252【泥棒騎士】
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2話連続投稿します(1話目)
落ち着いたところで、調理実習、開始。
テーブル出して、魔導具出して、調理器具出して、調味料出して、材料を出す。
全体をクリアする。オレの手も含めて。
いつのまにか、テーブルの向こう側には、団長さんたちだけでなく、ワラワラと騎士たちが集まってきていた。
「どうやら、君のすることに関心があるようだ。見せてやってくれ」と団長さんのひとり。
「まぁ、いいですが」
さっそく調理開始。
魔導コンロに鍋を載せ、そこに魔導飲用水ポットから水を注ぐ。コンロを起動して、火が着くと、まわりから驚きの声。
そんなの、気にせず、続けるよ。
野菜を刻む。木製ボールに入れておく。
肉も刻む。これは別の容器に。
次のボールに、小麦粉と少量の塩を入れて、水を入れて、練る。
湯が沸いてきたので、鍋を降ろして、フライパンを載せ、ちょっと植物油を垂らして、練った小麦粉の生地を流し込む。ちゃんと両面を焼く。
焼いたものを皿に載せる。
収納。
空いたフライパンに肉を放り込む。ジュワーッといい音。
軽く炒めて、そこに野菜を投入。塩コショウして、最後に醤油をまわしかける。
野菜炒めを皿に盛る。
収納。
フライパンをクリアして収納。
鍋を載せる。
再度、沸騰させて、火を弱め、不織布で包んだ茶葉を入れる。
マナミが思い出してくれたおかげで、不織布も便利に使える。ありがたい。
しばらくしたら、火を止め、鍋からタンブラー(もちろん、金属製)に移し替える。
茶葉の入った不織布を収納。
鍋をクリア。収納。
スープも欲しかったが、お茶でいいや。
使ったものをすべて収納して、終了。
最後に「以上でございます」と観客に一礼した。
みんな、唖然としていて、静かだったが、頭を上げると、拍手が起きた。なんで?
「あの」とひとりの騎士。「今、使っていたのは、魔導具でしょうか?」
テーブルを再度、出して、魔導具を出す。ひとつずつ名前と用途を説明する。
「それはどこで売っていますか?」
「どこでも。商業ギルドに登録された魔導具ですから、作れるところなら売っているでしょう」
「はぁっ? 一般人向けで売られている、と?」
「ええ。まぁ、どちらかと言うと、冒険者向けなんですがね。だから、冒険者ギルドでも売っているところはあります」
何人かが、ギルドの中へと走り出した。オレもあとを追うと、一画に彼らが集まっていた。販売コーナーだ。奪い合って、魔導具を掴んでいる。
「おい、泥棒騎士!」
そいつらが、ビクッとして、こちらを見た。怒りの表情だ。
「今! なんと言った!」
「泥棒騎士って、言いました。金も払わずに、持ち去れば、そういうことだぞ? わかっているのか?」
「なら、金を払えば――」
「ほう、誰に払うんだ? その誰かを斬り捨てたのは、誰だ? ここに金を置いていっても、登録者にも製作者にも一文も届かないんだぞ? 欲しければ、正規のルートで購入すればいいことだ。浅ましい行動は慎め。それともそれが騎士道精神に則った行為なのか?」
何も言い返せず、彼らは魔導具をもとのところに置いた。
「良かったな。ゴウヨーク国に、エルゲン国の騎士は泥棒の真似もするのか、と思われなくて」
ハッとする彼ら。
「そう、ここは君たちが進軍した敵国だ。その敵国に、自分たちは下の者です、と言っているようなものだ。騎士は浅ましい行動はしない、それは誇りに賭けても守るべきものだろう?」
「そうでした。大変、見苦しい姿をお見せしてしまい、申し訳ございませんでした」
そう言って、彼らは頭を垂れた。
「頭を上げてくれ。わかってくれれば、いいんだ。貧しい国民には、騎士は国の象徴でもある。国を守り、民を守る、それが騎士だ、とね。子どもが憧れる騎士でいて欲しい」
「ハッ! そのお言葉、胸に刻みます」
「職務に戻れ!」
「ハッ! 失礼いたします!」
オレの前で、会釈して、去っていく。
「君は」と後ろから声が掛かった。団長さんのひとりだ。「騎士の教官でもしていたのかね」
「まさか。私が思っていた騎士の姿を説いただけですよ」
「それにしても、上に立つ者という風格とでも言おうか。我々、団長格よりも上に感じるところがある」
「やめてください。いろんな人を扱ってきただけです」
「ふむ。ともかく、最近、士気が下がってきているようだな。盗賊紛いの行為に及ぶようになっているとは」
「中央から離れれば、気が抜けるものです。ましてや騎士は、まわりから見られるのが仕事、みたいなところもあります。おそらく、無自覚でしょうけどね」
「ムッ、それは考えたこともなかったな」
「そんなものです。比較的楽にここまで来てしまえたことも、要因でしょうがね」
「まぁ、確かに」
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