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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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253【ジョージからの書状】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


2話連続投稿します(2話目)

 団長さんたちと執務室で、夕食をすませ、お茶をもらう。

 そこにビープ音。魔導通信機だ。

 団長さんのひとりが、取り出す。

「君にだ」と渡された。

 受け取って、読む。

 それでオレはうなだれた。

「どうしたんだ、彼は?」

「さぁ。差出人の名前に記憶がないから、彼宛てだと思って、渡したんだが」

 それを聞いて、顔を上げた。

「えっ、名前に記憶がない? なぜ?」

「いや、ないものはない」

「あっ、他国にはまだ王様が交代したことは、伝わっていないのか」

「ん? 王様が交代?」

「この“ジョージ・ウインスター”というのは、現在のゴウヨーク国国王陛下だよ」

「ど、どういうことだ!」

 で、説明してあげる。

「そして、これはオレへの委任状。オレとの連絡が取れなくなり次第、侵略行為とみなし、全軍をもって、エルゲン国を自国に併合する。また、オレがそうすべきと判断すれば、同様に行動を起こす。ってさ」

 書類をテーブルに投げる。

 それを団長さんたちが読む。

「まったく、ジョージったら」ハァー。

「サブは、国王と面識があるのか?」

「彼の屋敷に、十日ほど、泊まっていた」

「彼の部下としてか」

「いいや。冒険者としてだ。荷物運びとその付随業務の依頼でね。その彼が、そこまで書いてくるというのは、本気だと思うよ」

「だが、ひとりに委ねるのは、どうなんだ?」

「彼はおそらく、進軍された時点で、全軍を上げるつもりになっていたんじゃないかな。だって、麻薬の密輸入もやられて、国民に麻薬を浸透させられ、一方的に蹂躙している軍を放っておけると思う? それを思い留まらせているのが、オレの存在。まぁ、信用されているのかもしれないけどね。複雑ぅ」テーブルに倒れる。

「つまり、サブは、全権大使ということになるか」

「どうする? どっちにしろ、先行の部隊が向かっているのは、確かなんだよ」

「な、何! どこからの情報なんだ!」

「あっ、言ってませんでしたね。オレがここに来る前に、出陣したんだ。ただ、距離があるらしくて、日数がかかるとか。でもそろそろ、その日数が経過するから」

「む、迎え討たねば!」と立ち上がる団長さんたち。

「ちょっと! 闘ってどうするの? この委任状の意味がないじゃん!」

 あっ、と気付く団長さんたち。

「どの程度の部隊かはわからないから、敷地内にある程度は迎え入れられるようにしておいてください」

「わかった」

「それから、この委任状のことを報告し、全面戦争をしたいのか、それともゴウヨーク国に麻薬の密輸入をして、国民を故意に麻薬で汚染して、その上で進軍したことを謝罪し、国民の麻薬汚染の治療を保証することを賠償金を支払った上で、確約するつもりがあるのか、その確認を必ず国王陛下からの返答を必要とすることを伝えてください。いいですね?」

「わ、わかった」

「あっ、賠償金には、あなた方が斬り捨てた人々のことも含まれますからね?」

「う、うむ」

「あとは……商業ギルドと冒険者ギルドも被害を被ったから、そちらから損害賠償を求められる可能性はありますねぇ。それも伝えておいてください」

「やった手前、否とも言えんな」

「それと、王弟殿下は、麻薬を扱った犯人ということで、こちらで処罰してもいいのかな?」

「それも盛り込むか」やれやれ、と首を振る団長さんたち。

 報告書がまとめられ、確認してから、そこにオレの署名も書き入れた。ほかの団長さんたちにもお願いした。連名というヤツだ。


 索敵さんを広げて、辺境伯軍の位置を探る。あと一日もない距離だ。人数は、千人余り。うわぁ。

 でも、この速度、馬を使い潰すほどではないか? あれ、違う。鑑定さんが反応した。

「うわぁ、スレイプニルだってぇ?」

「今、変な言葉を聞いたんだが?」「オレもだ」「スレイプニルと」

「みなさん、ご存知の魔獣ですか?」

「八本脚の馬だろう」「神々が騎乗する馬だと昔話にはあるな」「お伽噺の類いだよ」と誰もが笑う。

「笑うのは、結構なんですけどねぇ。すぐ近くまで、来ているんですよ、千人の軍勢とともに」

 全員が固まった。

「あっ、オレの索敵能力で、わかりました。あまりの速さに、うちの馬に聞いてみたところ、スレイプニルだろうと」

 本当に聞いてみよう。

『ラキエル、スレイプニルって知ってる?』

『知ってる。川の近くを駆けていくと、うるさくてうるさくて。だから、たまに脅かしてやった』と笑っている。

『ケルピーよりは弱いの?』

『ん、どうかな? でもヤツラ、筋肉バカで頑固者だから』

『なるほど』

『なんで? ゲッ、この地響きは! まさか、ここに?』

『そのまさか。よく気付いたねぇ。大群でやってきているよ』

『ねぇ、ケルピーになってもいい?』弱気になっている。

『なんで?』

『逃げる』

『いざとなったらな。でも大丈夫だと思うぞ。人間が手綱を握っているから』

『へぇ。長く生きてると、そんなことも起こるんだ』

「サブ」おっ、団長さんのひとりが復活した。「千人の軍勢が向かってきている、と言ったが、あとどのくらいで?」

「馬で一日くらいのところでした。けど、スレイプニルだとすれば、半日もかからないでしょう」索敵さんが最新情報をくれた。「おや、停止しましたねぇ。二騎だけ、こちらに向かってきます」

「おそらく、偵察隊でしょうな」

 ほかの団長さんたちもうなずいて、同意する。

「なら少しは時間がもらえるかな」


※スレイプニル

  ウィキペディア参照。

  本作では、本来の形状を採用。

  スウェーデン軍の紋章がわかりやすい。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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