268【ゴブリン集落討伐・その二】
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そうしてゴブリンが減った集落に、冒険者たちの襲撃が開始された。
開始の合図は、ランドルフのウォークライ(雄叫び)だ。これは彼の持つスキルで、一種の音波攻撃となり、相手が萎縮したり怯んだりする。
彼の後方にいた冒険者たちも鬨の声をあげて、戦闘を開始する。
オレは、いつものごとく、ゴーグルとマスクをして、ローブのフードをかぶると、空中に飛び出す。
オレの狙いは、まずゴブリンアーチャーたちだ。彼らは木の枝に登って、見張り、矢を射掛ける。たいした弓矢ではないが、意外にも命中精度が高いのだそうだ。この集落には、七匹もいた。煉獄の粉を掛けていく。目に鼻に口に。結果は見ずに、次へと向かう。
ゴブリンアーチャーを潰したので、ターゲット変更。今度はキングだ。キングは集落の奥にいた。ランドルフのウォークライを聞いて、その異様を晒していた。魔獣の牙や石なんかを装飾品として、それを身に着けている。オレは構わずに煉獄の粉を掛ける。これでキングも潰れた。
次のターゲットに目を向けようとしたら、目の前を火の玉が通り過ぎた。飛んでいく方向から、発射地点を逆算して、そちらを見る。杖を構えたゴブリンと片目のゴブリンがこちらを向いていた。見えていないはずなのに。
次のファイヤーボールが発射された。やはり、オレに向けられていた。どうやら片目のゴブリンがゴブリンメイジに指示して、攻撃させているようだ。
ホーミングしないので、避けるのは、難しくもない。でも油断もできない。
オレは気を付けながら、役付きゴブリンに煉獄の粉を掛けていく。
ファイヤーボールが飛んでくるが、躱しながら、次々に役付きゴブリンを弱体化していく。
すると、ファイヤーボールが飛んでこなくなった。見ると、ゴブリンメイジが地面に倒れていた。おそらく、魔力が枯渇したに違いない。
オレは、そこへと飛んでいき、剣で片目のゴブリンを切り捨てた。ついでにメイジも。
次のターゲットを探そうと見回すと、集落の内側で、雷爆弾・静が使われていた。だが、その近くに人間がいない。オレはすぐに誰だかわかった。オレと同じように、隠遁のローブで姿を隠している人物、マナミに違いない。
オレの方もだいたいの役付きゴブリンは行動不能にした。そろそろ討伐へと切り替えますか。
オレは、スタンガンと剣を持ち、まずは前後不覚になっているキングのもとに。スタンガンで意識を切り取り、動けなくなったところを、剣で首チョンパする。
そうやって、役付きゴブリンを屠っていく。役付きがいなくなれば、あとは烏合の衆である。
冒険者たちもお互いに協力し合って、ゴブリンを切り捨てていく。
オレはフードを下ろし、索敵で雷爆弾・静にやられたゴブリンたちを見る。やはり、完全には殺し切れていなかったようだ。生きているゴブリンがいた。剣でトドメを刺す。
正面にマナミが現れた。フードを下ろし、隠遁を解いたのだ。
「後始末させて、ごめんなさい」
「いやいや、先に数を減らすのが目的だから、あれでいい。あとは、闘っているヤツらだけか」
残ったゴブリンは、その数を減じ、もうすぐ襲撃班の人数と同じになる。
襲撃班のひとりひとりを見ると、かなり疲弊してはいるが、最後までもう少しだ、と集中力を途切らせるつもりもないようだ。
それでも加勢に入ることにした。早く終わるに越したことはないから。
ゴブリンを後ろから、スタンガンでやっつけていく。
そのゴブリンと闘っていた冒険者は、ゴブリンと同時に地面にヒザを付いた。
そうして、最後の一匹も倒れた。
念のために、索敵する。
集落内には、生存しているゴブリンはいなかった。ゴブリンアーチャーたちも、もがいた末に枝から落ちて、死んでいた。
ただ、落とし穴の中に、わずかな数が生き残っていた。もちろん、討伐する。
だが、今は、疲弊した者たちを癒やすのが優先だった。
深い傷はマナミの能力で、小さな傷は治癒ポーションで、治していく。
さすがに、肉体的疲労や精神的苦痛は癒せない。それでも“終わった”という安堵感がみなの顔に現れていた。笑い声も弱いが出てきていた。
リーダーたちを集め、これからのことを話し合う。
第一に、冒険者ギルドにどう報告するのか。討伐部位である右耳の採取がゴブリン討伐依頼の報告には必要ではあるのだが、六百匹ものゴブリンを処理するのは大変だ。そこでランドルフの意見により、役付きゴブリンたちの得物や装飾品を討伐証明とすることにした。
第二に、このゴブリンたちの死骸をどうするか。このままでは、ほかの魔獣が集まってくる。死骸を処理してくれるのはありがたいが、その魔獣たちが新たな脅威にもなりかねない。
ラキエルのエサにどうか、とも考えたが、ここのゴブリンたちは痩せてて、不味そうに見えたので、やめておこう、と思い直した。
話し合った結論は、ダルトンが出した。
「とりあえず、サブ、全部、しまっちゃって」
「はい?」
「このままだと、魔獣が寄ってくるしさ、始末はあとでもできるだろう?」
「まぁ、確かに。わかった。落とし穴に何匹か生き残りがいるから、誰か始末に行ってもらっていいかな?」
とあるパーティーが名乗りを上げたので、任せる。それから回収。ついでに雷爆弾・静も回収しておく。
あたりからゴブリンの死骸が消えた。
しばらくして、落とし穴のゴブリンも息絶えた。こちらも回収。
その落とし穴も土魔法使いたちが埋めた。
集落の跡地の屋根やら小屋やらを残すのは、別の魔獣が住み着く可能性があったので、これらも回収した。本当は燃やしたいが、ここで燃やすと、森林火災になりかねない。あとで別の場所で燃やすつもりだ。
「ん?」
「どうした、サブ?」
「ゴミの中から、こんなものが」
オレはアイテムボックスから、それを手のひらに出した。
「おいおい、ギルドカードかよ」
「これって、つまりは、そういうことだよな?」
うなずくダルトン。
このカードの持ち主は、ゴブリンたちに殺され、腹の中へと収まった、ということだ。
「冒険者ギルドに提出だな」
「わかった。討伐証明とともに提出するよ」
枚数は、十二枚。一部は商業ギルドのカードもあった。もちろん、どれも知らない名前だ。
リーダーのひとりが、口を開く。
「ここで冒険者が行方不明というのは、聞いたことがないな。商人の護衛かもしれない」
「まぁ、それを調べるのは、ギルドに任せよう。疲れたよ」
「確かに」
「戻って、エールを飲まなきゃ」と疲れた顔で言うダルトン。
それに笑ってしまうオレたちだった。
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