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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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227/648

227【大雨の中の仲間たち】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


少し長いため、2話連続投稿します(2話目)

 翌朝。オレは寝不足だった。気になって、監視していたのだ。これといった異変はなかった。

 窓の外は、大雨の音しか聞こえない。降り方は音に強弱がある。だが、全体的には大量に降り続いている。

 こんなとき、天気予報があれば、と何度思ったことか。でも鑑定さんの反応はない。

「酷い顔をしておるのぉ」

「おはよう、ウーちゃん。早いね」

「おまえと同じじゃ。ほれ、食材と道具を出しておけ。ラーナに作らせる。朝食まで眠るのじゃ」

 やさしいねぇ、ウーちゃん。抵抗してもムダだな。

「了解」


 朝食に起きる。少しは気分がいい。

 ラーナの料理は、美味い。品数は少ないが、ひとつひとつに集中したのだろう。充分だ。

 それを食べ、お茶休憩。

「さて、外は大雨。向こうも大雨。川のようすは、昨日より酷くなっている。おそらく、みんなは大雨で視界が悪く、状況を把握できていないだろう。動いていないのは、その証拠だと思う」

 ふたりがうなずく。

「手遅れにならないうちに彼らと合流するぞ。ラーナの結界があるから、オレとラーナは大丈夫だろうが、ウーちゃんは前を見るのも大変だよな」

「うむ。目に雨粒が当たって、辛いのじゃ」

「だろうね。そこで結界の魔導具を着けるから、安心して」

「良かったのじゃ。ぬれるのは気にならんぞ」

「まぁ、湖に潜っていたんだから、当然だけどね。でだ、距離を考えると、ふつうなら半日と少し。この大雨を考えると、もう少し速度が落ちる。ウーちゃんが疲れるかもしれない。ウーちゃん、無理はダメだよ。向こうに着いたあとも走る必要はあるからね」

「そうか。合流するだけではいかぬか」

「うん。そこから安全な場所に移動する必要があるんだ。だから、無理はダメ。休憩しながら行くよ」

「わかったのじゃ」

 軽く準備を整え、一階に。

 食堂は朝食を食べる人がちらほらいた。

 女将さんは、そこで働いていた。

「女将さん」

「おはよう。食べるのかい? 金取るよ」と笑顔。

「いえ。もう出発しますので」

 その場の全員が身動きを止め、こっちを見た。それから女将さんと一緒になって、止めてくれる。

「ご心配、ありがとうございます。でも大丈夫です。雨具がありますから」

「いや、雨具があったって……ああ。そういえば、あんた、昨日、ぬれてなかったね」

「ええ。スキルで道もわかりますから。本当は夜通しでも移動できるんですけど、それをやっちゃうと魔獣に襲われてしまうので、自重しています」と笑む。

「でも地面はぬかるんでいるぞ」とひとりの客。

「そこは頑張ります」としか言えない。

「どうしても行くのかい?」と心配げな女将さん。

「無理はしません。途中で雨宿りしながら行きますので」

「わかったよ。本当に無理だけはしないでおくれよ」

「はい。お世話になりました」


 とっとと宿屋を出る。ふたりはすでに雨の中。ラーナの結界でぬれはしない。でも足元はちょっと泥跳ねしている。

「ウーちゃん、馬になって。ここへは馬で入ってきたからね」

「おお、そうじゃった」

 裸になって、馬になるウーちゃん。服はオレが預かる。離れ離れになったら、ウーちゃん、裸ん坊だな。

 馬になったウーちゃんに、ラーナを乗せ、その後ろに乗る。

『そういえば、ウーちゃん』

『なんじゃ?』

『この状態でも雪走りってできるの?』

『うむ。では、それで走ろうか』

『門近くまでね。少しも跳ねないのは不自然だから』

『うむ。わかったのじゃ』


 門に近付くと、門衛にも止められた。

 あれこれと説明して納得してもらった。

「自己責任だからな!」

「もちろんです!」

 お互いに大声なのは、大雨で聞こえにくいから。でもこちらの気合いが伝わったようだ。通してくれた。


 門から十メートルほどで、後ろを振り返ると、大雨のカーテンで、門がかろうじてわかるだけだ。

「首に魔導具を着けて、と。よし、ウーちゃん、ケルピー化して、行こう。途中で大きくなって、速度を上げよう」

 ヒヒーンッと嘶く馬ウーちゃん。あら、そんなこともできるのね。

 で、ケルピー化に大型化。

 大雨の中を駆ける。


 途中、何度かの休憩(地面に降りて)を取り、さらに進んだ。

 その都度、時計を確認していたが、到着したのは、もうすぐ夕方という時間だった。まわりは大雨で、ちっとも時間がわからないけど。

「到着。このあたりのはず。ウーちゃん、小さくなって」

 縮むウーちゃん。

『地上に降りよう。ゆっくりでいいよ。街道の上のはずだけど、脇の森に突っ込むかもしれないからね』

 ゆっくりと螺旋を描きながら、降りていくウーちゃん。

 索敵にみんなを捉えているが、大雨でまったく見えない。それでも下方はラーナの結界で、状態がわかる。

 いた。馬車とラキエルだ。

『今のところにいたよ。地面は水浸しだね』

『どうするのじゃ?』

『もう少し降りて、みんなのまわりを確認しよう』

 地上から一メートルほどの高さをグルグルとまわる。オレたちに気付いたラキエルが首を上げ、嘶く。

 それに気付いたみんなが幌の下から外を伺う。

 元気そうだ。だが、車輪が半分近く水で埋まっている。ラキエルも。

「向こうに! 行ってくる! 待ってて!」

「はい!」

 オレは、浮遊と結界の魔導具を起動。ウーちゃんから離れる。

 御者台に降り立ち、結界を解くと、幌の中に飛び込んだ。ぬれちった。

「大丈夫か、みんな!」

 みんなが、頭を突き合わせる。

「大丈夫だ!」とランドルフ。「なんで、この雨の中を来た!」

「この先の川!」と指差す。「氾濫して危険な状態だ! 急いで離れるぞ! 準備!」

 そのひと言でみんなが動く。

 オレは、ラキエルの手綱を解く。

『ラキエル、ケルピーになってくれ。ここを離れる』

『わかった』いい返事。待ってました、って感じだな。

 みんなの準備ができた。

「結界で雨を! 浮遊でウーちゃんへと向かってくれ! オレは馬車を回収する!」

『ウーちゃん、巨大化して、みんなを頼む』

『わかったのじゃ』

「ちなみに! ウーちゃんに! 乗っている女性は! お客様だ! 手を出すなよ!」と笑ってやる。

 みんなを送り出す。

『ラキエル、近くに来てくれ。馬車を回収する』

『えっ、乗るの?』

『あとでゴブリン、あげるよ?』

『了解』とウキウキしてるよ。現金なヤツめ。

 馬車から離れ、ラキエルに乗る。うわっ、ぬれてるよ。お尻に染みてくる。

 急いで、馬車を回収する。

『よし。ラキエル、ウーちゃんの下に潜って』

『ウーちゃん様を雨よけにするのか!』

『この雨の中、君に方向がわかるかね?』

『わからない』気落ちしちゃった。

 ラキエルを叱咤して、ウーちゃんの下に。

 索敵で安全圏を確認。

『ウーちゃん、右方向に向かって……この向き。ゆっくり進んで』

『了解なのじゃ』


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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