220【|彷徨《さまよ》う馬車】
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少し長いため、2話連続投稿します(1話目)
翌朝。朝食を食べ、野営を畳む。
シファーさんに、お別れを言い、ウーちゃんにケルピー化してもらい、ラーナを乗せ、歩き出す。門衛のところで、降りてまた乗る、というのは、面倒だからだ。
門に近付くと、カトルさんじゃない門衛が立っていた。
「おはよう」と知らない門衛。
「おはようございます。いつもの人は?」
「二日酔いで寝込んでいるよ。失恋して酒飲んで二日酔い」と笑っている。
「大丈夫なんですか?」
「心配ないよ。いつものことさ。伝言、あるかい?」
少し考えた。それから首を振る。
「いや、いいよ。なんか、キズ口に塩を塗るみたいで」
「ああ、確かに。まぁ、また来てくれよ」
「ああ。また」
ウーちゃんに乗る。
ゆっくりと門を潜り、街道へと進む。
街道に出ると、一台の馬車が王都方面からこちらへと来ている。
『ようすがおかしいのぉ』
『ん? あの馬車?』
『うむ。御者がおらぬ』
『そういえば、馬車もあちこち傷んでいるな』
「ちょっとようすを見てくる。待ってて」
「はい」
ウーちゃんを降りて、馬車へと走る。
近付くと、御者用の手綱が馬から地面に引きずられている。
馬に、ドウドウと声をかけ、停止させる。
馬車の御者席に登り、荷台を見た。誰もいない。荷物は荒された形跡もない。荷物から、この馬車の主は、おそらく商人だろうと思われる。
後方を索敵してみる。誰もいない。街道に魔獣の存在はない。死体を索敵してみたが、こちらも反応がない。
仕方ない。馬の横に行き、異世界言語で馬語を選択。
「主、どうした?」
馬の耳がピクピク動く。
「魔獣、襲った?」
「魔獣、襲った。主、いなくなった」
「わかった。付いてきて。安全なところ、行く」
馬の手綱を引いて、ウーちゃんのところに。
ウーちゃんを怖がる馬。
「大丈夫。ケルピー、仲間」
「本当?」
「本当」
ラーナに説明する。
「どうやら魔獣に襲われたらしい。村に引き返して、預けるよ」
「わかりました」
門衛に馬車を届ける。
事情を説明する。
商業ギルドからスタッフが来て、馬の従魔プレートから、商人の名前が明らかになる。
門衛が、馬や馬車の特徴から、商人を特定していたが、やはり同じ人だった。周辺の村や町を商いの場所にしていた商人だとか。
ギルドカードを提示し、書類に署名した。後日、口座に情報料が振り込まれる、と言う。
旅立っても大丈夫、とのこと。
馬にさよならを言って、門を出た。
街道を外れ、川に出ると、ウーちゃんが大型化して、川の上を走る。
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