224【黒雲】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
少し長いため、2話連続投稿します(1話目)
途中から、雲が出てきた。黒い雲なので、降ってくるかも。気温も低くなっている。
『ウーちゃん、雨が降りそうだね』
『うむ。別に雨くらいは構わぬが?』
『こっちは構うよ。幸い、町はもうすぐだ。小さくなって、地上を走ろう』
町を守る壁が遠くに見えている。
『了解じゃ』
シュルシュルと小さくなって(それでも充分にデカいけど)、地上に降り、地面のちょっと上を駆ける。
速度は落ちるが、大きいままだと大騒ぎになるからね。まぁ、小さくなったからといって、ふつうの馬に比べたら、全然早い。それに地面を蹴っていないから、突き上げもないしね。
門が見えてきた。ここで馬化してもらう。それから空気入りの荷物をウーちゃんの首にかけ、オレも背負う。
ウーちゃんが、軽く走る感じで、門に近付く。
門衛に近付く前に、オレが降り、門衛と話をつける。護衛(依頼書で証明)で結界を張っていること、ギルドカードがないことを説明。入町料を支払う。
宿屋を教えてもらい、そちらに向かう。路地裏で、ウーちゃんに人化してもらう。
宿屋で三人部屋を食事とお湯なしの一泊で借りる。三階の手前の部屋。
部屋の確認をして、荷物を片して、窓の木戸を閉めた。魔導ランタンを出した。
ふたりを残して、宿屋をあとにする。
冒険者ギルド到着。
やはり、町だけあって、冒険者の数も多い。時間的に依頼達成報告だろう。カウンターも埋まっている。
外から、ザーッという雨音が聞こえてきた。
「降り出したかぁ」とひとりの小柄な猫獣人の男性。若そう。ドア脇から外を眺めている。ネコは雨にぬれるのを嫌う、と聞いたことがある。彼もそうらしい。
ほかの冒険者たちも外を気にしている。口々に今後のことを話している。
カウンターのひとつが空いたのに気付いて、そこに行く。
カウンターの向こうを見て、躊躇してしまった。だって、厳つい男性なんだもん。
「コラッ、ビビってるんじゃねぇ」とその男性。ううむ、自分でわかっているんじゃん。
とにかく、前進。
ギルドカードを出して名乗る。
「B級冒険者のサブです」
「ほぉ」とオレの顔を見る。「見えねぇな」
「従魔が強いんで」
「ふぅん。で? どうやら依頼達成報告じゃぁなさそうだが?」
「王都冒険者ギルドのギルマス宛てに到着報告したい」
「依頼書は?」
出して見せる。
彼は受け取り、流し読む。それから立ち上がった。
カウンターに立て札を立てた。
「おう、来い」太い指でクイクイやる。
なんで? まぁ、付いていくけども。
ありゃ、階段登って二階へ? この流れ、ギルマス執務室直行なんですけど?
あれ、ドア開けて、入っていく。ノックもしないの?
「いつも言っているじゃないですか! ノックしてくださいと!」と女性に怒鳴られているよ?
「オレの部屋だ! オレの勝手だろが!」
「ここはギルマス執務室です! あなたはそこで働いている人で、あなたの勝手にしてはいけません!」
「うるせぇなぁ」
「だいたい、今は下で依頼達成報告を受けている時間ですよね! 時間になるまで、待てないんですか!」
「到着報告だよ! 来い!」とオレを呼ぶ。
部屋に入る。
彼の相手をしていた女性は、小人族だった。見た目は成人直後の少女。声を聞いていなければ、そうだと思っていたことだろう。膨れっ面している。
「B級冒険者のサブです。よろしく」
「ご苦労様です。うるさくして、すみませんね」
「いえ。いつものこと、なんでしょう?」
コクンッとうなずいた。
「それで」とギルマス?「オレがレイバク町冒険者ギルドのギルマス、ロイドだ。よろしくな。そいつは、副ギルマスのマーガレットだ。名前負けしてるがな」と笑う。
「なんか言ったかしら?」と冷ややかな声。「糞踏み坊や」
ギルマスが真っ赤になった。
「お、おま、いつの話だよ!」と動転している。
これ、いつまで続くのかな?
しょうがないなぁ。
オレは、スタンガンを取り出し、ふたりのあいだに立ち、スタンガンのスイッチを入れる。バリバリバリバリッ。
ふたりが固まる。
「おい」と笑顔で「いつまで、待たせる、つもり、だぁ?」
ふたりは何も言わない。
「どちらが、応対、してくれる、のかなぁ?」
「わ、私が」とマーガレットの手が上がった。
スタンガンのスイッチを切る。
手には持ったままだよ。いつでも処刑できるように、ね。ふふふ。
「よろしい。到着報告を王都冒険者ギルドのギルマス宛てに頼む」
オレはソファーに、ドッカと座る。
マーガレットが書類にペンを走らせ、確認。
オレの前に、その書類とペンを置かれたので、さっさと記入。追加のメッセージも記入した。
マーガレットに差し出すと、内容を確認して、部屋の角にある小型冷蔵庫型の箱のところに行き、天板を開け、そこに書類を置き、天板を閉じた。それから天板の一角に触れた。それも数秒。おそらく、あれは魔導具だろう。一種のファックスかな?
操作を終えると、彼女がそこから離れる。
「報告終了しました」
「ありがとう」
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