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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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259/648

259【麻薬処理の試行】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


2話連続投稿します(2話目)

 門を(くぐ)り、冒険者ギルドに行く。宿屋に行っても、みんなはまだ寝ている可能性が高い。


 冒険者ギルドは、一日中、開けられている。朝早くから、冒険者たちが集まってくるからだ。依頼達成報告や素材買取や新たな依頼の確認に。


 受付カウンターへと向かう。オレを確認した受付嬢がお辞儀してくれる。

「おはようございます、サブさん」

「おはよう。ギルマスはまだいないよね?」

「いえ、来ています。お会いになりますか?」

「頼むよ」


 少し待つと、ギルマス執務室へと通された。

「おはようございます、ギルマス」

「おはよう、サブ。ご苦労だったな」

「あっ、話は聞いているんですね?」

「簡単にな」

「工作員三人は、どうしてます?」

「一応、牢屋に入れてある。どうするかは、まだ決めていない」

「そうでしょうね。会ってもいいですか? 伝えたいこともありますし」


 地下の牢屋は、明かりのないジメジメした空間だった。不衛生ではないが、あまり長居したくない感じだ。

 三人は、独房に入っていた。そこから出してもらう。食事は与えられているが、陽にも当たらず、動きまわることもできない状態で、みな痩せていた。


 三人をイスに座らせる。お茶を出す。

「三人とも、久しぶりです」

 三人は、会釈しただけ。

「まだ処分は決まっていないそうです。で、ひとつ教えておこうと思いましてね」

「何か」とフロイドル。

「エルゲン国は、ダイナーク国という国になった」

「はぁ?」三人が目を剥く。

「王妃様が謀叛(むほん)を企て、それが成功したらしい」

「王妃様が?」「なぜ?」「どうなっているの?」

「王妃様は、もとダイナーク国の王女様だったらしいね。反旗を翻すチャンスを待っていたようだよ。おそらく、今回の麻薬の作戦も王妃様の計画のひとつだったのかもね。そして、王弟殿下を戦場に送り出し、死なせることも」

「王弟殿下? どういうことだ?」

「今回の侵攻作戦を指揮していたのは、王弟殿下だったんだ。現在、彼は麻薬持ち込みを主導した犯罪者として、更迭されている。いずれ処刑されるだろう」

「それも王妃様の計画だったというのか?」

「おそらくね。王弟殿下は王様に認めてもらいたくて、麻薬作戦を行ない、侵攻作戦をも行なった。だが、実際には、奥の奥まで侵攻させて、引き上げ時を失わせて、全滅させるつもりだったのだと思う。証拠はないがね。でも王様が王弟殿下を唆したんだろう。王様も王弟殿下が疎ましかったらしいから。で、タイミングを見計らい、王妃様が王様を殺害した。そして、王位は王妃様の頭に、とね」

「本当の話か?」

「うん。エルゲン国軍の駐屯地で、調停をしていたんだが、エルゲン国国王陛下からの返事を待っていたら、王妃様からの返事が来た。その内容が、王が変わった、国名が変わった、進軍していたのはエルゲン国軍で、ダイナーク国とは関係がない、それでも遺憾には思うので、それなりの補償をする、というものだった」

 三人とも何も言えなくなっている。

「よくもまぁ」とギルマス。今まで黙って聞いていたが、話しているあいだ、ずっと驚いていた。つまり、たいして何も聞いていなかったわけだ。「できたよな、その王妃様」

「よっぽど業腹だったんでしょ、自分の国を奪われて」

「にしても王妃になって、何年経ってからの復讐だよ」

「自分の権限がそれなりに大きくなるのを待ってたんでしょうね」

「王妃様に権限か。特に最初はほとんどないに等しいだろうな。で、ようやくすべてが出揃った、ということか」

「そこに、武器を失ったバグラールに、王位が新たな王様に移ったゴウヨーク。今がチャンスと動き出すエルゲン国。王妃様にとっては、千載一遇の機会だったんでしょうね」

「なるほどな」

「わ、我々は」とフロイドル。「踊らされていたのか」

「まぁね。でも上が代わっただけだ。いや、ちょっと違うか? 今、向こうに帰ったら、いくら国のためとはいえ、麻薬取引をしたのは事実。犯罪者として、捕まるか」

「そうだな」とギルマスもうなずく。

「我々のしたことが、ムダに」

「こう考えたら?」とオレは慰めの言葉を用意した。「自分たちのおかげで、新政権樹立したんだ、ってさ。まぁ、自慢にはならないけどね」

「確かに自慢にならないな」と苦笑うフロイドル。

「話は変わるけどさ、自分たちも麻薬を身体に入れてるわけだけど、大丈夫なの?」

「ん? なんのことだ?」

 ムッ、本当に知らない顔をしている。

「いや、鑑定したら、そうなっていたんだけど、もしかして自分たちで気付いていないの?」

「ど、どういうことだ?」

「ということは、第三者がいるのか。そいつが麻薬を撒き散らしている?」

「おい! 本当にオレたちにも麻薬が? いったいいつ? はっ!」

 どうやら、三人とも、誰に盛られたのかに気付いたらしい。

「誰かわかった? 三人が関わる相手だと、冒険者か商人か、あるいは両方かな?」

「両方だ」とフロイドル。「商隊として、村や町を行き来している。二台の馬車だ」

「もしかして、もっと王都に近付いたりしている?」

「そこまでは行っていないはずだ。確か、ミゼス町くらいまでだったと」

「おいおい、あそこまで麻薬をばら撒いているのか」オレは顔を覆う。

「麻薬の受け取りに使っているだけだと思うが、確証はない」

「まぁ、麻薬を追えば、見つかるだろうな」

「そんなに簡単か?」とギルマス。

「少なくとも、像を運んでいるヤツを引っ張ればいいだけですよ」

「それが大変なんじゃ?」

「あはは」と笑って誤魔化す。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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