022【右が青、左が緑】
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少し短いため、2話連続投稿します。
(2話目)
「合気道と護身術よ」とキヨミ。「この子、小さいころからいろいろあってね。おじいちゃんが習わせたの」
「いろいろ?」
マナミがエイジを見て、悩んだ末に、人差し指を眼球に差し込んだ。
「おい、何している、んだ?」とランドルフが途中から意味がわからなくなる。
マナミは、カラコンを外しただけだ。
でも、その瞳を見て、オレたち男は呆然とする。右目が青、左目が緑だ。
「オッドアイ」とオレ。それだけしか言えない。
「この髪色も地毛だから。外国人であるおばあちゃんの血を受け継いだクオーターなの」
「珍しいな」と動揺していないランドルフ。「獣人族の知り合いにもいたな」
「いるの?」とマナミ。ちょい身を乗り出す。
「ああ。人間族では初めてだがな。それよりもソレなんだ?」
彼が指差しているのは、マナミの指先にあるカラコン。
「あれは」とオレ。「オレたちの世界の目を守るためのもの。特定の人が使っている。彼女の場合は、瞳の色を隠すためだな」
「ふうん。よく使えるよな。怖くないのか?」
「慣れたわ。最初は怖かったけどね」
そう言って、彼女はカラコンをし直した。
それを見て、ランドルフは大きな身体をブルッと震わせた。
「まぁ、いいや。もうひとつ、兄貴が面白い話をしてくれた。奴らのことだ。一文無しっていうのはさっき言ったな。騎士も鎧もなく、訓練用の木剣で威嚇してきたそうだ。思わず笑い出すのを堪えたそうだ。王族もいつもの豪華さがなくて、威厳もなかったとさ。しかも両方のギルドを呼び出しての王命が、五名の人間の捕縛と食材の供出だったそうだ。イライラしてたとさ」
「その捕縛命令の人相書きは?」
「黒目黒髪が四人と金髪碧眼。四人の成人したての男女は同じような服装。ひとりはヒョロッとした男だと」
「フフフ、そうか」
「だが、両ギルドは、依頼料の支払いがなければ、お受けできません、と突っぱねた」
「大丈夫なのか?」
「どちらも商売だからな。王命だからと受けていたら、食いっぱぐれる。しかも前例があるから、まずはそちらの料金を請求したわけだ」
「あらあら」
「だが、奴らは一文無し。出そうにも出せない。しばらくは混乱するだろう」
「その程度で済めばいいがな」
「ん?」
「各種の資料も奪ったからな。支出入がわからなくなるから、大変だ。周辺各国との約束事もあやふやになる。国から貴族に払われるお金もない。大変だ」
「オイオイオイ。他人事か? まぁ、他人事か。しかし、ひでぇな」
「酷いのは、アイツらだろ。強制的にオレたちの人生を変えたんだから」
「それもそうだな」
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