197【昇級?】
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少し長いため、3話ではなく2話連続投稿します(1話目)
「あっ、そうだ。二つ名はいりませんからね」
一瞬、ポカンッとするギルマス。だが、すぐに笑い出した。
「そうだな。煉獄の実使いなんて、恐ろしがられるだろうよ。悪くはないがな」
また、笑う。
「本気でやめて」うんざり。「煉獄の実を使ったことも内緒がありがたいんだけど?」
「そこは、こちらも明かさないさ。オレも使ってみよう、と思うバカもいるだろうからな」
「その方がいい。扱いは慎重にしないと、ケガでは済まないからな」
「そのとおりだ。さて、話は変わるが、おまえたちをB級に昇格する」
「いや、待ってくれ!」と怒鳴ったのは、ドレックだった。「オレたちには、B級なんて受けられない!」
「どうしてだ?」
「簡単だ。オレたちは、三人でひとつのパーティーじゃない。護衛している商人は、幼馴染だ。五人でひとつのパーティーなんだよ。昇級したらアイツらと別れなければならん。それは受け入れられん」
「ふむ、なるほどな。ならば、そのままとしよう。だが、《竜の逆鱗》は、受けられるよな? ダルトンとランドルフというS級がふたりもいて、ほかがC級ばかりじゃ、バランスが悪い。それにオーガの群れを屠ったヤツがC級なわけがねぇだろう?」
「みんなは?」
若者四人に尋ねる。
「あれは」とハルキ。「作戦勝ちでしょ。武器もあったけどさ。その武器をうまく使うやり方は、サブさんがいなくちゃ、有効じゃないと思うよ」
「そうです」とエイジ。「いい選手がいても、監督が作戦を考えてくれないと、ダメなんです」
女子ふたりも、うんうんうなずく。
「つまり、自分たちはこのままでいい、と?」
「そうです。それに先日、昇級したばかりですよ? ちょっと早くありませんか?」
「一対一で」とハルキ。「オーガとやれるか、微妙でしょ。オレ、そこまで自信過剰じゃねぇし」と苦笑い。
「私も」とキヨミ。「ひとりでオーガ一体を倒せる自信はないです」
「私なんか」とマナミ。「絶対無理です」
オレは、ギルマスに向く。
「このとおりです。彼らが自信を持って、オーガと闘える、と言えるようになるまでは、昇級なんてダメです」
「なら、おまえはどうなんだ、サブ?」
「オレ? もうB級ですけど?」とギルドカードを出して、見せる。
「なぁにぃ!?」とダルトンが叫ぶ。いつものことだけど、うるさい。「いったいいつのまに!」
「ええと」思い出す。「ユキオウの狩りに付いていったときの帰りに、冒険者ギルドに寄ったら、上げられた」
「なんで言わないんだよ!」
「忘れてた。ごめん」
「あれ?」とエイジ。「オレたちが昇級したときは、もしかしてもう?」
「ええと、うん。昇級してた。言わなかったのは、みんながよろこんでいて、言い出しにくかっただけ。そのあとは、単に忘れてた」
あはは、と笑ったのは、マナミだった。
「サブさんらしい」
「そうね」とキヨミも同意して笑う。
「そうなると」とギルマス。「昇級しない、ということか?」
「そうなるね。それに昇級しても依頼には応えられないだろうし」
「ん? どういう意味だ?」
「旅を続けるから。ドレックたちもそうだろう?」
「もちろんだ」
ギルマスが思い出したようだ。
「忘れてた。旅の途中だったな。なら昇級は無意味か。わかった。取り下げるよ」
「すまんな。今回みたいな事件ならば、なんとかしようとするだろうけど、変な依頼は受けたくないんでな」
「了解だ。こっちとしては、残念だが、仕方あるまい」
ギルマス執務室を離れたあと、受付嬢の案内で解体場へ。解体スタッフと話す。
「話は聞いている。で、何体だ?」
「全部で、四十八体」
「うわぁ。で、マジックバッグに入れているのか。時間停止じゃねぇよな」
「時間停止だよ?」
「おっ、ホントか! なら四日くらい、町にいられねぇか? 日に十二体はなんとか捌くからよ」
「じゃぁ、今日、十二体、置いていきます。明日、明後日、明々後日で、全部か。ドレック、そっちはどうする?」
「まだふたりと話せていないから、なんとも言えないが、明後日には出たいところだな」
「わかった。とりあえず、そっちに合わせる方向で調整しよう。解体、お願いします」
解体スタッフにお願いした。
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