204【形見と食事】
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3話連続投稿します(1話目)
翌日。シャーラちゃんに薬を飲ませる。
シャーラちゃんは、ここのお嬢様ね。国王の娘だから、王女様だね。
シャーラちゃんの顔色は良く、人見知りではあったが、可愛い笑みを見せてくれた。
もちろん、ちゃんと挨拶したよ。知らない人から、薬を飲め、なんて誰だって受け入れられないからね。
陛下もシャーラちゃんのようすを見て、笑顔だ。
陛下と朝食を摂ると、陛下は王城へと出ていった。
少しすると、昨日、屋敷に案内してくれた商業ギルドの女性が、訪ねてきた。
「そうですか。よかったです」と笑む。
「シファーさんに、無事に到着して投薬を開始したと」
「昨日のうちにご連絡いたしました。ヘイサト町の商業ギルドにも」
「そう。ありがとう。それなら王都冒険者ギルドのギルマス経由で《竜の逆鱗》にも伝えて欲しい」
「ギルマス経由で?」
「うん。うちのメンバーのひとりが、常にギルマスと連絡を取っているんだ」
「なるほど」と書字板にメモする。「なんとお伝えしましょう?」
「昨日、無事到着。投与開始。十日ほど滞在予定。ボンバルディア・ビートルと接近遭遇したよ、と」
「ボンバルディア・ビートルですか!?」と彼女が驚く。
「うん。旅の途中にだけどね。危険はなかったよ。それからこうも伝えて。ウー、寝相悪し、と」
「それは、暗号か何かですか?」
「まぁ、安心してね、という意味を含むかな」
「はぁ」
彼女には、ウーちゃんのことは話してないからね。
とにかく、書字板にメモする彼女。
それを復唱してもらい、お願いする。
それで彼女は出ていった。
少し落ち着いてから、執事とともに、屋敷内をまわる。
陛下の言うとおり、金目のものはだいぶなく、壁にはその跡がくっきりと残っていた。
それでも一部の肖像画や一部の宝飾品が残されている。姿絵がある。美しい女性だ。聞かなくてもわかる。奥方だと。おそらく、シャーラちゃんへの形見として、残したのだろう。
厨房も見せてもらった。広々とした厨房ではあったが、一部を除いて、きれいに片付けられていた。その一部も汚れてはいない。そこで現在の調理を行なっているのだろうと伺える。
「急に私が来たから、食材の用意もなかったでしょう」
執事は苦笑いするしかない。
「お部屋も借りていることですし、失礼ながら、何より少々足りません。ここは私が料理を振る舞いましょう」
執事はブンブンと首を振る。
だが、オレはそれを無視して、どんどんどんと道具と食材を出す。
そして、袖を捲り、手をクリア。
ここにいる人数を尋ね、おおよその分量を計算。
キッチンメイド兼コックさんが、手伝いを申し出てくれたので、食材の下処理を頼む。ただ、出した食材は彼女には初めて見るものばかり。こうして欲しい、と手本を見せて、やってもらう。
魔導コンロに満杯状態の魔導飲用水ポットを載せて、火を点ける。
まな板の上で、葉野菜を切り分け、ボールに入れて、醤油と植物油のドレッシングを絡ませる。あとは食前に再度絡ませ、取り分ける。
鍋に細かくした干し肉と干しキノコを入れておく。
オーク肉を薄く切り分け、味噌を薄く塗っていく。
お湯が沸いたので、鍋をコンロにかけ、お湯を注ぎ入れる。
下処理の終わった食材を小さくカットして、鍋に投入。少しすると、灰汁が浮いてくるので、丁寧にすくい取る。
薄切り肉から水分がうっすら出てきているので、不織布のキッチンペーパーで味噌ごと拭き取る。
鍋をコンロから降ろし、フライパンを載せる。熱して、植物油を垂らす。うっすらと油の煙が出てきたところで、薄切り肉を焼いていく。
肉を焼き終えたら、フライパンから鍋に載せ替えて、残った灰汁を掬っておく。
汚れたフライパンを洗い、キッチンペーパーで拭っておく。あとは残った熱で乾く。
鍋は、食材からの灰汁がほぼ出なくなったので、具材に串を刺して、芯が残っていないことを確認すると、そこに味噌を溶きながら入れる。味を整えて、メイドさんに味の確認をしてもらう。
メイドさんは、初めての味らしいが、うなずいてくれた。
最終的に全員が呼ばれて、昼食。まぁ、交代交代だけど。
それぞれの皿を用意してもらって盛り付け。
サラダをもう一度、ドレッシングに絡ませて、それぞれの皿へと取り分ける。
「簡単なもので申し訳ない。ちょっと新しい調味料を使わせていただきましたので、口に合わない場合は、残していただいて結構です。どうぞ」
みなさん、恐る恐ると手を付けはじめた。だが、すでに香ばしいニオイは彼女たちの胃を掴んでいた。ひと口頬張ると、あとは吸い込まれるかのように料理がなくなっていく。
オレも食べるが、まぁまぁの出来。さすがにマナミには敵わない。
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