200【女王様】
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少し長いため、3話連続投稿します(2話目)
こうなったら、仕方ない。
「ウーちゃん、ケルピー化して。この塀を越えよう」
『大丈夫か?』
「この騒ぎ、オレたちが原因だからね。今さらでしょ」
『なるほど』
「塀を越えたら、門衛のところへ行くよ」
『わかった』
ウーちゃんが、ケルピー化していく。
それを目にした人々が驚き叫ぶ。
「オレの従魔です! 安心してください! 行こう!」
ウーちゃんが軽く走ってから、宙を走り出す。
人々は、そのようすをポカンッと見つめる。
塀は高く、なかなか上に達しない。
途中で、何かが、オレの顔の前を通り過ぎた。細い何かだ。
飛んできた方を見ると、塀の上に弓兵がいて、こちらに矢を放ってきていた。
オレは、アイテムボックスから、結界の魔導具を出して起動した。
『ウーちゃん、結界を張ったから。まぁ、ウーちゃんなら弾くだろうけど』
『うむ、当然じゃな』と笑う。
ようやく塀の上に出た。弓兵は凝りずに矢を放ってくる。
「撃つな! 巨大な魔獣についての情報を持ってきた!」
放たれる矢が止まった。
「もう一度、言ってくれ!」と弓兵のひとり。
「巨大な魔獣についての情報を持ってきた!」
「そいつはなんだ!?」
「ケルピーだ! オレの従魔だ!」
「ならプレートを付けているな!?」
「もちろんだ!」
「では、ここに降りろ! 確認する!」
ウーちゃんに降りるように言う。
その弓兵のところに降りると、矢を番えた弓を下向きにして、恐る恐る近付いてきた。
そして、ウーちゃんのプレートを確認する。
オレのギルドカードも確認してもらい、ウーちゃんのプレートと触れ合わせて、オレの従魔であることが証明された。
「本当にケルピーを従魔にしたのか」
「ああ。暴れたりしないよ」
「わかった。信じよう。おい、みんな!
大丈夫だ!」
彼自身も弓から矢を外して、見せた。
まわりの弓兵たちも矢を外す。
「それで?」
「巨大な魔獣というのは、ケルピーの女王のエッヘ・ウーシュカだ」
「エッヘ?」
彼もまわりの弓兵たちも、知らないらしい。まぁ、仕方ないな。
「ドラゴンよりは小さいが、それなりに大きい」
「ケルピーの女王とか言ったな。そのケルピーに関わりがあるのか?」
「ない。オレも見たんだ。それでこの子から聞いた」
「なるほど」
「済まないが、緊急依頼を受けて、薬を運んでいるんだ」
オレは、依頼書を提示する。
「おそらく、商業ギルドから案内役が来ているはずなんだが」
「わかった。確認する」
彼は部下に走らせた。
塀の奥にいた弓兵のひとりが、下を覗いていたが、その弓兵がこちらの弓兵に合図した。
「確認が取れた。そのまま、下に降りれるか?」
「ああ」
「では、行ってくれ。エッヘなんとかについて、ほかにないか?」
「一度、地上に降りたのを確認している。エサを見つけたんじゃないかな」
「エサか。ありがとう」
オレたちは、下へと降りた。馬化するウーちゃん。
そこには、槍を持った兵士たち。槍の穂先のすべてがウーちゃんに向けられていた。
『失礼なヤツラじゃ』
『そうだけど、大人しくしててね』
『心配せずとも暴れはせん』
『ありがとう』「商業ギルドの方は?」
兵士たちのあいだから、ひとりの女性が出てきた。
「私です」
「早く届けたい。乗ってください」
「はい」
彼女の手首を掴んで、引っ張り上げる。オレの背中に。
彼女の指示に従って、ウーちゃんを進める。
到着したのは、随分と豪勢なお屋敷前。
彼女が門番に要件を告げる。
すぐに門が開かれた。
「すでに連絡をしてありました」と彼女。
「なるほど」
玄関前まで来ると、玄関が開き、ひとりの男性が姿を見せた。執事だろうか?
オレは彼女を降ろしてから、降りた。
「ようこそ。それで薬は?」
バッグから取り出すようにして出す。
掲げ持つと、彼は、おお、とよろこぶ。
「早く患者のもとへ」とオレが急かす。「処方は知っています」読んだからね。
彼は、少し思案したが、折れた。
「こちらへ」
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