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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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194/648

194【オーガ討伐生活と唐辛子?】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


長いため、1話のみです。

 新たな斥候隊が来たのは、それから二日後。

 事前に、オレの索敵が発見し、倒すために、街道の左右に陣取る。


 斥候隊は、今回も八匹。

 今回は、ハルキのマグマバレットを後ろの三体に浴びせ、前の五体を水球による口封じと土魔法による足止めをする。そこを剣で足首を斬る。あとは削っていく。


 間近に来た。

 攻撃開始。

 ハルキのマグマバレットが飛んでいく。

 飛翔音を聞きつけたオーガが、そちらを向く。

 後ろの三体が顔面に来るマグマバレットを避けようとしたが、ホーミングして、顔面を捉えた。そして、広がる。

 顔面に広がるマグマバレットの熱に、火傷の痛みがオーガを襲う。それに息をしたくても、口が塞がれていて、呼吸がままならない。目も塞がれているので、周囲の状況もわからない。

 そんな三体を見る余裕もないほかのオーガたち。

 水球が頭を覆い、地面が両足を固定する。

 そこを剣で足首を斬っていくオレたち。

 痛みとアンバランスになって、倒れるオーガたち。

 そのオーガたちの身体のあちこちを斬っていく。

 だが、オーガたちも痛みを無視して、暴れる。

 そこへハルキが剣を振るっていく。

 すでにマグマバレットを受けた三体は、斬り倒されていた。

 一体、また一体と(ほふ)られ、最後の一体になった。

 すると水球が解けた。

 水の円盤になる。

 次の瞬間、その水の円盤が、その一体の首に吸い込まれ、オーガの抵抗が終わった。

 その首が落ちたのだ。


「今のは?」とキヨミに問う。

「水を糸のようにして、絞りました。粘土を糸で切るような感じですね。もっと早く気付けばよかったです」

「いや、いい手だ。コントロールは難しい?」

「そうですね。最後の一体だったんで、大丈夫でしたけど、それ以上は難しいです」

「わかった。練習しておいてくれ。水球の前に使って、数を減らす方向で使いたい」

「わかりました」


 夕食後のお茶休憩。

「こんなに快適でいいんだろうか?」とドレックたち。笑っている。

「いいと思うよ」とダルトン。完全にくつろいでいる。「ふつうなら、こんな斥候隊潰しなんて、やらないよ。パーティー集めての集落襲撃が一番いい。でも集めようにもいないんだからな。だからといって、村の襲撃がわかっているのに、見て見ぬフリなんてできないし。たまたまオレたちがいたってだけさ」

「悪いな」とオレ。「巻き込んでしまって」

「自分から巻き込まれたんだ。文句はないよ」と笑うドレック。「だが、順調でよかったよ。まぁ、これからだろうけどな」

「そうだな」とランドルフ。「これで三度目。ヤツラもバカじゃない。討伐されたと考えて、強いヤツを出してくるに違いない」

「そうだな」と彼らは気を引き締める。

「ちょっといいですか?」とマナミ。

「ん?」

「話は全然、変わるんですけど、“唐辛子”ってないですかねぇ?」

 唐突だな。そういえば、(から)い食べ物、こっちで食べたことがないな。

「“唐辛子”かぁ。そういうのもあるとうれしいよな」

 索敵条件を変更して、唐辛子を探そうとする。ない。辛子成分を内在する植物に切り替える。

「あった。お取り寄せっと」

 さっそく収集する。

 取り出して、鑑定。

 見た目は、野球ボール大の真っ赤な木の実。表面がシワシワでプラスチック製に見える。

 ドレックたちから、“それは”という声が出た。身体も引いている。

「毒ですか?」

 ドレックたちは、うんうんうなずく。

「毒、じゃないけど」というオレを信じられないという顔で見るドレックたち。「ううむ。カプサイシンを凝縮して、中のタネを守っているんだな」

「凝縮ですか。タバスコ?」

「いやいや、たぶん十倍は(から)いよ、これ」

「それって」と身を乗り出すキヨミ。「武器になりませんか?」

「えっ?」

「いや、小説で、“唐辛子”の粉末を敵に撒いて、相手の戦意を奪う、っていうのがあって」

 オレたちは、オレの手のひらに乗る果実を見る。それからお互いの顔を見た。

「ちょっと危険じゃない?」

「風の向きを気を付ければ。あとは、マスクして、ゴーグルして」

「怪しい格好が必要なのね」

「いやいや、何を言っているんだ?」とドレック。「それ、煉獄の実だぞ。それを破裂させたら、苦しみ抜いて、死んでいくんだ」

「つまり、破裂させれば、いいのか?」

「破裂させるな! なんで知らないんだ!」

「なんでって、言われても、なぁ」

 ダルトンとランドルフが、いつのまにか、オレの風上に立っていた。

「何、逃げてるんだよ」

「ドレックたちの言うとおりだからさ」

「オレもそれには関わりたくない。それで魔獣が苦しんで死んでいくのを見たことがある。その名前どおりなんだよ」

「じゃぁ、オーガに当てたら?」

「苦しんで死ぬだろうな」「うんうん」

「そっか」

 とにかくしまった。

 それで、ホッとする五人。

「じゃぁ、次の斥候隊に使ってみよう」

 その途端、五人が引く。

「どのくらいの効果があるか、確かめないと使えないだろう?」

「使うって?」とダルトン。

「オーガの集落襲撃に。うまくやれば、オレたちだけで、片付けられるんだぞ」

「煉獄の実だけで、か?」

「危険な賭けじゃないぞ。風に乗せて撒けばいいだけだ。まぁ、多少は生き残るかもしれないが、疲弊したオーガなら、相手にもならないだろうな」

「オレたちは?」

「もちろん、防備は固める。まぁ、作戦は、斥候隊の反応次第かな」

 そのあとも喧々諤々(けんけんがくがく)あったが、斥候隊に使うことは、決定した。


 オレは作業小屋を出して、そこで煉獄の実の解体作業を行なうことにした。

 道具類を並べてから、不織布マスク(肌にぴったりの業務用を模したもの)とゴーグルと不織布手袋を装着。

 ガラス容器の中に、煉獄の実を置き、ガラス板でフタをする。

 どうなるのかわからないので、大袈裟なくらいな方がいいだろう。オレも命は惜しいし。

 鋭いメスをフタの隙間から差し入れ、煉獄の実にそっと当てる。

 メスに力を静かに入れていく。

 皮に食い込むのがわかる。

 風船のようには、割れない。

 ゆっくりとノコギリを使うように、引いたり押したりしていく。皮に少しずつメスの線が描かれる。

 少しすると、開いたところから、赤い煙のような粉が舞い上がっているのに、気が付いた。

 すごく細かい、ということか。これを見ているだけでも、くしゃみが出そう。我慢するよ。ここでくしゃみをして、手元がブレたら、穴が突然大きくなって、空気が入り込み、粉が広まろうとする。

 慎重に煉獄の実の皮を切っていく。

 四分の一周ほど、カットできた。

 容器を九十度まわす。

 それからまたメスを入れ、四分の一周ほどカット。

 そのあいだにも細かい粉の煙が湧いてくる。

 メスを止めた両端にメスを入れ、皮を外す。

 その途端、赤い煙が容器の中に充満し、溢れ出てきそうになり、メスを抜いて、フタを閉じた。危ない危ない。

 メスにクリアの魔法をかけて、きれいにする。

 ふむ。これを活用しようとするならば、専用の道具が必要だね。

 ブツブツつぶやきながら、思考と製作を行なう。

 時間は知らぬ間に過ぎ去り、朝まで没頭していた。


※煉獄の実

  独自植物。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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