229【大雨は、念話が便利】
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少し長いため、2話連続投稿します(2話目)
翌朝。目覚めると、男全員が寝ていた。
静かに抜け出すと、キッチンで女子の声。顔を出す。
「おはよう」
「「「おはようございます」」」と三人娘。いいねぇ。朝から女子の明るい声というのは。
「みんな、よく眠れたかい?」
三人ともいい返事。
「よかった。男どもは、まだまだみたいだ」
「ウーちゃんもですよ」とマナミ。
「まぁ、今回は頑張ったからね。朝食には起きるだろう。ラーナとは、どうだい?」
「いい子ですね。片言でも自分から話してくれて」
「お互い、しゃべる、大事」とラーナ。
「そうだな。ラキエルを見てくる」
ドアの外は、土砂降りだった。バケツをひっくり返したみたいな、というよりも、滝の中にいる気分だ。
ラキエルのいるテントを見る。あれ、いない。索敵すると、森の中にいた。まわりの魔獣をチェック。いるいる。でも小物ばかりだ。
『ラキエル、何をしているの?』
『びっくりしたなぁ。草を食べてるの。ここしばらく、新鮮な草を食べてなかったからね』
『あぁ、なるほど。でも、出掛けるときは、ひと言、欲しいよ』
『心配した?』
『心配した。ゴブリン、食べるか?』
『ひとつでいいや』
『了解。テントに置いておくな』
『了解』
土砂降りは、それから四日も続いた。その翌日には、信じられないくらいの快晴となった。
外のようすを確認するために、ドアを開けた。でもすぐに閉じた。グググ。怖がっても仕方あるまい。深呼吸する。それから意を決して、ふたたび、ドアを開けた。
そこには、村の男たちが、立っていた。おのおのに武器を手にして。怒りと恐怖の顔付きで。
「おはようございます!」と声を張る。「サブと言います。大雨の中、道に迷い、お邪魔いたしました。許可も得ずに申し訳ございませんでした」と頭を深々と下げた。
少し間があり、男の声がした。
「頭を上げてくれ。話がしたい」
ゆっくりと頭を上げる。
声のヌシが、一歩、前に出ていた。
なんともいえないが、彼が村長だろうか。
「この村に長はいない。だが、代表して、オレが話す」
「わかりました」
全体的に見ると、獣人が多い。人間族もいるし、ハーフエルフもいる。そして、代表だと言ったのは、肌の浅黒いダークエルフだった。ここで一番の年長は、彼だ。だが、エルフなのだから、年齢からすれば、若いはずだが、そうは感じない。
「オレは」とダークエルフ。「ゾーンだ。もう一度、名前をいいか?」
「サブと言います」
「サブよ、おまえたちが来た日の大きな気配は、おまえたちに関係があるか?」
あっ、ウーちゃんのことだね。
「すみません。うちの者です。怖がらせてしまいましたね」
「そうか。今、その者はどうしているか?」
「気配を抑えて、眠っています」
「暴れたりは、しない、か?」
「しません。攻撃されない限りは」
「わかった。あの魔獣は何か?」とラキエルを指差す。草を食んでいる。
「種族はケルピー。名前はラキエル。オレの従魔です」
「ケルピー」驚いて、目を見開いている。「初めて見た」
「でしょうね。ちなみにラキエルも攻撃されなければ、大丈夫です」
「そうか、わかった。仲間は何人だ?」
「オレを含めて、九人、います」
「九人か。馬車からして、商人と護衛の冒険者と見るが、正しいか?」
「正しいです。オレが商人です」
「商品はあるか? 物々交換は可能か?」
つまり、お金はない、と。
「どんなものが、ご入り用でしょうか? いろいろとあります。また、交換できるものはなんでしょうか?」
着ている服は、全員が似たようなもの。魔獣の革かな? 家々を見る。小屋を繋げて作ったような感じ。百人がいるにしては、小さい気がする。
「正直、なんでも欲しい。だが、何が売れるのかわからない」
「商人にそういうことを言いますと、ボラれますよ?」と笑む。「わかりました。とりあえず、お互いに出せるものを出しましょう」
「助かる」
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