209【癒やしの光】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
少し長いため、3話連続投稿します(3話目)
シャーラちゃんに、最後の薬剤を投与する。すると、彼女の全身が光り出した。
「おお、癒やしの光」と執事さん。
光が収まっていく。
「シャーラちゃん、身体はどんな感じ?」
「うんとねぇ……うずうずしてる。動き出したくて」クスクス笑うシャーラちゃん。
「あはは。ならば、少し動いてみよう。でも走り出したら、ダメだよ」
「うん」
ゆっくりと彼女をベッドから立ち上がらせる。ヒザがガクガクとしている。ずっとベッドの上にいたから、筋肉が萎縮しているんだろうな。
「無理はいけないよ。これからだって、歩きまわるんだからさ」
「うん」とは言いながらも、立っていることを頑張る彼女。額に汗が浮かび上がる。
「はい、おしまい。ベッドに戻って」
「うん」
ベッドの縁に腰掛ける彼女。
鑑定。
魔力の流れは、正常になった。
筋肉トレーニングが必要、と。
うん、完治しているな。
年齢が十歳なのは、いまだに驚くけど。
「ベッドの上でも身体を動かして。寝たままでも足を動かそう」
「はぁい」
「でも、無理はダメだよ。治ったばかりだから、少しずつね」
「わかりましたぁ」
「元気でよろしい」と頭を撫でる。うれしそうな笑顔を見せてくれる。
彼女は、さっそくベッドに寝っ転がり、手足をバタバタさせる。
ホコリが立つけど、仕方ないね。
それからしばらくすると、彼女は疲れて眠ってしまった。
「彼女の着替えを。それとあとでいいので、水分を与えてください」と看護しているメイドさんに指示する。
メイドさんは一礼する。
部屋を出る。
「それで?」と執事さん。
「完治はしました。しかし、ずっと寝たきりでしたから、筋肉が衰えています。今後、筋肉を動かしていけば、ふつうの生活ができるくらいにはなるはずです。でも無理は禁物です」
「かしこまりました」と安堵している。
夕方。陛下が帰宅。
駆け込んでくると、開口一番に聞いてきた。
「どうなった!」
「完治しました。今後は、身体の筋肉を動かしていくことになります。あとは、ふつうに生活ができるようになります」
「そうか。ありがとう」
そう言うが早いか、彼は走り出す。
「旦那様! お嬢様は眠っておられます!」と執事さんが言ったが、聞こえていない。
「まぁ、ああなりますかね」
「ありがとうございます、サブ様」
「完治してよかったです」
ふたりして、シャーラちゃんの部屋に行く。
陛下は、眠くてぼんやりとしているシャーラちゃんを優しく抱き、小声でつぶやいている。
看護のメイドさんも微笑んで見ている。
しばらくして、シャーラちゃんを寝かしつけると、陛下は子ども部屋をあとにした。
「ありがとう、サブ」
「その言葉はシファー様に」
「うむ。だが、そなたにもウーちゃんにも感謝する。そなたらがおらねば、シャーラは生きてはおらなかったであろう」
「間に合って、よかったです」
食堂で、ようやくの夕食。
「娘が完治したわけだが、これからどうする?」
「お許しがいただければ、もう少しようすを見ようかと。彼女に無理をさせないように」
「なるほど。いつまでもいてくれ」
「ありがとうございます。ですが、二日ほどで出るつもりでいます。それだけあれば、彼女の状態も確認できますし、多少は歩けるようになっていると思われますので」
「そうか」
「それから、おそらく食欲も出てくるでしょうから、たっぷり食べるでしょう。身体が本来の成長をしようとするかと思います。もしかすると、成長痛で眠れなくなる可能性もあります。注意してあげてください」
「成長痛か。あれは経験がある。身体中がミシミシいっていたな」とほくそ笑む。
「ふつうは成長期になるものですが、シャーラちゃんは十歳なのに病気であの体格です。本来の十歳になろうとするかも」
「なるほど、それは考えられるか。うむ、注意するとしよう」
食後、リビングに移動して、お茶休憩。
「しかし」とホッと安堵している陛下。「本当にあの子の病気が治るとはな」
「信じていなかったんですか?」
「シファー殿のことは実力派だと認識している。だが、例え、そうだとしても薬剤がどこまで効くかは、彼女からも、わからぬ、と言われていた」
「まぁ、確実に良くはなるでしょうけど、確実に治る、とは言えなかったんでしょうね」
「うむ。治らずとも症状が良くなるだけでも、とは願っておった」
「そうですね。でも完治しました。シャーラちゃんの将来が楽しみですね」
「うむ。楽しみも増えるが、苦しみも増えるな」と苦笑い。
「なんです?」
「あの子が元気になれば、社交の場に出さざるを得ぬ。そうすれば、いろんなことに関わらぬわけにいかなくなる。そのうちに、結婚問題だ。変なヤツに嫁がせたくはない」とため息。
「早い早い。そんなの、当分、先の話でしょう? もしかして、すぐ?」
「すぐではないが、まぁ、遠くもない」
「大変ですね」
ふたりで苦笑い。
「それはさておき」と話題を変えてくれた。「ここを出たあとは?」
「商業ギルドと冒険者ギルドから依頼があるようでして」
「そうか……途中でシファー殿のところに寄ってもらえるならば、渡して欲しいものがある」
「わかりました。どちらにしても、一度、こちらに戻ることにします」
「頼む」
読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)




