214【ウーちゃんの新たな能力とラーナの疑問】
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少し長いため、2話連続投稿します(1話目)
もうすぐ街道というところで、ほどよい空間があった。そこに野営を張る。
野営とはいっても、簡易トイレを出し、帆布を張り、折りたたみのベッドとイスとテーブルを出して、魔導コンロなんかの調理器具をセット。魔導ランタンも用意。
焚き火台に細い薪をうまく配置して、油脂の多い果実の皮を乾燥させたものに、魔導ライターで、火を点ける。その火を大きくしていき、薪に火を移す。
焚き火台は、地面がぬれていたり湿っていたりの場合に使える。火をコントロールしやすいということもある。
調理をはじめようとして、気が付いた。
「ラーナは、食べられないものはあるの?」
「出されたものは食べていました。でもどうでしょう?」
「宗教上は?」
「特には言われていません」
「いや、中には、肉がダメ、という宗教もあるからさ」
「なるほど」
「食材はわかる?」といろいろと出してみる。薬草も含めて。
「ほとんど知らないものです。本当に食べられるのですか?」
「ここに出したのは、ね。肉は、何を知っている?」
「ツノウサギ、オーク、ボアーとか。小さいヘビも食べました」
「なら大丈夫か」
でも念のために鑑定する。アレルギーなどに関して。うん、大丈夫。
「お腹が空いたのだぁ」と簡易ベッドに突っ伏すウーちゃん。すでに人化している。もちろん、服も着ているよ。
「私もです」とラーナがウーちゃんに答える。
「えっ?」今は何語モード? アズマノ国語モードだよ?
「ウーちゃん? アズマノ国の言葉も喋れるの?」
「世界言語スキルじゃ。まぁ、初めて聞いたが、問題あるまい。オヌシらの会話を聞いていて、言葉を紡ぐことができるようになったのじゃ。賢いであろう?」
「うん、賢い。そんなスキルを持っているとは。ラキエルは?」
「アヤツはまだまだじゃのぉ」
「ラキエルとは?」とラーナ。
「もう一頭のケルピー。今は仲間たちと旅路の途中だよ」
「仲間?」
「オレを含めて七人とウーちゃん、ラキエル、それにスノータイガーのユキオウとセツカで、ひとつのグループを組んでいるんだ。で、オレとウーちゃんは、緊急依頼を受けて、薬剤を届けに、王都に来ていたんだ。その帰りに、君を送り届ける依頼を受けたんだよ」
「では、私のために別行動を」
「いや、子どものためだね。薬剤は子どもの命を救うためのものだったから。それに君を送り届ける場所は、オレたちが向かう方向と一緒だから、引き受けたんだ。気にする必要はないよ」
「どこですか? 向かう場所は」
「エルゲン国。物見遊山の旅だから、みんなはゆっくり行動しているはず」
「では、本当に同じ方向なのですね?」
「うん」
そのあいだにもオレは調理を進める。
「慣れているのですね」
「もともとひとり暮らしだったし、仕事にあぶれていたこともあって、自炊していたんだ。まぁ、単純なものばかりだけどね。仲間のひとりの作る料理が美味しくて、それには負けるよ」
「サブが仕事にあぶれるとは、信じられぬな」とウーちゃん。「なんでもできるヤツじゃと思っておった」
「できないことの方が多いさ。それでもこの歳まで生きてきたから、その経験がいろいろと助けになっているかな」
できた料理を皿に盛り付ける。スープもできた。
「はい。肉野菜炒めとスープ。味は少し薄くしているから。薄いと思ったら、調味料を使って」
いただきます、して食べる。
ラーナは、オレがナマステして、食べはじめたのを見て、首を傾げる。それに箸を使っているのも。スープはスプーンだけど。お椀じゃないからね。
「ん? 何かな?」
「あなたは、アズマノ国には行ったことはない、と言いました。でもどうして食前の挨拶を知っているのですか? それにお箸もうまく使っています。この国の人、難しいと言って、なかなか使えません」
「あぁ、これか。信じてもらえないかもしれないけど、本当に行ったことはないんだ。ただオレの国ではふつうのことなんだ。帰るに帰れないけどね」
「なんという国ですか?」
「ニホンとかニッポンとか言っている」
「聞いたことがあります。アズマノ国の歴史に出てきました」
やっぱりか。
「それ、うちの国からの移民が、アズマノ国を建国したとかでは?」
「建国は別の人々です。でも国の名前は、その人たちが、よく口にしていたとされる言葉から名付けられたそうです。その人たちは我が国にさまざまな文化を与えました。衣食住、宗教、武器にまで」
「武器? 剣のこと?」
「ニホン刀と呼ばれる湾曲した片刃の剣です。今は儀式用がほとんどですけど。造れる人が減ってしまったそうです」
日本刀か。これもテンプレ。そのうちに、サムライが現れるのかな? アニメの五右衛門風かな? それともチョンマゲザムライかな? まぁ、楽しみにしておこう。
とにかく、話しながら食べる。
「あらっ? これは醤油? こちらは味噌?」
「もしかして、アズマノ国には、両方あるの?」
「はい」
「やった! ふつうに買えるのかな?」
「買えると思います。えっ、もしかして、これらは」
「手作り。たぶん、そっちだと豆からできているんだよね?」
「確か、そうだったかと」
「よし。あとで買いに行こう。あれ? ちょっと待って。もしかして、ゴハンもある?」
「はい。それが主食ですけど?」
「やった! えっと」と書字板を出して、メモる。「ちなみに納豆、お蕎麦、ラーメンなんて、あるかな?」
「オソバとかラーメン?は知りませんけど、蕎麦がきならあります」
「ふむ、蕎麦粉はありそうだな」メモメモ。
その後、彼女の知る料理や調味料を教えてもらった。地球にはない料理が多かった。調味料は、和辛子とか山椒もあるとか。
おそらくだが、タネを持っていたのではなく、こちらのものをそう呼んでいるのだろう。そのもの自体があるとは、思えないから。
でも、コショウがあったことを考えると、いくつかは存在している可能性を否定できないのは、確かだ。
その夜は、ウーちゃんの気配のおかげで、魔獣に起こされることはなかった。ラーナの結界のおかげもある、かな? まぁ、オレの索敵も警告を発しなかったしね。
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