267【ゴブリン集落討伐・その一】
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2話連続投稿します(2話目)
冒険者たちが集まる。全員参加だ。
オレが指揮官役。なんで?
「疲れているところをすまない。すでに聞いているだろう。西に千二百歩のところにゴブリン六百匹の集落が見つかった。ゴブリン・スタンピードの可能性がある。S級冒険者ふたりが、緊急討伐の必要があると判断した。オレたちはこれからその集落の殲滅を目的に行動する。わかっていると思うが、ゴブリンといえども、数が多い。おそらく魔法使いのメイジや弓手のアーチャー、それからジェネラルやキングがいる可能性がある。つまり、単純な闘いではないだろう。だが、オレたちには、S級冒険者がふたりいる」ザ・責任転嫁。「ふたりの指示に従えば、オレたちはやれる。やれるんだ!」
誰かが、うぉー、と叫んだのを皮切りにみんなが叫ぶ。火が付いちゃった。
装備を整え、現場に入る。
オレを含めた斥候を集め、集落へと向かった。
集落は、洞窟ではなく、木々の下に作られていた。蔓を使って、縦横無尽に張り巡らせ、その上に枝葉を載せて、雨露をしのいでいた。その分、見通しが悪い。
「どう?」とダルトン。
「人は捕まっていない。役付きがいる。想定以上だ。あの小屋にキングがいる」
「どうやる?」
「まずは、戻ろう」
みんなのところへ戻る。それぞれのパーティーのリーダーに来てもらい、現状を説明した。
それから作戦会議。まぁ、ほとんどオレの作戦が採用されたのだが……
まずは確実に数を減らす。集落の見回りをしているグループを各個撃破。ただし、騒がせないために、雷爆弾・静での撃破を指示。
撃破したゴブリンは、マジックバッグへと収納してもらう。これは確実に死亡したことを確認する(生き物はマジックバッグに入れられないから、生きてる、と判断できる)意味もあるが、ほかの見回りに発見されて騒がれることを避けるためだ。
そのあいだに、罠の準備をする。この罠は、役無しゴブリンのためのものだ。どうせ、役付きゴブリンは簡単には動かない。
見回り討伐の成果は、五十匹を越えた、と報告を総計した冒険者が教えてくれた。一割にも満たないが、仕方あるまい。
雷爆弾・静の魔石を交換させて、次の段階の準備をする。
「囮班は、ゴブリンを罠へと誘い込む。ゴブリンが罠にハマったら、雷爆弾を放り込む。それを繰り返してくれ。それが終わったら、退避だ。無理に戦闘に加わる必要はないからな」
囮班たちがうなずく。
「手薄になった集落には、役付きゴブリンが多数いる。襲撃班は充分に気を付けてくれ。無理に倒そうとするな。仲間と闘えば、それだけ勝つ可能性が高くなるからな」
襲撃班もうなずく。
「よし。まずは数減らしが目的だ。押しては引く、を繰り返せ。仲間と攻守を切り替え、息を整えろ。撤退の可能性も頭に入れておけ。これだけの集落だ。命があれば、何度も攻撃を繰り返すこともできる。無理はするな。いいな?」
全員がうなずいた。
オレたち《竜の逆鱗》は、襲撃班だ。
作戦の開始とともに、冒険者たちはおのれの配置へと散っていく。
オレは仲間たちを集めた。
「オレは、役付きを煉獄の実で、前後不覚にしていく。みんなは協力してあたってくれ」
うなずくみんな。
「無理するなよ」
みんな、笑顔でうなずいた。
作戦が開始された。
まずは、囮班が、集落近くに姿を見せる。彼らに気付いたゴブリンたちが手に手に棍棒や石器ナイフや槍を持って、囮班に向かっていく。
囮班は、ゴブリンに気付いていないフリをして、歩いて去ろうとする。
これによろこぶゴブリンたち。多数のゴブリンが追いかけていく。
少し集落から離れたところで、囮班が気付いたフリ。逃げ出す。
もうすぐゴブリンが追いつく、というとき、ゴブリンたちの姿が消える。罠は落とし穴だった。フタは人間ひとりが乗れば、簡単に落ちる程度の強度しかない。
落とし穴に気付いて、足を止めるゴブリンたち。だが、後ろからの追っ手は止まらない。次々と落とし穴に落ちていく。
落とし穴は、それなりの深さなので、落ちたら簡単には上がれない。それどころか、あとからあとから仲間たちが落ちてくるので、それだけでも大ケガや死に直結する。
ゴブリンの身体は成長が早いため、骨も筋肉も太くはない。だから、棍棒で叩かれれば、簡単に骨折するし、当たりどころが悪ければ、簡単に死ぬのだ。
落ちなかったゴブリンたちは、落とし穴に一瞬、気を取られたが、すぐに落とし穴の縁をまわって、囮班を追う。
囮班の姿は目の前だから、ゴブリンたちにとっては、エサ同然なので、追い詰めて囲んでしまえば殺せる、という思考回路。だから、次の落とし穴を警戒などしないのだ。
次の落とし穴が、口を開き、ゴブリンたちを飲み込んだ。
先にゴブリンたちを飲み込んだ落とし穴の方から、稲光が発生する。だが、神鳴りはしない。雷爆弾・静が放り込まれたのだ。落とし穴の近くの木の上で、ひとりが待機していて、ゴブリンたちが充分に落ちて、その上を渡れるようになったところで、雷爆弾・静を放り込むように指示したのだ。これで落とし穴にハマったゴブリンたちが抜け出てきて、こちらの邪魔をしてくる可能性はほぼなくなった。
こうして、落とし穴と雷爆弾・静による討伐が、準備していた分、終わる。これ以上は役目のない囮班のみんなは、待機場所へと避難していった。彼らを追うゴブリンはいくらかいたが、人間の方が走る速度が早く、早々にゴブリンたちは諦めた。
これで百匹ほど、討伐できていれば、ありがたいのだが。
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