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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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219/648

219【怪我人】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


少し長いため、2話連続投稿します(2話目)

 商業ギルドからの帰り道。

「喰い付いていたねぇ、エミリー」

「まぁ、あれがお金になるだろうことは、ちょっと利に聡い人であれば、わかりますからね」

「そうだね。もっといろいろあるんだろう?」

「自分では気付けませんけどね」

「あぁ、無自覚ってヤツだね」

「それです。まぁ、細々(こまごま)としたものを作っているんで、商売云々じゃないんですよ」

「それでいいんじゃないかい?」

 そんな会話をしていると、シファーさん宅前に到着。三人ほどの男女が待っていた。ひとりは昨日の門衛さん。革鎧のないラフな格好。ラーナ狙いか。ほかの男女は、ふたりとも成人前後。

「どうしたの?」とシファーさんが尋ねる。

「薬草採取してたら」と門衛さん。「ツノウサギに襲われたそうだ。ケガはしてないが、逃げる際に足首を捻ったらしい」

「そこにいな。門衛には?」

 そう言いながら、家に入っていくシファーさん。

「伝えた。小さいのがいたらしいから、子連れだろう」

「そういえば、そういう時期だったねぇ」

 彼女が出てきた。手にいろいろ持って。座り込んでいる少年のところに行き、手当てをはじめる。

「ケイン、よく逃げたね。無理して闘ってたら、大ケガしてたはずだからね」

「うん。小さいのがいたから、母親だと思った。だから離れれば、大丈夫だと思った」

「その判断が難しいのさ」

「ねえ」

「ん?」

「明日になったら、動ける?」

「今日の薬草は?」

「それなりに採れた」

「なら明日はうちに来な。一日分には足りないだろうけど、仕事をしてくれたら、払うからさ」

「わかった」

「言っとくけど、湿布代はそこから引くからね」

「うっ、仕方ねぇ。わかったよ」

「そんな顔、しなさんな。たいした額じゃないよ」

「それでも減るのは嫌なんだ」

「わかってるよ。ほら、お帰り」

「ありがとう、おばば様」

 少年は少女に肩を貸してもらい、帰っていった。

「おやさしいことで」とオレ。

「あれでも稼ぎ頭だからね」

「あっ、そうなんだ。失礼しました」

 シファーさんは、持ってきたものを手に、家の中に。

「シファーさんのおかげだよ」と門衛さん。「彼女が長年、ここにいてくれているおかげで、この村はケガや病気で死ぬことが少ないんだ」

「なるほど。薬剤もあるんだろうが、病気にならないようにも、気を付けているんだろうな」

「それもあるな。彼女はここに畑を持っているが、薬草の多くは、商業ギルドに依頼を出してくれているんだ」

「あれ、そうなんだ。じゃぁ、ここの薬草は珍しいもの?」

「この近くには、生えていないものらしい。オレは詳しくないが。とにかく、ここでの薬草採取の依頼を出してくれるから、小さな子どもなんかでもお金を稼ぐことができるんだ。さっきのケインは外に出ての採取で稼いでいる。外の方が高い薬草があるんだが、反面、危険も多くなる」

「なるほどな」

「まぁ、この周辺で危険な魔獣は少ないが、それでも子どもにはどうしようもない相手だ。逃げるが勝ち、ってわけだな」

 そこにシファーさんが出てきた。

「こら、カトル。いつまでサボっている?」

「ひでぇよ、シファー様。今日は休み」

「おお、そうか。なら、遊んでこい」手で、シッシッと追い払おうとする。

「オレ、子どもじゃないんだけどぉ」

「あたしにしてみれば、子どもだよ」

「そりゃ、そうだろうけどさぁ」

 シファーさんがクスリッと笑む。

「ずいぶんとめかし込んでいるじゃないか。デートかい?」

「ち、違うよ!」と大声上げて、自分で驚き、声を小さくして、「こちらにいるお客様を見に来たんだよ」

「きれいな女の子だもんねぇ」と笑っている。遊んでいるな、こりゃ。

「会わせるのはいいけど」とオレ。「結界の内側には入れられないよ?」

「そ、そこまでは……贅沢は言わないよ」

「わかった。とにかく、本人に確認してくるから」

「頼む」

 とにかく、天幕に入る。

「ただいま」

 中を見て、オレは固まった。

「お帰りなさい、サブさん」

 ラーナが迎えてくれる。苦笑いだ。その原因であるウーちゃんは……地面にシーツを広げ、大の字になって、眠っていた。女性の慎みなど、欠片もない。

「安心しきって寝ているネコだな、こりゃ」

 ツンツン、つついてみるが、反応なし。

 毛布を出して、掛けてやる。

 ううむ、ここに門衛さんを通す? 知り合いならば、笑ってくれるかもしれんが、ウーちゃんを知らない人だから、説明しづらいな。

 覆いから出る。

「申し訳ない。本人が、知らない人に会いたくない、って」しかないでしょ。

 あっ、肩が落ちた。

「そうですか。わかりました」

 トボトボと帰っていく。

 まぁ、玉砕覚悟だっただろうし、心配ないだろう。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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