238【ビームと鏡】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
少し長いため、2話連続投稿します(1話目)
翌日。それぞれの作業へと散っていく。
キヨミとマナミには、木工加工を水魔法でやってみてもらう。
まずは、薪割り程度から。これは簡単。ウォーターカッターでまっすぐ切るだけ。これで板ができる。
次に板に穴を空ける。ここでつまずいた。
「どうイメージすれば、いいですかねぇ?」
「ウォーターバレットは?」ダメ。
「水をビーム状にすれば?」ダメ。
「どれも弾かれているよねぇ。威力が足りない、と仮定して、貫くイメージで、どうかな?」
「あっ、そういえば、当てるイメージでした。貫く貫く。よし。ウォータービーム」
水がそのまま板の向こうへと貫く。すぐにやむ。見事に小さい穴が空いた。
「やった!」とよろこぶキヨミ。
「よし。もう少し練習しよう」
「はい」
こうして、板に次々と穴が空けられていく。
「はい、終了。少し休もう」
ずっと集中していて、彼女は気付いていないが、だいぶ魔力を消費している。それだけ、威力が増している、ということだろう。
「キヨミ、貫通させるようにしているから、威力が増して、魔力の消費が上がった。気を付けろよ」
「えっ? あっ、ホントだ」と自分のステータスを見ている。「うわぁ、今までの三倍は消費している計算になってますね」
「ここだからまだいいけど、戦闘で使う場合は気を付けないと、マシンガンで撃つイメージだと、すぐに弾切れで倒れるぞ」
「それはいただけませんね」
そばでポスッと音がした。キヨミのウォータービームの当たる音と同じだ。
そちらを見ると、マナミが板に穴を空けていた。ポスッポスッと。
「なるほど。これ、いいですね。魔獣の額を撃ち抜けそう。でも距離があると、威力が落ちるのかぁ。微妙」
「えっと、マナミさん? 話を聞いていましたか? かなりの魔力を消費するって」
「えっ? あっ、ですねぇ」
「しかも水の適性が高いキヨミならいざ知らず、マナミは水魔法を使えても消費が大きいって」
「あっ、忘れてました。でもこれって、そばに水を用意すれば、消費が減るんですよね」
マナミがアイテムボックスから水筒を出して、フタを開ける。ちょっと飲んでから、ウォータービームを水筒の上で使った。ポスッ。
「かなり消費量が減りましたよ。あとはもうちょっと、威力が欲しいなぁ」
オレは、キヨミと見合わせた。キヨミが首を振る。オレも振った。こりゃ、ダメだね、と。
目的がズレてしまったので、お茶休憩を取ることにした。
銀メッキは、電気を使わないで行なえる。ただし、必要な溶液を作るのが、大変。地球の知識は得られても、それをこっちの世界のもので用意せねばならないのだ。地球の知識があって、必要物資が得られやすいとはいえ、それでも大変なのだ。それをこっちで用意するのが、どれだけ大変か。わからんでしょ、みなさん。
まぁ、いろいろかき集めて、なんとか溶液を作りましたよ。あとは、ガラス板に流せば、銀イオンがくっつく、という仕掛け。ガラス板をきれいにするのが、大変なんですけどね。
まぁ、そんなことをして、一枚の鏡が出来たのが、夕食前。ちゃんと薬剤を洗い流したよ。薬品も片付けたよ。はぁ、疲れた。
先にお風呂をいただいて、食卓に着く。
さっぱりしたおかげで、食欲も湧いてきた。
夕食後、お茶休憩。
「鏡、一枚だけ作った」とテーブルに出す。B5サイズ。「この製法では、これ以上の大きさは作れない。電気が必要だ」
「ほぉ。すごいな」とランドルフ。手に取って眺めている。
「まぁ、いいんじゃない?」とダルトン。「よくわかんないけどさ」
「このサイズでも」とキヨミ。「いいと思います。でもこの半分でもいいかな」
「両方のサイズがあれば」とエイジ。「それだけ幅広く、売れると思いますよ」
「そうだな」とオレ。「このサイズで作って、必要なサイズにカットすれば、いいか」
「大量に作れますか?」とキヨミ。
「ガラス次第だね。それに材料もあちこちから手に入れないと、オレの収集能力ありきだと、将来的にまずいし。あと魔石か。銀メッキの材料も入手するの、大変そう。限定生産限定販売って感じかな」
「だとしたら、王都での販売でしょうか?」
「そだね」とダルトン。「限定商品っていうのは、田舎よりも人の多いところでの販売の方が売れるのは確かだからね」
「だが、王都は」とランドルフ。「今、混乱している。果たして、うまく売れるだろうか?」
「そうだった。なら安定しているエルゲン国の王都だったら? ここが落ち着いたら、向かうんだろう?」
「そうだな」と納得するランドルフ。
「その前に」とオレ。「エルゲン国の情報を収集しなくちゃな」
「それ大事」とダルトン。「それにラーナの行く先の、なんだっけ?」
「チタラ城な」
「そこもどんなところかもわからないんだろ? 調べないと安心できないよ」
「確かにな。ラーナは、どんなところかは、聞いた?」
首を振るラーナ。
「そこに、行く、住む、やすい。神父様、言った」
「ほら」とダルトン。「疑うのは、悪いけどさ。本人にきちんと説明してなかったら、ダメじゃん」
ムム、急に不安になってきた。このまま、ラーナを彼らに渡していいのだろうか、と。
「よし。それも含めて、情報を得よう」
全員がうなずく。
※銀メッキ
日本大百科全書参照。
本作では、化学メッキ法を使用。
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