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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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222/648

222【彼らとの野営】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


少し長いため、2話連続投稿します(1話目)

 お風呂から戻ってきたら、見事にお皿がカラになっていた。作った人間としては、うれしい。マナミの気持ちがよくわかった。

「これ、野営じゃねぇよ」と虎獣人。「どこかの村の広場での野営よりも贅沢」

「わかるわかる」と猫獣人。「お風呂に美味しい料理。あとは快適な寝床があれば、もう高級宿屋よね」

「さすがに、寝床は用意できないよ」と苦笑いのオレ。

「いや」とベズーラ。「テントを張れただけでもありがたい。それにこれだけの気配があれば、魔獣も寄り付かないだろうから、安心して眠れる」

「その点は、太鼓判を押すよ」

「しかし、これはサブたちのふつうなのか?」

「まさか。いい空き地があったからで、ふつうはちょっと帆布を張って、その下で飲食する程度だよ」

「そうか」

「でも」とエルフ。「いろいろな調味料があったが、知らないものもあったな」

「うん。醤油と味噌は、アズマノ国にあるものを再現したものだよ。本当は向こうから取り寄せたいんだけど、遠いから難しくってな」

「さっきのは?」

「試作品。別の原料で作ったんだ。まだ試作段階だから、売り出せないんだけどね。味はどうだった?」

 全員から、美味しい、とお墨付きをもらった。うれしい。

「それと」と狼獣人。「驚いたのは、魔導具だよ。火の出ない魔導コンロなんて、初めて見た。ただでさえ、魔導コンロなんて、新しいものなのに」

「新商品なんだよ、あれは」

「ん?」

「魔導コンロ、オレが登録者なんだ」

 狼獣人の目の色が変わった。

「本当に!?」

「ああ。あの魔導コンロは新開発したんだけどさ。人から、火が出ないから、使えているか、わからない、って文句が出てね。売れそうにないんだ」

「サブは、魔導具師なのか」

「うん。ほかにも魔導ライターや魔導飲用水ポットも登録したよ」

「うわぁ、全部、欲しいのばっかりのヤツだ」と頭を抱える彼。

「ありがとう」と礼を言っておく。

「悪いな」とベズーラ。「こいつは、魔導具好きでな」

「魔導具好きで、何が悪い!」と狼獣人。

「うるさい。このとおりでな。金を得ると、全部、魔導具に注ぎ込むバカなんだ」

「だから、大金を持たせないの」とクスクス笑う猫獣人。

「可哀想だと思わない?」と猫なで声で狼獣人。オレに聞かれても、ねぇ。

「魔導具買って、飯が食えなくて、ヒイヒイ言うのは、おまえじゃないか」とエルフ。

「そうだけどさぁ」とうなだれる彼。

 なるほど。彼はこのパーティーのおバカ担当なんだな。うちでは、ダルトンかな? おバカ具合は、負けるけど。

「まぁ、このおバカは、放っといて」と人間族。「旅をしている、と言っていたけど、何かの依頼?」

「おい」とベズーラが、人間族の彼女を咎める。

「ベズーラ、大丈夫だ。商業ギルドからの依頼で、物品を運んでいる。届け先は、済まないが、教えられない」

「悪かったわ。こういうのは、聞いちゃいけない行為だったわね」

「知らない人間同士だ。しかもこんな場所で出会った。怪しく思ってもおかしくないさ。それにそっちの仕事も聞いたしな。このくらいの情報は出しても大丈夫だ」

「そう言ってもらえると助かるわ。迷惑ついでに、もうひとりの女性について、聞いても? さっきお風呂に行くときに、チラッと見えたのよ」

「別に秘密でもなんでもない。人見知りでね」

「でも冒険者には、見えないのだけど?」

「まぁね。彼女は後方支援要員でね。結構、助かっているんだ」

「後方支援? いったいどんな?」

「さすがにそれは、うちのパーティーの秘密だから」

 彼女はひと息吐き出すと、うなずいた。

「それでいいわ。教えてくれてありがとう」

「どういたしまして」これで我慢してくれるかな? 男性三人に問う。「さて、お風呂、どうする? 三人一緒は入れないと思うけど」

「まずは」とベズーラ。「見せてもらってもいいかな?」

「そうだね」

 オレはウーちゃんに念話して、ラーナをお風呂場から離すように言う。わかった、との返事。

 お風呂場を見せて、まずは虎獣人と狼獣人が、入浴することに。ベズーラは最後だ。

 ふたりに入り方を教えて、しっかりと身体を洗ってもらい、しっかりと浸かってもらう。ベズーラには、そばで見ていてもらい、入り方を覚えてもらう。


 三人が入浴をすませ、焚き火のところに、順々に戻ってきた。

「ふぅぅ。いいもんだな」とベズーラ。たっぷり堪能したようだ。

 全員にジュースを配る。

「うわっ! これ、冷たい!」と猫獣人。「なんで?」

「もちろん、冷やしたからだよ」

「どうやって?」

「魔導具で」

「何!? 魔導具!?」と狼獣人。

 ううむ、“魔導具”という言葉を禁句にすべきか。

「うちのパーティーのメンバーのひとりに要求されてね。で、作った。でもわざわざ魔導具に頼る必要はないよ。氷を作れれば、それだけで冷やせるからね」

「氷」

 猫獣人の彼女が見たのは、人間族の女性だった。

 彼女は、氷魔法を使えるのか。

「余裕があったらね」と渋々。

「わかった。贅沢は言わないよ」

「充分、贅沢よ」と呆れている。

 しっかりお姉さんと頑張る妹的な関係?


 もう少し話して、眠ることに。

 ウーちゃんの強い気配があるとはいえ、彼らはやはり、不寝番を立てる、と言う。

 小屋に入ると、女性ふたりは先に眠っていた。

 明かりを消し、ベッドに横になる。

 まさか、こんなところに冒険者パーティーがいるとは思わなかったなぁ。でも、それなりに信頼できそうな冒険者たちだった。まぁ、完全に信じるのは危険ではあるが。それに明日には、別れるのだ。それまで我慢我慢。


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― 新着の感想 ―
日中でも木下など木陰になってる場所の土を掘ってカップを入れておけば冷えるよ、日のあたる場所をの気温差で結構冷たくなるししっとりしてる所で根の近くだと水を吸い上げてたりするからより冷える。
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