206【協力要請】
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3話連続投稿します(3話目)
「力と言われましても」
陛下の意図が見えない。
彼は、ソファーの背もたれに身を預ける。
「現在の王国は、際どいところでバランスを保っている。隣国からの侵攻は、まだない。報告では、バグラール国の兵士たちから武器防具が消えた、という。おそらく、勇者一行の力によるものであろう。それがなくとも我が国は風前の灯火。かろうじて火が灯っているだけ。確かに武器防具がなくなったのは王城だけ。バグラール国よりは勝っている状況だ。まぁ、それは置いておくとして。国内経済は緩やかではあっても、下降傾向だ。商業ギルドと冒険者ギルドのおかげだろう。その経済を上昇に転じる力が欲しい」
「なるほど。それでお考えとしては、どのように?」
「経済を活性化する方法、それがわかれば苦労はせぬ。予は貴族世界と冒険者世界しか知らぬ。まわりの者どもも、またしかり。しかし、そなたのもたらしたものは、どれもこの国では、類例のないものばかり。魔導具しかり、調味料しかり、食材も、だ。ここに経済を活性化させる何かがあるように思えた。どうであろう」とこちらを見る陛下。身体は起こさず。
「まぁ、類例がないことは、自覚はありますからね。つまり、それらを流通させろ、と?」
「それに限らぬ。経済が潤えば、税によって、王国の維持管理が行なえる」
「貴族にも金がまわる」と嫌味。
「貴族を優遇するつもりはない。すでに信頼できる各地の冒険者に依頼して、各領地の状況を調べさせておる。統治がずさんな貴族は爵位を下げる、あるいは爵位を取り上げる」
「ふむ。貴族に首輪を付ける、と」
彼が笑う。
「面白い表現だな。首輪を付け、その範囲内で大人しくしておれば、エサを与える。逸脱すれば、罰を与える。そう、そのとおりだ」
「首輪は勘弁して欲しいのじゃ」とウーちゃん。
「もうすでにしているけど?」とウーちゃんの首を指す。そこにはチョーカー状のプレート。従魔の印だ。
「これは首輪ではないぞ。飾りじゃ。ちと色気がないがのぉ」
「確かに」
「ウーちゃんは」と陛下。「素晴らしいドレスに宝飾品で、いくら飾っても、負けますまい。進呈できぬのが残念であるのだが」
「そのうちに、な。だが、大層な飾り付けは、好まぬゆえ、気にせずとも良いぞ」
「ご配慮、ありがとうございます」と頭を垂れる陛下。
「良い良い。ほれ、話を続けよ。興味はないがのぉ」と笑う。
オレと陛下は、お互いを見て、それから笑った。
「ウーちゃんには、敵わぬな」
「まぁ、ケルピーの女王様ですからね」
「別に女王ではないぞ。そう、主張したこともない」
「でもラキエルは、女王様みたいに崇めているけど?」
「それはあれの勝手じゃ。それをとやかく言うたからと、やめるヤツでもあるまい」
「確かに」
「ラキエルとは?」
「私の従魔のケルピーです。ずっと馬化していて、人間を騙していたんです。で、私が馬車を引かせるために買い取りました。ケルピーだとわかったのは、だいぶしてからです。魔法を使ったのでわかった、という次第です」
「そうであったか。従魔といえば、スノータイガーもいたな」
「本当は討伐するつもりだったのですが、メスの腹に子どもがいることが鑑定でわかって」もう鑑定のことはバレている。「腹も減っているのもわかり、以前に討伐したゴブリンを食べさせました。それで従魔に」
「ふつうならば、それでも討伐するところだが。それになぜ討伐したゴブリンを持ち歩いていたのだ」
「ゴブリンはケルピーが食べるので。雑食性らしいですから、馬のように草だけでもいいのですがね。で、討伐を回避したのは、雪の中での闘いになるため、こちらが不利になると思われたためです。後続の冒険者たちが到着するのを待つ、という選択肢もありましたが、すでに村近くにいたので、襲撃が開始されたら、手の打ちようがなくなります。一か八か、エサを与える、という選択をしました」
「なるほど。それで従魔契約を交わしたか」
「はい」
「もし、ダメだった場合は」
「討伐準備は整っていましたから、闘いになったことでしょうね。結果はどうなっていたかは、わかりません」
「なるほどな。あぁ、どこまで話したか」
「えっと……貴族に首輪を付ける、と」
「そうであったな」と背もたれから離れ、前傾姿勢にする。「とにかく、貴族対策は進めておる。しかし、経済活動については、まだ商業ギルド任せだ」
「商業ギルドからは、なんと?」
「国内だけであれば、国民生活を押し上げれば、可能だろう、と」
「下から持ち上げる形ですね。で、国外は?」
「外貨獲得が必要だと」
「それがわかっていても、対応策が出てこない?」
「うむ。案は出るが、出せる金がない。金ありきでやってきたからな。金がない、ということが足枷になっておるのだ」
「でしょうね。ふむ」と考え込む。
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