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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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256【スレイプニルの軍勢】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


2話連続投稿します(1話目)

 翌日。朝食を食べていたら、食器がガタガタ言い出した。来たか。早いな。

 オレは、手早く食べ終え、片す。

 それから、門まで出た。

 門衛が指差してみせた。

 声が出ないようだ。

 うほぉ、でけー。

 一頭だけでも、信じられないのに、それが次から次へとやってくる。

 しかもすべて戦闘装備を身に着けている。

 今は歩いているが、全速力で走ってこられたら、ここの騎士すべてが、ミンチになる未来が想像できる。もしかしたら辺境では本当に魔獣をミンチにしているんじゃなかろうか。

 ちなみに、初めて見たスレイプニルだが、思っていた形状ではなかった。マンガなんかでは、馬の身体に前脚と後ろ脚のあいだに四本の脚があるイメージ。車でいったら、八輪車。

 だが、このスレイプニルの脚は前脚と後ろ脚という形で、それぞれが四本ずつある、というものだった。

 人間に例えると、四本腕に四本脚。動きにくそう。いや、まだそっちの方が動けそうか?


 街道がスレイプニルたちで埋め尽くされた。ようやく停止すると、兵士たちが降りてきた。兵士たちは、金属甲冑ではなく、基本、革鎧だ。また役割があるようで、持つ武器も異なる。

 最後に降りたのが、おそらく総大将であろう。鑑定したら、ドビックリした。ベルタルク辺境伯その人だったからだ。


「B級冒険者のサブという者はおるか!」と野太く響く声。

 オレは、一歩前に出る。

「私がサブでございます、ベルタルク辺境伯様」

「ムッ、なぜ儂を知っておる!」

「申し訳ございません、鑑定してしまいました。それで」

「なるほど。良い。それでそなたが、エルゲン国との調停をしている、と聞いた。正しいか?」

「はい。冒険者ギルドの魔導通信機を介してですが、国王陛下より委任状を授けられました」

 委任状を渡す。

 内容を確認する辺境伯。

「確かに、国王陛下の署名である。それで現状はどうか!」

 おや、国王陛下の署名がわかる、というのはどういうことだ?

 とにかく、送った書類の複製を渡す。

「その条件で、どうするのかを問うておりますが、いまだに返答がなく」

「そうか」

 駐屯地を眺めみる辺境伯。

「まだ武装解除をしておらんのだな」

「はい。必要になったら、というつもりでおります。また、武装解除しましても後日返還することで、同意してもらいました」

「なるほど。見たところ、騎士ばかりだな」

「それを尋ねてみたところ、今回の作戦は、街道の村や町を制覇していくのが目的だったそうで、そのため、騎馬隊だけの構成なのだと」

「それでは、挟撃を受けてしまうではないか」

「そうです。ところが、この裏にはもうひとつの作戦が動いていました」

「もうひとつ?」

「立ち話もなんですから、どこかで座って、お茶でもいかがです?」


 大通りにデカい天幕が張られた。辺境伯側のものだ。そこにエルゲン国の団長たちも招待された。

 天幕が張られているあいだに、エルゲン国国王陛下に対して、ゴウヨーク国が寄越した部隊の構成が報告されて、これに勝る戦闘力はエルゲン国にはございません、と団長さんたちはコメントした。これで国王陛下を圧迫できるだろう。


 それぞれの紹介が終わり、お茶を飲む面々。

「さて、もうひとつの計画とは、何か、話してもらおう」とオレに問う辺境伯。

「はい。なお、これは彼らも預かり知らなかったことなので、責めるのは間違っております。その点、ご了承ください」

「わかった」

「この計画は、秘密裏に行なわれ、村や町に浸透してしまいました。気付いたときには、術中にハマっておりました」

「なんなのだ?」

「麻薬にございます、辺境伯様」

「麻薬だと!」

「どうやらアズマノ国から我が国を経由して得ていたもののようです。本来ならば、持ち込んだ時点で罪に問われ、罰せられます。ですが、このような見た目をしていたので」と像を出す。「誤魔化されたようです」

「ふむ、芸術品だな」

「私は王都冒険者ギルドからの依頼で、これの運搬を請け負いました。ひとりの護衛対象とともに。ちなみにその人物は利用されただけで罪はありません」

「続けたまえ」

「この依頼は、届け先が、エルゲン国でした。初めはふつうの依頼だと思っていました。でも、少しおかしい、と仲間のひとりが疑い出しました。それでこの像を鑑定したところ、高純度の麻薬の塊だと判明したのです」

「ふむ」

「とにかく、王都冒険者ギルドに対応をお願いしました。ところが、その矢先に、麻薬で殺されそうになりました。その場で犯人ふたりを拘束。いろいろと聞き出したところ、この裏の計画が出てきました。そこからこちらの部隊が進軍してきていることを知り、王都冒険者ギルドから国王陛下に報告が上がり、辺境伯様のもとに伝わったのだと思われます」

「なるほど」

「その後は、デルフさんから報告があったかと」

「うむ、聞いた。まぁ、一部には信じられない報告も混ざっておったが。彼が、これまで間違った報告は上げていないので、信じることにした」

「そうでしたか」

「さて、エルゲン国国王陛下からの返事であるが」

「その点は」と団長さんの代表。「あなた様の軍勢のことを付記し、我々に勝ち目はないことを通信にて報告しましたので、選択の余地はなくなったかと思われます」

「それを判断できる人物なのか、国王陛下殿は」

「できる、と信じております」

「こんな卑劣な計画を許す時点で、それもどうかと思うぞ。だいたいなぜ我が国を攻める? なぜバグラールを攻めない」

「あっ、報告が抜けていました」とオレ。

 バグラールへも同じような作戦行動を行なっており、着々と戦果を得ている、と報告した。

「なんだ、二股してるのか! 余裕だなぁ、エルゲンは!」と笑っている辺境伯。「それで期限は決めてあるのか、サブよ」

「いいえ。すぐに返事が来ると判断していたので、特には」

「それもそうか。よし、魔導通信機のところへ連れていけ。ジョージに儂らが到着したことを知らせねばならぬ」

 国王を“ジョージ”呼びするとは、やっぱり知り合いか。


 冒険者ギルドのギルマス執務室へと連れていく。

 辺境伯様は、書類を用意すると、手早く記述し、確認すると、自分で魔導通信機にセットして、スイッチを押した。なかなか慣れた動作だ。


 ものの五分で、返信が届く。

「やっぱりいやがったか。サブ、今、エルゲン国の状況を調べているそうだ。あそこにしては、バグラールとゴウヨークを同時に攻めるのはおかしいらしい。丁寧な計画実行が特徴なのに、とこぼしておる」

「そうなんです?」

「ワシにはわからん。他国のことは、考えている余裕がないんでな。その点、ジョージのところには多くの情報が集まる。それはアイツが苦労して作り上げた大切な情報源だ。今回のこともわかっていた可能性もある。儂はアイツが味方で安心している」

「長いんですか、ジョージとは?」

「アイツは、貴族学園の後輩だ」

 やっぱりあるんだ、学校。しかも貴族学園か。寄宿学校になるんだろうな。あちこちから集められて、貴族らしい教育を受けて。派閥もできそう。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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