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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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205/648

205【味の感想と説明】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


3話連続投稿します(2話目)

 食後のお茶を飲んで、感想を聞く。

 基本、美味しい、とのこと。あとは、あれがどうこう、これがどうこうと感想が続く。

 醤油と味噌を単体で味見してもらうと、しょっぱい色付き水としょっぱい泥という名前をいただいた。これは仕方ない。熱を加えないと、本当にそのままだからな。

 試しに、小麦粉を水で練って、フライパンで焼き、醤油を垂らしたものと味噌を塗ったものを用意して、試食してもらうと、全員が信者になった。布教成功。

 ただ、欲しがられても、大量には持っていないのよね、これ。大半はマナミに渡してあるし、オレたちの冬籠り屋敷にもあるが、セバスさんたちの分だけで、それほど多くはない。そして、醸造中のものも屋敷にしかない。旅の最中に作ればいいと思うかもしれないが、撹拌時に雑菌が入りやすいから、作れないのだ。


 夕方。陛下が帰宅。夕食を食べていないということで、事前に打ち合わせたとおりに、夕食が出される。

 まずはスープ。それからサラダ。量はいつもどおり。

「ん?」と怪訝な表情をして、スープとサラダを見る陛下。「今日は、味付けが違うな」

 誰も何も言わない。顔にも出さない。もちろん、オレも。

 次に出されたのは、薄切り肉の味噌生姜焼き。生姜は、そっくりとはいかないまでも、ほどよいものが森で手に入った。

 陛下は、この料理と執事を交互に見て、言葉が出ない。


 オレは先に手を付ける。うん、我ながら美味い。まぁ、調理はメイドさんだけど。

 陛下も手を付ける。少量、口に入れて、味を見る。よく噛んでいるね。良きかな良きかな。ゴクンッと飲み込む。それからオレを見た。ナプキンで口を拭く。

「なるほど。サブが手配したか」

「なんのことでしょう?」

「屋敷にない調味料が使われている。ほかでも味わったことのないものだ。それに肉の量が多い。客人に、というには多い。どういうことか、知りたいものだ」

「肉に関して言われるとは、思いませんでした。食材と調味料は、ほぼ私が提供させていただきました。みなさんに使うようにとも言わせていただきました。これは自分のためです。昨日の量では足りませんでしたし。それに味付けも少々」

「それは申し訳ない」

「いえいえ、私のわがままですから。それに泊めていただいているわけですし。そうしたお礼も兼ねています」

「なるほど。では、遠慮なくいただこう」

 陛下は、カトラリーを手に食べはじめた。


 お茶休憩。

「あの味付けは、なんだったのだ」

「私が作った調味料です。醤油と味噌というものです。ある蔦植物のムカゴというものを原材料にして、作っています。まだ試作品程度の量しかなく、売るまではいきませんで」

「ということは、これから増やしていくと」

「そのつもりです。でも、ムカゴ自体が大量に必要となり、森林地帯での採取も大量には採れません」

「では、今後はどうするつもりか」

「実は、ムカゴの栽培をシファー様がやっていらしてまして。先日、その栽培方法を教えてもらったところです」

「ほぅ。なぜシファー殿が」

「なんでも薬を作る際に余分なものを沈殿させるためだとか。ですから、量はそれほどは必要ではなかったようです」

「なるほど。それで栽培方法が手に入ったわけだが」

「そこから進んでいません。旅の途中で採取するつもりでしたから。それにまだ時期ではないのですよ」

「そうであったか」

「手に入れても、そこからまた時間がかかります」

「どういうことか」

「言葉は悪いですが、腐らせる必要があるのです。発酵と呼んでいますが」

「腐らせる?」嫌そうな表情。

「ワインの作り方は、ご存知ですか?」

「いや」と首を振る。

「簡単に言いますと、特定の木の実を潰して、樽に詰めて、寝かせます。樽の中で腐っていき、ワインが出来上がります」

「ワインも腐っているのか」

「腐ったあとの汁を絞ったものが、ワインですね」

「だが、美味い。それと同じだと」

「まったく同じというわけではありませんがね」

「ほかにもあるのか、腐ったものが」

「お酒はほとんどそうですね。それからチーズなんかもそうです」

「チーズもか」

「おそらく、もっといろいろとあると思いますよ。腐らせているとは言わないだけで」

 ふむ、と考え込む陛下。

 オレは、お茶を(すす)る。

「腐っても」とウーちゃん。「食べられるものは多いぞ」

 その言葉に陛下とともにウーちゃんを見た。

「名前は知らぬ。動物も植物もある。中には、どちらかもわからぬものもある。美味いかどうかは、ものによるがな」

 お茶を飲み干し、メイドさんに次を要求するウーちゃん。

 メイドさんは、微笑んでお茶を淹れる。

 このお茶は、マナミが薬草から作ったものを提供した。

 ここのお茶よりも美味しいから。陛下も気に入っている。

「今度、見つけたら教えてね」

「うむ。まぁ、ニオイでわかるじゃろう」

「腐敗臭?」

「いやいや、そんな鼻が曲がるようなニオイではないぞ。まぁ、すべてが、とはいかぬがな」

「へぇ」

 少し考えていた陛下が顔を上げる。

「サブよ」

「はい?」

「そなたらが、勇者一行であろうがなかろうが」とオレを見る。真剣にオレの目を見る。「どちらでも構わぬ。力を貸してはもらえまいか」


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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