263【ボス馬】
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2話連続投稿します(2話目)
翌々日。
早朝から冒険者ギルド前に集まる面々。
ネホン村大移動を行なうための面子だ。
馬百頭の移動もあるので、その護衛も一緒だ。
かなりの冒険者が動員された。もしかして、ミハス町にいたすべての冒険者が動員されたのか?と思うくらいの人数だ。
冒険者ギルドのスタッフによって、人数確認がされたあと、出発した。
軽くスピードを出して、旅を進める。ネホン村までは距離がある。途中の野営回数を少なくするためだ。野営をすれば、魔獣に襲われる可能性がある。それでも野営する必要性は出てくる。その回数を減らすのだ。
それから今回は、途中の村や町での宿泊を中心にすることになっている。村や町ならば、門扉を閉じれば、魔獣に襲われる可能性がほぼなくなるから。
二日目。
それまで魔獣による襲撃も遭遇もなかったが、オークに遭遇した。五匹だ。どうやらたまたま街道に出てきたところらしい。
すでに索敵で遭遇するのは、わかっていたので、オレたち《竜の逆鱗》が対処した。
その討伐速度に、ほかの面々が唖然とする。
「はええ」「なんで?」
オークくらいは、ちょっとしたパーティーならば討伐はできる。でも討伐には時間がかかる。しかもメンバーにケガ人も出やすい。
その点、オレたちのパーティーは、ウィークポイントをピンポイントで攻撃していくため、素早く討伐が終わる。ケガもしない。
しかもマジックバッグ(本当はアイテムボックス)にオークを収納して、道を開けるので、隊列は停止していない。
ちなみに、先頭の馬車はオレたちの馬車だ。当然、引いているのは、ラキエルだ。オレたちとのタイミング調整は慣れているので、止まる必要がない。
それだけ、効率がいいのだ。
後方の冒険者たちは、呆然として、馬車が停止したのも気付かない。
みんなに指示して、意識を取り戻させ、馬車をふたたび動かす。
五日後。
ネホン村に到着した。隊列は、ケガのひとつもない。
すでに村人には、村を移らせることを、先行した冒険者から伝えられていた。そのためか、荷造りは、すでに終えており、あとは馬車に載せて、移動するだけだった。馬を除いて。
まぁ、その馬たちは、呑気に草を食んでいて、せいぜいこちらのようすを見ているくらいだ。それでももともと騎士の騎馬だけあって、何かがある、と落ち着かないようだ。
隊列の冒険者たち(オレたち含め)は、テントを設置する。村には、宿屋などの宿泊施設がない。それに村自体が大きくはないので、旅人用の広場もない。それでも門扉を閉じて、安全が確保できるので、テントが張れるのだ。これだけでも充分な休息が得られる。
そんな中、マナミとキヨミが、調理器具を出して、下拵えをはじめた。
それを見た面々が、張り切りだす。彼らは、ミハス町を出てからずっと食事をマナミたちから受け取っていたのだ。そりゃ、美味い飯が食えると思えば、やる気も湧く。
食材は、事前に商業ギルドが用意してくれていた。まぁ、ほとんどマナミが指定したものだが。だって、そうしないと、ふつうの旅用食料(黒パンや干し肉レベル)になってしまうから。
馬の飼料もまた、果物や野菜などの水気のあるものも用意してもらって、ふつうの飼料とともに与えてきた。おかげで、馬たちもあまり疲れたりしないでいた。
これができるのもマジックバッグ(アイテムボックス)のおかげだ。
夕食は、村人と一緒に食べた。彼らにとって、この村での最後の夕食となる。お酒がないのはさみしいが、それでも彼らにとってはいい宴となった。
オレは宴から抜け出し、ラキエルとともに馬たちのところへと近寄る。
『ラキエル、この馬たちのボスがどいつか聞いてくれないか?』
『いいけど、あとで』
『はいはい、ゴブリンね。聞いて聞いて』
ラキエルは一度ため息を吐く。それから一頭の馬に近付き、馬語で話をする。
オレも馬語はわかるので、何を話しているかはわかるが、オレが片言で喋るよりはラキエルの方がいい。
『あいつだって』と首を巡らせて、そいつを示すラキエル。
ラキエルとともにそいつのところへ。
『ボスかどうか、確認してくれ』
『ボスだって』
『人間の言葉がわかるか、聞いてくれ』
『多少』
「オレはサブだ。こいつはラキエル。わかるなら、ラキエルに返事をしてくれ。オレとラキエルは、従魔契約しているから、念話でやり取りできる。どうだ?」
『わかるって』
「よし。明日、この村から別の場所へと移動する。ここの村人たちも一緒だ」
『全員か?』
「そうだ。だから、旅のあいだの統率を頼みたい」
『わかった』
ふたりがやり取りする。
『日程と危険性を知りたい、って』
「日程は七日から十二日を予定している。危険性は街道に出てくる魔獣を想定している。襲撃される前に索敵できるから、オレたちが対処する。よほどの魔獣……そうだな、オーガまでなら対処できる」
ボス馬が目を剥く。
『オーガはとても強い。騎士団でも大勢が必要。だって』
「さすがに、オーガの集落は難しいが、先遣隊程度ならば、何度も討伐している」
『先遣隊は何匹?』
「八匹ずつ」
これまた眼を見張るボス馬。
『おまえたちは、そういう訓練を受けたのか?』
「そうだね」
独自訓練だけどね。
『ならば、我々は安心して、旅ができるな』
どうやら納得してもらえたようだ。
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