025【飯問題】
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短いので、2話連続投稿します(1話目)
しばらくして、街道脇に停車した。
「昼飯にしよう」
馬に飼い葉と水をやり、オレたちは黒パンと具なしスープと干し肉を口にする。
水は、ずっと移動中に川の水を集めていた。どうやって? オレの能力でさ。もちろん、飲める水を集めた。ちっとの不純物もないよ。いや、ゴミはない、という意味だよ。
ランドルフ以外は、干し肉をスープに落とす。それから黒パンをナイフで切り分け、スープに浸して食べる。
「温かいスープか。うれしいな」
「これもアイテムボックスのおかげだよ。あと、宿屋の料理人の」
そう、朝のスープを鍋に分けてもらっておいたのだ。
「ランドルフさん」とマナミが問う。「小型“コンロ”ってない感じですか?」
「“コンロ”? なんだ?」
「火を使う道具」とオレが説明。「ふつうは竈門? 外なら焚き火?」
「ああ。旅で火を使うのは夜だけだ。多少の暖を取るとかな。肉を焼くときもある」
「じゃぁ」マナミがさらに聞く。「鍋でスープを温めるのも焚き火?」
「そうだな。なんでだ?」
ここはこの問題を共有すべきだな。
「実はだな、昨日の宿屋の飯、うまくなかったんだよ」
「そりゃないだろ」
「まぁ、聞いてくれ。問題は塩分、塩が多いことなんだ」
「塩が多い?」
「うん。ゆうべは肉野菜炒めだったんだが、塩辛くて、エールを飲んでも半分も食べられなかった」
「そんなバカな!」
「おそらく君たちには美味く感じる味なんだろうな。ところが、オレたちにはダメだった。これには理由がある。肉体的なものだろうと思う。ランドルフぐらいの体格ならば、大丈夫だろう。しかし、オレたちは君から見たら子どもみたいだろう?」
「言っちゃぁ悪いが」
「そう、子どもみたいなものだ。この黒パンもオレたちには硬い。だからナイフで切り分けているんだ。干し肉もだな」
「オイオイ。となると旅のあいだをどうするつもりだ?」
「マナミ、小型コンロの話を持ち出すということは」
「自分たちで作る。その方がいいと思います。でも焚き火なんかだと火起こしまで時間がかかるでしょう? コンロがあれば、楽になるわ」
「話はわかった」とランドルフ。「だが、オレの知る限り、そういうものはない」
「奪ってきたものの中にもなかった。まぁ、キヨミに火魔法で火付けしてもらった上で調理かな。魔導具でも作れればいいんだが」
「作れそう?」
「魔導具自体の作り方を知らないからな」
そのとき、脳内で検索結果が出てきた。
「あれ、作れるかも。今、魔導具製造方法の文献が頭の中に閃いた」
マナミの顔に期待の表情。
「少し考えさせてくれ。オレもうまい飯、欲しいから」
うん、とうれしそうな笑顔のマナミ。
その後、移動を再開。オレは考えに集中する。
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