないな。今後は?」
「まだ、なんとも」
「そうか」
少し間が空く。
ダルトンが手を上げた。
「あのさ、兵隊アリが大勢出てきている、ってことは、もしかしたら巣穴の防備は手薄?」とオレに聞いてくる。
「ちょっと待って」
索敵でヒュージアントのようすを見る。運び屋と兵隊アリとその他を色分けして。
「確かに手薄になっているな。行列は見てきたひとつだけ。相当削ったから、危機感を覚えたかな?」
「ならさぁ、行列じゃなくて、巣穴自体を攻撃したら?」
「えっ!?」とみんなが驚く。
「だって、行列は防備を固められた。その分、巣穴が手薄。攻撃しない理由、ある?」
「確かにな」とギルマス。「巣穴自体を直接攻撃するのは、どうかとは思うが、数を削るくらいなら、いいんじゃないか?」
「なるほど」
索敵を確認する。数を削る、と考えると、確かに行列を襲うよりは、いいかもしれない。楽ではないけど。
「作戦次第か?」とランドルフがオレに聞く。
「行列よりはマシって感じだ。そう、作戦次第だな」
とにかく、巣穴付近のようすを獣皮紙に書き出す。それを見て、作戦会議だ。みんなで、いろいろな案を出す。
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