207【国内情勢を改善するには】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
少し長いため、3話話連続投稿します(1話目)
外貨獲得には、物が必要だな。しかもお金をかけない物が。
国民生活を向上させるには、それぞれに金が巡れば良い。しかし、その金がない。となれば、金に代わるものがあればいい。
「簡単なところからいきましょう。食料を民に与えます」
「しかし、それには金が足らぬ」
「お金は必要最低限で行ないます。ただし、与えるだけでなく、増やさせることも大事です」
「教えてくれぬか」
「まずは、全国民、特に底辺の民たちに、自分たちのまわりに食料があることを教えます」
「すでにある、と」
「王都まわりでもあるはずです。薬草採取などができるのであれば」
「そんなものがあれば、すでに――」
「誰も、それが食べられるとは、思っていないものなんですよ」
オレはマジックバッグから、一般的に知られていない、と思われるものを出す。
いくつかを見て、引く陛下。
「た、食べられる、のか」
「食べられますよ。一部はすでに、陛下のお口に」
「はぁっ!?」と驚きのあまりに立ち上がる陛下。
そんな彼を見て、思わず笑ってしまった。
「失礼。あまりの驚き方でしたから、たまらずに笑ってしまいました」
「本当に大丈夫なのか」
「煉獄の実もありますが、あれは食べれませんね」
「れ、煉獄の実、だと?」
「実物を見たことは?」
「いや」
マジックバッグから、ヒョイッと出した。
陛下がヒッとソファーの影に隠れる。
「ご安心を。ちゃんと瓶に入れてありますから」
それを確認して、ソファーの影から出てくる陛下。じっと瓶を見ている。
「初めて見る。これがそうか」
「すぐに隠れたのは、誰かから聞かされて?」
「う、うむ。先輩冒険者にな。食べられるかと思って、手にしたときに、魔獣に襲われて、思わず、投げつけたそうだ。そのときの魔獣のもがき苦しみ方が、とても悲惨だったそうだ」
「よかったですね、うまくもげて。ヘタをすれば、その場で冒険者が魔獣の代わりになっていたところです」
「うむ。それを想像して、身がすくんだそうだ」
「わかります。まぁ、これはともかく、食べられるものは多いです。それを民に教えれば、お金は教えるときに発生するだけです」
「ふむ」
「もちろん、料理のレシピなんかも配布すべきでしょうね」
「なるほど。それならば、たいした出費ではないな」
「これらが食べられる、となれば、育てられるかどうか、がわかったら?」
「育てようとするだろうな。育てて食べて、余ったら売る、か」
「あるいは、もとから売るつもりかもしれませんね。ともかく、それで下層の民の食料事情が改善されます。そうなれば、体力も付く。労働力が増えます。労働に見合う賃金を払えば、働いてくれる。労働者は賃金を得て、消費に使う。下位冒険者たちもここに入るでしょうね」
「なるほど。仕事を与え、対価を与える、か」
「ただし」
その言葉にオレを見る陛下。
オレは続ける。
「取り過ぎれば、どうなるか、ご存知ですよね?」
「ね、念のために、聞かせて欲しい。どうなるのかを」
「それを食べていた生物が飢える、ということです。餓えたら、ほかのものを食べる。いずれは、人間を襲う」
「そ、それでは意味がないではないか」
「だから、採り過ぎないようにする。まぁ、まずは加工しなければ、食べられないものから、としますか」
テーブルの上のひとつを指差す。
「これには」と首を振る陛下。「毒がある。死にはしないが、激しい腹痛を伴う」
「ええ。でもその毒を取り除けば、人間でも食べられる食べ物になります。これを食べる魔獣は、ポイズンリザードだけです。ポイズンリザードの毒は、これから得ているんですよ」
「な、なんと!」
ポイズンリザードは、その名のとおり、毒蜥蜴である。しかし、ゴブリンをひと飲みできるほどに巨体で、人の村を襲うこともある。ふつうの人は、逃げるしかない。
「しかもポイズンリザードは、毒を取り込むだけで、大半を排泄します」
「排泄の多さは、それか」
「だから、栄養の大半が土地へと還元されるので、それを得て、畑の肥料にすることも可能です」
「ふむ。ポイズンリザードはどうなる?」
「毒素のもとを得られないので、探しまわるか、少ない毒を効果的に使うようになる、かな? 正直なところ、わかりません」
「まぁ、そうであろうな」
「ですが、エサを求めて、人間を襲う、というのはこれまでと変わらないでしょう。頻度もそれほどの変化にはならないはずです」
「うむ。畑での栽培をすると、ヤツが襲ってきそうではあるが」
「可能性はあります。ですが、来るとわかっているのであれば、対応策は取れるでしょう。罠を張るなりなんなりすれば」
「そうだな」
「また、この毒素は、加工の過程で、無毒化されますので、安心です」
「それは良いな。毒が別の場所に移るなど、考えたくないからな」
それ以外にも、あれこれと話すオレと陛下。
※ポイズンリザード
独自魔獣。と思ったが調べてみたら
スクエア・エニックス社のゲーム
『ドラゴンクエスト』シリーズに登場。
本作では、毒をどこから得ているかを
書いているだけ。
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