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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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196/648

196【総攻撃】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


長いため、1話目のみ投稿します。

 翌日。集落から部隊が移動を開始した。

 総勢十六体。大人ではない個体も動員されたか。

 彼らが、街道に出る前に、オレたちは配置に着いた。

 彼らの狙いは、決まっていたらしい。進路を町へと向けたのだ。

 だが、心配はしていない。なぜなら、ゆうべのうちに、すでに罠を仕掛けてあるからだ。

 町に行こうと、村に行こうと、同じ罠が仕掛けてある。


 その罠に気付いたらしく、隊列が止まった。

 それもそうだろう。これ見よがしに街道を横切って張られているのだから。

 それは、いくつもの煉獄の実をぶら下げたワイヤーを、高さを変えて、張られたものだ。実は、すべてが実ではなく、半分ほどが少量だけ入れたフェイク。割れれば、それなりに粉を吹く。

 オーガたちが戸惑っている。ワイヤーを切って、前進することもできるのに。つまり、オーガたちは、これが何なのかを知っているのだ。

 彼らが後方へと進路を変えようとして、足が止まった。

 すでに同じ罠が仕掛けられていたのだ。

 それだけではない。

 街道脇にも張られていた。

 そこに煉獄の実の四角いリングが完成した。もうオーガたちはここから出られない。逃げようとすれば、煉獄の実を割ることになる。そうなれば、もがき苦しむことになるのだ。

 オロオロとするオーガたち。

 その周囲を隠遁のローブで隠れたオレとマナミが赤い煙を撒きながら飛びまわる。

 突然の赤い煙に、オーガたちは対処できずに顔を両手で覆う。叫ぶ。

 内側のオーガにも吹きかける。

 これで十六体すべてに吹きかけ終えた。

 念のため、開いた口にもひと吹きしておく。

 オレはフードを下ろして、合図する。

 オレとマナミを除いた全員が、剣を振るい、オーガたちの苦痛を終わらせていく。


 すべてを回収し終え、オレたちは集まった。

「あとは」とハルキ。興奮気味だ。「集落だけですね」

 オレは首を振った。

「集落には手を付けない」

 愕然とするハルキ。

「なぜですか?」

「オレも最初は皆殺しを考えていた。だが、彼らはオレたち人間に危害を加えたわけではない。街道に出てこなければ、討伐する必要もない。あとの十六体は、ボスを除けば、メスと子どもだ。今回はその子どもの一部も連れてきた。これ以上の討伐は、虐殺だぞ?」

「で、でも成長すれば、また被害が――」

「わかっているさ。だがな、全滅するとどうなるか、考えてみてくれ」

「えっ?」

「オーガの人口が、三分の一になった。しかも戦士級がほぼひとりもいない。おそらく、自分たちが喰う分を得られるかどうかだろう。だが、これが全滅となると?」

 その問いには、エイジが答えた。

「それまで狩られていた魔獣が増えますね。そうすると食物連鎖のバランスが崩れてしまう。増えた魔獣がその分、エサを必要として、食べてしまう。それこそ全滅するくらいに。そうなると、この森が崩壊するか、この街道を使って、魔獣が人間を襲う?」

 うなずくオレ。

「スタンピードが発生する可能性もあるわけだ。わかるか、ハルキ?」

 彼もうなずいた。興奮も落ち着いている。

「わかりました。さすがにオレのせいでスタンピードが起こったなんて、嫌ですからね」と苦笑いしてくれる。


 オレは、街道脇に、オーガたちの大斧を組んで、墓標というか、オーガへの警告にした。街道に出てくるな、という警告に。

 そこに木の板の札をぶら下げた。“この奥にオーガの集落あり、注意されたし”という文を書いて。人間への警告である。


 ダルトンとラキエルに、先に町へと報告に向かってもらう。

 残ったオレたちは、その場の片付けをしてから、浮遊して、町へと動き出した。

「なぁ」とドレック。オレのとなりを飛んでいる。「さっきのスタンピードの話なんだが、オーガを全滅すると、スタンピードになる、って本当なのか?」

「スタンピードは大袈裟だけど、自然のバランスが崩れて、それが人間にも影響を与えるのは、確かだよ。少なくとも近場の町や村は襲われるだろうな」

「なんか、すごいな、おまえたち。そんな知識もあるのか」

「オレたちの国は、知識が多くてな。しかも基礎となる知識は誰もが教えられるんだ。小さいうちからな」

「そんな国、聞いたこともない」

「まぁ、そうだろうな。ちょっと遠くて、帰れなくて、オレたちも困っているんだ。そこをランドルフとダルトンが仲間になってくれて、こうしてやっていけているんだ」

「そういうことだったのか」


 ヘイサト町に到着したのは、一度、野営をした翌日の昼だった。

 門衛にギルドカードを示し、門を(くぐ)る。

 ミゼス町でのスノータイガー討伐(結果はオレが従魔化で解決した)のときのように、行列は出来てはいなかった。


 だが、冒険者ギルドに入ると、喝采に包まれた。怯えた顔はひとつもない。すでに討伐されたのは、伝えられていたらしい。


 受付嬢のひとりに案内されて、ギルマス執務室へと入る。

 ギルマスとダルトンがいた。

 促されて、ソファーに座る。

 受付嬢がお茶を出してくれる。

「彼から話は聞いた。全滅しない、と決断したそうだな。なぜなのか、きちんと聞きたい」

 ダルトンを見ると、肩をすくめる。

「オイラも意味がよくわからなかったんだ。一度は納得したけどさ。それを人に説明するのが、ねぇ」

「はいはい」面倒臭かったのね。


 そこで、全滅するとどうなるか、を説明。結果がスタンピードだと説明。

 それゆえに、これ以上の危険はなくなった、と判断したと説明。


「ううむ。まだ納得できないが、説明どおりならば、規模が大きくなるのは、わかった」

 とりあえず、ひと息つく。

「今後、街道のあの地域には、警戒するように通達しておく。ほかにあるか?」

「倒したオーガはどうする?」

「買い取る。革鎧の材料になるからな」

「なるほど」

「討伐報奨金も一緒に出す」

「どちらも人数で割って、それぞれのパーティーに分けて欲しい」

「いやいや」とドレック。「ほとんどおまえたちの手柄だぞ。もらえねえよ」

「いいや。きちんと仲間として働いてもらったんだ。受け取る権利がある。みんなもそう思うよな?」とみんなを見る。

 もちろん、とうなずくみんな。

「いや、しかし」

「なら、これをひと箱、持っていくか?」

 オレは、煉獄の実をひとつ取り出す。

 みんなが遠ざかる。

「お、脅しに使うなよ! わかった! 報酬を受け取るから、しまってくれ!」

「よろしい」としまう。

「そんなの、もらっても、怖くて、持っていられねぇよ」とホッとしている。

「本当に」とギルマス。ちょっとボーッとしている。「煉獄の実で倒したんだな」

「本当だって、言ったでしょ」とダルトン。「聞いてよ。この人、ウソだウソだって信じてくれなかったんだよ」

「ふつうは」とランドルフ。「信じられんさ。煉獄の実を武器にするなんてな」

「おまえらだから」とドレック。「扱えたんだ。装備一式、用意するだけで、いくらかかるんだか」

「装備?」とギルマスが食い付いた。

 オレが出して見せる。

 ひとつひとつを手にするギルマス。

「これはどこで手に入れたんだ?」

「自作ですよ」

「これだけでひと財産だろう?」

「でしょうね」

「それを人数分?」

 うなずくオレ。

「だいたいこの透明な膜はなんなんだ?」とゴーグルをつつく。

「ガラスというものです。水晶だと思ってください」

「水晶ねぇ。こっちの布が貼ってあるのは?」とマスクをつつく。

「ガラスは目を守るため、それは口や鼻を守るための道具です」

「あぁ、それで煉獄の実から守るのか。それだけで防げるのか?」

「まぁ。でも肌も守った方がいいでしょうね。クリア魔法も使って、粉を払う必要もあるし」

「よく対処法を知っていたな」

「煉獄の実によく似た効果を持つ野菜があるんだ。それを加工すると、同じようなものができる」

「野菜? つまり、食べるのか?」

「ああ。それを好んで食べる人は多いな」

「信じられん」と首を振るギルマス。

「ま、そうだろうな」

 オレも激辛ラーメンとか激辛カレーとかを食べる人々を信じられない目で見ることが多い。見ているだけで、汗を掻く。

 カレーでいったら、中辛が好みの味だ。少しは甘くてもいい。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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― 新着の感想 ―
先に全滅させないことのコンセンサスを得てから行動するのが本来の遣り方でしょうかね。 サブの想定通りにならなかったら、この後の全責任を被ることになる。なので責任回避のためにも偉い人達との意見の摺合せは必…
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