192【オーガ斥候隊の討伐】
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少し長いため、3話ではなく2話連続投稿します(1話目)
ヘイサト町に到着したのは、それから一日半を少し過ぎたころだった。それまで誰とも出会わなかった。
門衛にギルドカードを出して、オーガの集落のことが、どういう話になっているのか尋ねたが、混乱している、と言う。
「冒険者ギルドに問い合わせてくれ」
「わかった」
直接、冒険者ギルドに赴く。
中に入ると、冒険者たちが右往左往していて、落ち着かない。
よく見なくても彼らが上位冒険者ではないのはわかった。
ダルトンとウーちゃんの姿を探したが、その場にはいない。
受付に行き、受付嬢に尋ねる。
「昨日、S級冒険者のダルトンという男が――」
それだけで受付嬢に制止された。
「お名前をお願いします」
「サブと言います」
「どうぞ、こちらへ」とイスから立ち上がり、案内してくれる受付嬢。
二階の奥の部屋のドアを受付嬢がノックして、オレが来たことを言うと、入室を促された。
受付嬢がドアを開け、オレたちは中に入る。
中には、ひとりの初老の男性とダルトンとウーちゃん。ウーちゃんはもちろん服を着ているよ。
「サブ、お疲れ」とダルトンが声をかけてきた。「この人は、ここのギルマス、アンダーテさん」
「よろしく」
「こちらこそ。まぁ、座ってくれ」
ソファーに座るオレたち。
「オイラ、あれから半日で到着したんだけどさ。なんと――」
「上位冒険者がいなかった、だろう? 下の連中、どう見ても上位に見えなかった」
「そのとおりだ」とギルマス。「商隊の護衛に付いていかれてな。彼が来たときには、すっからかんだった」
「タイミング悪いよねぇ。とりあえず、エイベ村の冒険者ギルドには連絡したよ。向こうも上位冒険者がいないってさ。だから近隣の村へと避難するって」
「オーガの集落を潰すまで、か」
「そゆこと」
「それで」とギルマスに尋ねる。「今後の対応は?」
「応援は要請した。だが、近場に上位冒険者がいないらしい。君たちがここらで一番の上位冒険者だ」
「状況からそうじゃないかと思ってましたよ」とオレは肩をすくめる。
「オレたち《商いの風》は、無理だぞ」とドレック。「商人の護衛だけで、少数のウルフやゴブリン、オークをやるのが、せいぜいだ。おまえらのようにはいかない」
「まぁまぁ」と宥める。「オレたちだけでもダメだし、君たちが一緒でも無理だろう。それはわかっているから」
それを聞いて、ドレックはホッとする。
「すまん」
「いいって。じゃぁ」とギルマスを見る。「集落には手が出ませんね」
「報告してくれた数が間違いでなければ、な」
「間違いありません。オレが確認しましたから」
「そうか」
ギルマスは、イスの背もたれに身体を預けた。どうしたらいいんだ、という感じだろうな。
「オレたちで」とハルキ。「やれませんか?」
「集落を、か? 難しいな。あの斥候だって、戦士レベルだ。ハルキの魔法が効いたが、全員であれは使えないだろう?」
「……はい」
「それに十人でようやく倒せた。それぞれが自分たちの役割を守って、な。不意をつけたことも大きかった。集落をとなると、手がつけられないだろうな。それにキングとかジェネラルとかはもっと強い。あれだけの集落だ。必ずいる。そうだよな、ランドルフ」
「そうだな。一体だけでも強い。それが五十体以上。統率する個体もいるに決まっている」
「あのぁ」とキヨミ。「夜襲は無理でしょうか?」
「閃光弾で目を潰す?」
「はい」
「痛みで大暴れして、手に負えなくなると思うよ。近付けなくなるな」
「ありそう」
「あの」とエイジ。「集落を襲うんじゃなくて、斥候を潰していくのは、どうですか?」
「削っていく、ってことか。それが続けられるのなら、な。おそらく途中から勘繰りだして、もっと強いオーガを出してくるかもな。そうなるとこちらが対処できるかどうか。だがまぁ、出てきた案で一番かもな」
「乗り気じゃないみたいですね」
「正直な。一番、気になるのは、相手の力量だ。オーガを相手にしたのは、今回が初めてだ。今までの魔獣の比じゃない。水球で顔を覆われたのに、アイツら、たいして動揺していなかった。そう思わないか?」
「確かに、そうですね」
「あの斥候隊だけっていう可能性はあるだろう。しかし、あれが一番下のヤツだったら? 次の斥候はさらに強くなる。オレたちで対応できるか? 数が増えるかもしれない。そうなったら? とまぁ、そんなことを考えてしまうわけさ」
誰もが口を閉じてしまう。
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