002【城からの脱出】
連続投稿になります。ごめんなさい。
オレたちは、あちこちで騒いでいる人々を避けながら、明るいところを目指した。とにかく、現在地を知るべく。
ようやくバルコニーへとたどり着いた。
そこから見えたのは、城下町だった。
手前には大きな建物、その向こうには平屋の商店街。その先にはバラックのように見えるものが。
「どうやら貧富の差があるみたいだな」
「それで」と勇者。「どうする?」
「魔法使い、浮遊魔法でみんなを移動してくれ。場所はあそこの屋上だ」
オレは、間近な高い建物を指差す。
大魔法使いはうなずき、詠唱する。
「飛翔!」
するとオレたち全員が浮き上がった。ゆっくりとバルコニーから空中へと躍り出る。足がつかない浮遊感に恐怖する。
ようやくたどり着いたのは、それから三分ほどだろうか。もっと長く感じたが。あるいはもっと短いのかもしれない。時計を気にしていなかった。その余裕がなかった。
その建物の屋上は、石材を並べた感じで、片側へと緩く傾斜している。雨が流れるようにだろう。
「魔法使い、もう一度、浮遊魔法を使えるかな? MPを確認してみてくれ」
「半分近く減ってるわ」
「わかった。少し休もう。奴らもオレたちがまだ城内から出ていないと思っているはずだ」
大魔法使いは、ホッとしている。
そこで賢者が口を開いた。
「おじさん、は失礼かな」
「そういえば、自己紹介もまだだったな。大崎健三郎。サブと呼んでくれ」
「サブさんですか。オレは谷川英二です。エイジと呼んでください。そいつは」と勇者を見る。
「御手洗春輝、ハルとかハルキで」
「アタシは」と聖女。「神奈川愛美。マナミでいいよ」
「私は」と大魔法使い。「高輪清美。キヨミでいい」
「みんな、よろしく。まだ逃亡したてだから詳しい話はできないが、あそこにいてもいいことがない、ということは信じて欲しい」
みんな、うなずいてくれる。
「それぞれの称号はさっきのままだ。それとスキルについては召喚勇者特有の三種がある。“異世界言語”・“鑑定”・“アイテムボックス”だな」
「あっ」賢者エイジが気付く。「あいつらが日本語を喋っていたんじゃないのか」
「そう。オレたちは奴らの言葉を使えるんだ。自然とな。あとのふたつはわかるよな?」
「鑑定はありがたいよね」と大魔法使いキヨミ。「食べ物の判別ができないと困るもの」
「アイテムボックスもね」と聖女マナミ。
「そういうことだな。で、スキルには個別のものもある。称号に絡むものが、おもだ。勇者なら剣技、賢者なら棒術だな」
「サブさんは?」
「アイテムボックスのサブスキルだ。“バキューム”という」
「バキューム? 確か、さっき叫んでいましたね?」
「あぁ。詳細を指定できるんだが、あの時点ですでに指定しておいたんだ。城内の金銀財宝と武器防具なんかをね」
「そういうことですか。だからあんなふうになったんだ」
みんな、納得。
「でも」とキヨミ。「どうして魔法を知っているんですか? 使えるんですか?」
「使えない。まぁ、生活魔法くらいは使えると思うけどね。MPもあるし」
「ならなんで?」
「その前にMPは?」
ステータス確認する彼女。
「だいぶ戻ってきたわ」
「なら次へと飛ぼう。もう少し離れておきたい」
みんなの同意を得て、逃亡を続けた。
面白ければ、ブックマーク、評価をお願いします。




