265【クザンの話】
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翌日。
カラント村に到着。
門は閉じられていたが、門衛がオレたちに気付いて、開けてくれた。
カラント村の人々は、もういない。
この門衛は、ミハス町など近隣から来た商業ギルドや冒険者ギルドに雇われた冒険者だ。
とにかくまずは、ネホン村の人々を入れ、次に馬たち、それから冒険者たちが入村した。
ネホン村の村人たちは、ここが新たな自分たちの村になる。
そこに商業ギルドと冒険者ギルドから代表者がやってきた。ギルドが設置されている村だったが、誰もいなくなって、連絡も取れない状況だった。そこでスタッフたちが派遣されてきたのだ。
「話は聞いております」と商業ギルド代表。ここの新しいギルマスらしい。「何か必要なものはございますか?」
「広場はありますか?」
「はい。中央通りをまっすぐに進んでもらうと、正面に」
「では、そちらでテントを張ります。食料などは持参していますので、その点はご安心を」
「お気遣いありがとうございます」
冒険者たちは、あらかた野営の準備を終えた。今夜、ネホン村の村人たちには、集会所で寝てもらうそうだ。明日から自分たちの村にするために忙しくなるだろう。
その夜。
夕食後、お茶休憩。
空を見上げると、星々が瞬いていた。
つい知っている星座を探してしまう。異世界だから、同じ星座があるわけないのに。
それでも天の川が流れている。まぁ、そう見えるだけなんだが。おそらくここの銀河の中心方向なのだろう。その銀河円盤が見えているのだ。
「星が珍しいのか?」とクザン。
「故郷のことを思い出していた。まぁ、たいした思い出もないが」と笑む。
「そうか。オレには家族はいないが、仲間がいた。孤児院みたいなところで育てられたんだ。そこで兄弟姉妹のように育った。よく冒険者が訪ねてきて、いろんな話をしてくれたよ。木の棒で、剣の使い方を教えてくれた。役立つ薬草や毒草なんかを教えてくれた。オレたちを冒険者で食えるようにしてくれたんだ。もちろん、字も教えてくれた。冒険者には必要だって言って」
「そうか。ならみんな、冒険者に憧れたんだろうな」
「全員が全員ではなかったがね。薬師になったり嫁さんになったりさ」
「ありがたいことだな」
「ああ。あとから聞いた話だが、その家はその冒険者が持ち主だったんだそうだ。オレたちは、彼の仲間の子どもだったそうだ。その割には子どもの数が多かったから、仲間の子どもだけじゃなかったんだろうな」
「だろうな。十人も十五人も変わらない、とか言って」
「たぶんな」と笑う。「今では、オレたちがそれをやってる。その冒険者は十年近く前に来なくなった。おそらく死んだんだろうな」
「そうか。子どもは何人いるんだ?」
「成人を過ぎたのも含めれば、七人」
「育ち盛りだな」
「ああ。でもまぁ、兄弟姉妹が世話しているから、困ることはない」
「なら心配せずに済むな」
「ああ」
少しして、彼は自分たちのテントへと入っていった。テントはオレたち用の予備を貸した。彼らは、テントを持ってきていなかったのだ。ひと月を森の中での生活になるため、荷物になると判断したそうだ。
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