266【依頼の変更とスタンピード?】
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2話連続投稿します(1話目)
翌日。
早朝から、商業ギルドのスタッフがやってきた。
「すみません。馬の引き取りなのですが、ミハス町の方で手違いがあり、受け入れられない、と言ってきました」
「まぁ、百頭ですからね。それで我々にどうしろと?」
「馬は、ここでお預かりしまして、依頼達成という形にすることになったそうです」
「なるほど、わかりました。まぁ、どちらにしても我々はミハス町に戻ります。何か依頼があれば、伺いますが?」
「お気遣いありがとうございます。ですが、ここから出せるものはまだありませんので」と苦笑い。
言われてみれば、確かにそうだろう。生産物なんてないに等しいだろうし、むしろ入り用なものの方が多いに決まっている。
「そうでした」とこちらも苦笑い。「では、冒険者たちは、これで依頼達成ということで、知らせておきます。報酬はミハス町での受け取りになりますかね?」
「そうしていただけますと、助かります。どちらにしても売れるものもありませんし」とまた苦笑い。
「では、そういうことで」
スタッフが去ったあと、冒険者パーティーのリーダーたちに集まってもらった。
そこで、説明する。ここで依頼達成だ、と。報酬の受け取りはミハス町で、と。
「じゃぁ、ここで解散か?」
「そういうことになる。そうそう、雷爆弾は回収させてもらうけどね」
えぇぇ、とブーイング。
「いやいや」と笑う。「貸しただけだからね」
「そうだけど」「あっ、抗議しに行かなくちゃ」
「ダメですよぉ」とオレ。「彼らは、たくさんの仕事をしなくちゃならないんですから。抗議は、ミハス町でお願いしますね」
仕方ないか、と納得してくれる。
「あとで冒険者ギルドに行って、依頼受注書を出して、依頼達成にしてもらいましょう」
「ここでも仕事はあるかな?」とひとり。
「それなりにあるとは思うけど、聞いてみないと」
「そう、だな」
「まぁ、今日はとりあえず身体を休める日にしましょう。ミハス町に行くにしても、休めるときに休んだ方がいい。でしょう?」
みんな、笑顔でうなずいた。
昼間に、冒険者たちを引き連れて、冒険者ギルドに行く。スタッフがすぐに気付いてくれて、依頼達成の処理を進めてくれる。
各冒険者パーティーのリーダー以外の冒険者たちが、掲示板に集まっている。
スタッフに尋ねる。
「依頼、あるの?」
「はい。以前からのものと、ほかの町のギルドからのものです。もう依頼者が死亡しているものもありますが、すでに依頼金は受けていますので、貼ってあります」
「あぁ、そういうことか。討伐ばかり?」
「荷物の運搬と護衛もあります。先方は生きているのを確認済みです」
「そう。ありがとう」
手続きのあいだに、食事処で、エールを飲む。
ダルトンが先に飲んでいた。
「どうだ、久々のエールは」
「美味いね。でも少し古いかな」
「やっぱり人がいなかったのが、あるのかな」
「そうだろうね。次の入荷まで、杯数制限だってさ」
あっ、だからチビチビ飲んでいるのか。
「あらあら。困りましたな、ダルトン君」
「ホントですよぉ、サブ殿ぉ」
年齢的には、君と殿は、逆なんだけど。
そこへやってきたみんな。
「なんかいい依頼、あったか?」と尋ねる。
「ゴブリン討伐が主ですね」とエイジが答える。「ちょっと依頼の数が多いので、集落ができている可能性があります」
「あり得るな」とダルトン。「ひとつひとつは五匹とか六匹とかだろう?」
「そうです」
「同一個体の可能性もあるけど、地域がバラけているなら、集落だね。しかもここしばらく討伐されていないから、かなり増えてるかも」
「ヤバくない?」と尋ねる。
「ヤバいね。でもここにいる冒険者だけで大丈夫でしょう」
「どうかな」とランドルフ。あまりいい顔色ではない。「彼らは受けずに、移動するつもりだ」
「なんで?」ダルトンが問う。
「費用対効果だな。ゴブリンは下級冒険者の獲物だ。彼らは中級。報酬が少ない割に数が多い。これが集落ならば、その場所を特定して、規模を確認、人数を集めて、討伐。報酬と釣り合わない」
「そう言われれば、そうか。というか、集落の危険性に、スタッフが気付いていないのかもね」
「ゴブリンが増えたら」とふたりに尋ねる。「この村はどうなる?」
「その個体数にもよるね。ヘタすると、食料難で襲われる」
「極論だがな」とランドルフ。「それでも可能性は高い」
「ふむ」
オレは、索敵を広げて、ゴブリンに限定した。
「見つけた。六百匹って、ふつうか?」
オレは片眉を上げて、ふたりに尋ねた。
ふたりは呆然としている。
やがて、先に復帰したのは、ランドルフだった。
「おいおい、本当か?」
うなずく。
ダルトンも復帰した。
「ヤバいじゃん! スタッフ! ゴブリン・スタンピード警報!」
スタッフたちが唖然とする。
「オイラはS級冒険者のダルトン! こいつはS級冒険者のランドルフだ! 緊急! 緊急!」
ひとりのスタッフが動いた。制服を着ているが、なかなかの貫禄がある。
「ギルマスのダンテです。間違いなく、ゴブリン・スタンピードですか?」
「こいつは」とオレを指すダルトン。「索敵能力が異常なくらいに発達している。こいつによると、集落があり、ゴブリンの数が六百匹以上だと」
「本当ですか?」とギルマスはオレに尋ねる。
オレはうなずく。
「位置は?」
「ここから西に千二百歩ほど。複数のグループがまわりを見回りしている」
「西に千二百歩」難しい顔をして考え込むギルマス。「確か……オークの集落があって、殲滅した跡があるところですね」
ギルマスの判断を全員で待つ。
数秒で、ギルマスはうなずいた。
そして、大声を上げた。
「カラント村にいる冒険者全員に緊急依頼を出します!」とギルド内に声を響かせる。「拒否権はありません! 全員です!」それからふつうの声でダルトンに問う。「統率をお願いできますか?」
「するしかないねぇ」と苦笑いするダルトン。「でもうちのリーダーはこいつだから」とオレの肩を叩く。
「ひでぇ。オレはB級だぞ?」
「何を今さら?」と笑むダルトン。
ため息ひとつ。
そこからは、その場の全員が動き出す。
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