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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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195/648

195【空からラキエル、地上にオーガ斥候隊】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


長いため、1話のみ投稿します。

 前回の斥候隊討伐から、また二日後。

 索敵が反応した。

 こちらに向かっている。

 ラキエルにケルピー化してもらい、上空から見てもらう。ラキエルは、ブツブツつぶやいていたが、次のひと言で文句をやめた。

「わかったよ。仕方ないな。ウーちゃんにお願い――」

『オレが行く! ウーちゃん様が行なうようなことではない!』

 ラキエルがケルピー化すると、ドレックたちは腰を抜かしていた。あれ、説明してなかったっけ?


 しばらくして、ラキエルから念話が。

『見つけた。デカいのが二体にふつうのが六体。デカいのは、斧を持っているな。ほかは棍棒に見える』

『縦に並んでいる?』

『いや、ふつうのが前と後ろに三体ずつ。デカいのが真ん中』

『了解。ありがとう。戻ってきたら、ゴブリンをやるな』

『ふたつ!』

『はいはい』


 全員にその情報を共有する。

「作戦は変更だ。といってもたいした違いはない。とにかく、オレがデカいのに煉獄の実を試してみる。おそらく、大慌てになるが、すぐに警戒体制に入るはずだ。すぐには手を出すな。オレの合図を待て。いいか?」

 みんながうなずく。

「合図のあとは、臨機応変だ。まぁ、いつもどおりでいいか。よし、散開」

 前回と同じく、街道の左右にバラける。


 ラキエルが戻ってきたので、背中にゴブリンを乗せ、裏で食べるように言う。

 それからオレは、ゴーグルと業務用マスクの上からマスク、手には不織布手袋をして、隠遁のローブをかぶり、浮遊する。視野が狭いわぁ。


 接触ポイントの上空に到着。

 街道の向こうから、オーガの隊列が歩いて近付いてきている。

 ラキエルの報告どおりの隊列だとわかる。

 それに確かにデカい個体が二体いる。

 デカいし、肩に大斧を担いでいる。手作り感、ありありだな。

 遠近感が狂っていて、距離感がわからない。だが、木々の間隔から推測する。約二百メートルと少し。

 隊列は、街道の幅が狭く感じるほどだ。

 今すぐ近付いて、煉獄の実の餌食にしたくなる。が、我慢する。

 オーガたちの歩幅のせいか、意外と早く近付いてくる。

 よし、接触ポイントに来た。

 高度を下げて、デカいヤツの右側に近付く。選んだ理由は、デカいから。単純にこの斥候隊のリーダーだと思って。

 アイテムボックスから、このときのための道具を出して、ハンドルに手を絡める。

 先端を突き出して、トリガーを引く。

 プシューッという音とともに、赤い煙が吹き出す。スプレーだ。

 目標のオーガが、音に反応して、こちらを見た。

 赤い煙に顔が覆われる。

 次の瞬間、叫びとともに顔面を両手で覆うオーガ。

 その開いた口に、もうひと吹きしてやる。

 今度は、ノドを押さえるオーガ。

 ほかのオーガたちが、そのオーガを見る。わけがわからない顔だ。

 だが、すぐに周囲を警戒する。

 オレは、もう一体のデカいヤツに近付き、顔にひと吹き。

 こちらも顔面を押さえる。

 大口を開けたので、もうひと吹き。

 さっきと同じく、ノドを押さえるオーガ。

 後ろのオーガたちの上から、プシューップシューップシューッとかける。

 そのあいだに、さきほどのデカい二体が地面に倒れ、もがき苦しむ。

 後ろのオーガたちが、顔面を押さえる。

 前方のオーガたちが、こちらを見る。

 そちらに向かい、三回、プッシュ。

 こちらも顔面を押さえる。

 そこでオレは、フードを降ろし、隠遁を解く。

 みんながこちらを見つけたので、手で合図した。

 木々の影から出てくる彼らは、全員が防備を固めていた。

 オーガが次々に(ほふ)られていく。

 オーガたちは、最後まで、煉獄の実の粉に、苦しんで果てた。


 オーガたちの遺骸をクリアして、回収する。クリアしないと、出したときに、粉が舞う可能性があったからだ。危険物危険物ぅ。

 ついでに自分たちもクリア。

 それから集まって、反省会。

「すごかったなぁ」とダルトンが第一声。

「いやぁ、あそこまでの反応だとは思わなかったよ」とドレック。仲間のふたりもうなずく。

「でも」とランドルフ。「死ぬまでは、いかなかったな」

「その前に討伐したからね」とオレ。「そのままだったら、かなり疲弊しただろうな」

「抵抗できない感じでしたね」とハルキ。少し物足りなさそう。

「煉獄の実で、潰せると思う?」とダルトンがオレに問う。

「たぶん、オレたちだけでは、難しいと思う。今回のヤツラは、明らかにこっちが強いヤツを抱えていて、斥候隊がやられているのをわかってやってきた。その連中が帰ってこない。おそらく今度は斥候隊レベルではなく、殲滅を目的に来るんじゃないかな」

「可能性あるね。あるいは、町の方に目標を変更するか」

「そっちもあるか」

「どうする?」

「そうは言われてもなぁ。町に知らせても半日。そこから打ち合わせて、人を出すとしても来るまで一日半。対応しようとする人間がいるかどうか、も問題になるな」

「そう。かといって、村は避難しただろうから、援軍は望めない。もしかしたら、次は二日も待たない可能性もあるね」

「あるな。となると」と考え込むオレ。

「どっちにしろ」とランドルフ。「町には知らせる必要があるな。それなりに斥候隊を潰したし、今回の斥候隊のことも知らせて、対策を協議させた方がいい」

「だな」

「わかった。ダルトン、頼めるか?」

「おう」

『ラキエル?』

『何?』

『食べ終わったか?』

『まだ』

『急いで、頼みたいことがあるんだ。まぁ、ウーちゃんでも――』

『ウーちゃん様を使うな!』

『ならやってくれるな?』

『おう。急いで喰う』

 食べてる最中だったか。

『すまんな』

 ダルトンに、これまでのこと、これからのことを頼む。

「場合によっては、オレたちだけで、数を減らしに行くから」

「わかった。それも伝えておく。でも無理するなよ?」

「ああ。準備をして、万全な状態で挑むよ。無理を通すつもりもない。手柄を残そうか?」と茶化す。

「これ以上、昇級するつもりはないよ」と笑う。


 ダルトンがラキエルに乗って、走り去った。もちろん、空を。


 オレはウーちゃんに乗せてもらって、オーガたちの集落のようすを確認する。

 彼らは、軍備を整えていた。軍備といっても大斧や棍棒、大盾だが。

 軍備を整えている、ということは、確実に強者との闘いを想定している、ということだ。

 デカいオーガたちが、何体もいる。

 索敵では、三十二体。そこにはメスや子どもも含まれる。それらを除外すると、十体ちょっと。

 子どもの討伐は、女子ふたりには、酷な仕事だろう。

 となると……

『ウーちゃん、ありがとう。戻ろう』

『もういいのか?』

『ああ』



 出発して、一日で、ダルトンは戻ってきた。

「誰も助けに来ない」

「そんなことだろうと思った」

「なんとかして欲しい、とはギルマスが言っていたけど」

「まぁ、わかるけどな。あのあと、集落を見てきた」

「どうだった?」

 報告する。

「次は、総攻撃かな?」

「可能性は高いな。煉獄の実と道具は、準備できている。まだ決断はできないが、休んでくれ」

「サンキュ」

 どうやら、かなり疲れているようだ。今のうちに休ませないとまずい。


 ダルトンを除くみんなで、計画を練る。

 どちらにせよ、次の斥候隊(おそらく総攻撃部隊)を叩く。村に行こうが、町に行こうが、その前に叩く。

 集落の殲滅はそれから考える。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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