215【メタカ村のシファー】
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少し長いため、2話連続投稿します(2話目)
翌日。オレたちは、いったん川に出た。
「ウーちゃん、今日から巨大化して行こう」
『うむ』
オレたちを乗せたまま、ウーちゃんの身体が巨大化していく。
「なんですか?」
「ウーちゃんは、ケルピーなんだけど、本当は大きいんだ。今は、もとの姿に戻るところ」
ウーちゃんは、巨大化を終えると、川の上を駆け出した。
街道は、川に沿っているので、しばらくはこのままだ。
景色は、ビュンビュンと後方へと流れていく。これでも王都への旅よりは、ゆっくりだ。少なくとも、ウーちゃんいわく。
途中、昼食とオヤツ休憩を取る。
夕陽が落ちてきたので、野営する。
そんな生活を続けて、五日目。
もうすぐメタカ村が見えてくる。
『ウーちゃん、もうすぐメタカ村だから、小さくなって、街道を走ろう』
『わかったのじゃ』
小さくなり、街道を走る。やがて、メタカ村の門が見えてきた。
ウーちゃんに速度を落としてもらう。
門衛のところにゆっくりと近付く。
だが、一度、前に出た門衛が下がっていく。確か、ウーちゃんの姿は見ているはず。いや、違った? それで慌てている?
「あの」とラーナ。「たぶん、私の結界です」
「あっ、忘れてた。ウーちゃん、止まって」
ウーちゃんが立ち止まる。
ウーちゃんから降りるオレ。
「すみません」と門衛に声をかける。「事情があり、結界を張っています」
「中に入るんだよな。身分証の提示をお願いしたいんだが」
「はい」
ラーナからカードを受け取ろうと、彼女に手を出す。
「なんでしょうか?」
「身分証の提示を求められているんだ」
「身分証、ですか。あの、持っていません」
あっ、それは考えていなかったわ。
門衛に向き直る。
「すみません。身分証がない場合は、入れないですか?」
「いや、入村料を払ってくれれば、滞在は許可できる」
そこでオレは自分のギルドカードを提示し、ラーナ分の入村料を支払った。こりゃ、カードを作るべき……あれ? 登録するのにカウンターに近付けない? ダメじゃん。うるうる。
とにかく、入村した。
ふたたび、ウーちゃんに跨り、シファーさんのところに行く。
あれ? そういえば、シファーさんに何か頼まれていなかった?
シファーさんは、家の中にいた。ウーちゃんとラーナには、外で待っててもらう。
「商業ギルドから、無事に治癒できた、と聞いたよ」
「向こうを出るころには、屋敷内を歩けるまでに回復していました」
「そうかい。よかった」
「それで追加報酬なんですが」
「なんか珍しいものでも薬の素材があれば、とは言っていたんだがねぇ」
「最初はワイバーンの尾を出してきたんですけどね」
「おお、あれの毒液は、確かになかなか手に入らないからねぇ」
「でもその毒液がなくなっているのがわかって、それで別のものを用意してもらったんです」
「ほぉ、それで?」
「サンドリザードの骨格が出てきました」
「おやおや、うれしいねぇ。で、どの部分だい?」
「全部です」
「全部? 本当に?」
「ええ。結構大きいですよ。どこに出しましょうか?」
家の前に出すことに。ドンッと。
「本物、だねぇ。こりゃ、使い切れないよ」と呆れて笑っている。
「それと王都商業ギルドからも荷物を預かっています。薬剤の素材だとか」
こちらは、家の中のテーブルに出した。
で、署名をもらう。
「そうそう、先日、来たときに頼まれたのは、なんでしたっけ?」
「あはは、忘れたかい。ガラスの容器だよ。追加で三十ほど、欲しいんだがねぇ」
「気に入りましたか」
「とてもね。で、どうだい?」
アイテムボックスにある材料を確認する。
「材料はありますねぇ。ちょっと待ってください」
外に出て、ウーちゃんのところに。
「ラーナ、到着は早めの方がいいのかな?」
「特には言われていません」
「ここで二日ほど滞在しても大丈夫かな?」
「私は構いませんが」
「ウーちゃんは? ここで滞在しても大丈夫かな?」
『人化しても大丈夫かのぉ?』
「いいよ。でもラーナのそばにいて欲しいかな」
『なら構わぬ。しばらくぶりに走ったからのぉ。ちょうど良い休憩になろう』
「了解」
シファーさんのところに戻って、二日ほど滞在することを説明。
作業用の小屋とか野営セットを展開。外から中が見えないようにしておく。
索敵に暗殺者も加えてあるので、まずは大丈夫。
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