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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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272/648

272【ヒュージアントの討伐方法】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


2話連続投稿します(1話目)

 不思議なことに、攻撃を開始してから今の今まで、ほかの斥候アリはおのれの仕事から離れず、こちらに来ることはなかった。


 地上の三人に声をかける。

「どうやら斥候は、ほかのヒュージアントがどうなろうとも、関係ないようだ。今度は、光爆弾を使わずに、闘ってみてくれ。無理するなよ」

「「「おう」」」

 三人は嬉々として、ヒュージアントの一匹に駆けていく。

 ランドルフは、剣をしまい、大盾を構える。

「やっぱりタンク役が似合うな、ランドルフは」とダルトン。

 今までよく黙っていたな。まぁ、観察が彼の仕事だからな。

「だな」と答える。


 ランドルフがヒュージアントの前に大盾を構え立つ。

 ヒュージアントが立ち止まり、触角を震わせる。すぐにアゴがガチガチと噛み合わされる。肉見っけ、ってところかな?

 エイジとハルキが、ランドルフの左右から出て、剣を振るっていく。主に関節狙いだ。

 だが、やはり相手が動くので、狙った部位に当てられない。

 それでも脚のヒザに当たる場所が、断ち切られていき、ヒュージアントの行動がどんどんと削られていく。

 最終的に、首を斬られて、ヒュージアントは絶命した。

「お疲れ」と声をかける。「次は、煉獄の実を試してみる。避難しててくれ」

 オレは装備を整え、最後のヒュージアントのところへと向かった。

 隠遁して近付く。顔の左側に着く。

 ヒュージアントの触角が震える。顔がこちらを向く。

 気付いた?

 だが、ヒュージアントは前を向いて、歩き続ける。

 その横顔に煉獄の粉を吹きかける。

 全然、意に介さず、前へと歩く。

 やはり、効かないか。

 ふと、複眼を見る。ゴルフボールよりも小さい。もしかして、複眼を見えなくしたら、動くのをやめる? 光爆弾で複眼を潰したのを思い出して、そんなことを思った。

 えっと、アイテムボックスに複眼を覆うものは?

 あったあった。油粘土だ。

 油粘土をヒュージアントの両方の複眼にかぶせてみた。

 途端に動きが……止まらない。変化なし。

 あれ? あっ、アリは巣穴の中で活動するんだから、複眼は参考程度なのか。なら光爆弾で行動停止したのはなぜだ? 強烈な光を浴びた……それで視神経を経由して、脳に影響を与えた? オレたち人間は、強烈な光を浴びると、目が潰れたかのように、痛みを伴う。それと同じか?

 オレは隠遁を解き、剣を出して、斬りかかろうとした。

 ヒュージアントが反応して、オレの方を向く。

 オレは右側の触角の根元付近を斬りつけた。

 触角が切れ飛ぶ。

 もう一閃。

 左側の触角も飛んだ。

 今度こそ、ヒュージアントは止まった。

 脇にまわって、首を斬る。

 ゴトリッ、と頭が落ちた。同時に身体も。

 みんなが空中から降りてくる。

「今の、よくわからなかったんだけど?」とダルトンが尋ねる。

「煉獄の実はダメ。反応なし。それで目を油粘土で覆ってみた。光爆弾で目を潰したように。でも動く。つまり、閃光を使った場合、それが脳に影響して、動作が停止したようだ。目を塞いでも、コイツらは巣穴の中では目が見えないから、目の必要がないんだ。で、何を頼りにしているかというと」

「触角、か」とランドルフ。

「そう。だから、切り落とした。案の定、動きが止まった」

「なるほどねぇ」とダルトン。

「それから」とオレは続ける。「コイツらは、生物とは見ない方がよさそうだ」

「「はい?」」とS級冒険者ふたりが、クエスチョンマークを頭に載せている。

「ふつうの生物は、閃光で目を潰されたら、痛みでもがき苦しむ。だが、コイツらは停止した。外界からの情報がなくなるから、動くことができなくなる。まるっきり、機械だ。おっと、ふたりには魔導具と言えば、わかるか」

「えっ、コイツらが魔導具?」

「いや、それも違うか。そうだな……まだ見たことはないけど、ゴーレムに近いんじゃないかな」

「あぁ、ゴーレムね」

「それはそれで」とランドルフ。「厄介だぞ。だが、ゴーレムと考えれば、なるほど、よく似ているな」

「闘ったことは?」

「もちろん、ある。ダンジョンばかりだがな。そうか、巣穴をダンジョンと考えれば、ゴーレムに支配された空間ということか」

「いやいや」とダルトン。「それこそ厄介でしょ。ゴーレムオンリーのダンジョンって」呆れている。

「少なくともこうは言える」とオレ。「コイツらは、生物的な身体を持つゴーレムだってね」

「それで」とランドルフ。「討伐方法に目処は立ったか?」

「厳しいな。だいたいオレたちの剣でなければ、刃が立たないのがな」

「だな。全員分の剣を打つわけにもいかないのだろう?」

「やってもいいけど、時間も金もかかるからな」

「一網打尽にはできませんか?」とキヨミ。「こう、囲いの中に誘い込んで、まとめて」とゼスチャーする。

「エサは」とエイジ。「先日のゴブリンでよさそうですね」

「問題は」とハルキ。「どうやって討伐するか、だね」

「水攻め?」とマナミ。

「囲いの中の土を」とオレ。「硬質化しないと、染み込んでしまうよ。それだけの魔力があるかな」とエイジを見る。

「囲いの大きさ次第ですね」

「そっか」

「まずは、オレたちで斥候隊を潰すか」とダルトン。「そのあいだに、サブができるだけ、剣を打つ。光爆弾もね。あれでヒュージアントが動きを止めてるあいだに、首を斬ればいい」

「わかった。まずは斥候隊を削る、ということで。巣穴については、考えてみよう」

 倒したヒュージアントを回収して、ミハス町へと戻った。


 ギルマスとほかの冒険者パーティーのリーダーたちに報告する。

「ゴーレムの巣か」とギルマス。

「斥候隊を削る、それがとりあえずの結論です。巣穴に関しては、まだ」

「そうか。いや、助かる。これまでたいした情報は得られなかったからな。調査依頼として報酬を出す」

「ども。で、鉄剣でも通じませんから、ミスリル入りの剣が必要になります」

「ミスリル剣か。いくつかギルドにある。武器屋や鍛冶屋にもあるだろう。なんとか説得してみよう」

「ありがたい。足らなければ、オレが打ちますので」

「おまえ、鍛冶師でもあるのか!」

「オレたちの」とランドルフ。「剣は、サブ製だ。最初、与えられたとき、呆れたものさ」と苦笑い。

「信じられんな。いや、今さらか」

「それから光爆弾」とオレ。「いや閃光弾か。それは手に持てるものにして、作ります。いちいち回収するのも面倒なので」

「なんでも作るんだな」と呆れるギルマス。

「必要なんで。で、この閃光発生器をすぐに作って、オレたちでテストします。一瞬の光で、同じだけ停止するのかどうかを確認しないといけないので」

「そうか。やってくれ。そのあいだにこっちはミスリル剣を揃える」

「お願いします」

 そこで会議を終え、ギルド裏手の訓練場に作業小屋を出して、ちゃっちゃと閃光発生器を作る。

 たいした違いはない。光爆弾を手持ちにして、閃光が直接、持ち主を襲わないように覆いを付ける程度だ。とはいえ、スイッチを押し続ければ、閃光が発生するようにした。閃光発生の時間で変化するのかしないのか、で製品版(売るの?)の仕様が変わるからだ。

 テストしてみた。覆いを付けても、ヤバい。こりゃ、今回限りの製品だな。


 ヒュージアントの斥候隊との戦闘の結果、三秒の照射で、二十五秒ほど、ヒュージアントは身動きしなくなった。それを確認して、討伐した。


 冒険者ギルドに戻り、報告。

「全員には、無理だが、ミスリル剣を確保できた」とギルマス。

「ならば、閃光発生器をパーティーごとにひとつ渡るように用意します。それを使い、停止したところで首を落とせば大丈夫です」

「明日には、用意できるか?」

「確実に」

 オレはすぐに製作に入り、ほかの面々は、ほかのパーティーのリーダーたちに、討伐方法を伝授する。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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