189【ガラス容器を愛でる】
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少し長いため、3話ではなく2話連続投稿します(2話目)
翌朝。
ガラス容器の粗熱が取れたのを確認して、手に取る。質は充分だ。空気も入っていない。
次に、フタを手に取る。ウ冠型のフタだ。ウの最初の点をツマミにして、持ち上げる形だ。
本当は、シャーレ型を考えていたが、高校の実験準備室を思い出して、こちらにした。標本なんかが入った瓶が並んでいたのを思い出したのだ。
作業小屋を出て、新鮮な空気を吸うとともに伸びをする。ううん。
「おはようさん。早いね」とシファーさんが声をかけてきた。
「おはようございます、シファーさん。もう畑仕事を?」
「まぁね。それでどうだい?」
「できましたよ。見ます?」
うなずくので、ひとつを差し出す。
「おお、こうやって、朝日にかざすと、また別格な美しさじゃな」といろいろと傾けている。
「気をつけてください。フタは簡単に取れてしまいますから」
オレはフタを取る。
「ほぉ。そういう形にしたのか」
「ええ。扱い方を教えますね」
「頼む」
衝撃に弱い(割れる)、液体を入れたら陽のもとに晒さない(レンズ効果で火事になる)、温度の急激な変化に弱い(割れる)、直火に晒さない(割れる)などなど。
「割れたら触らずに、ホウキと塵取りで集めるようにしてください。割れた黒曜石並みに鋭いので」
「わかった」
うれしそうに、瓶を胸に抱くシファーさん。
「どうして、そんなにうれしいんですか?」
「親からオモチャをもらったような感じかのぉ。それにこれで何を入れたのか、わかりやすくなる」
「なるほど。あっ、陽に当たらなくても中のものが劣化する可能性はあります。ご注意を。あっ、カビることも」
「わかった。朝食をどうだい?」
「いただきます」
朝食は、薬草サラダと黒パンと焼いた厚切りベーコン。それに根菜ゴロゴロのスープ。
それぞれを食べる。これはこれで悪くはない。塩分控えめレシピだ。
「塩分少なめですけど、控えているんですか?」
「ん? あぁ、そういうつもりはないがね。まぁ、ほかのみんなの食事は、塩辛くてね。だから、食事に招かれても、断ることが多くてね」
「なるほどね。じゃぁ、ちょっと味を足してもいいですか?」
「いいよ」と笑む。
ということで、サラダに塩コショウを振る。軽く混ぜる。それを食す。
「塩と、黒いのは?」
「コショウです。少し前に大量に譲り受けましてね」
「少しもらえるかい?」
ペッパーミルを渡す。
使い方は、オレのやり方を見ていたので、大丈夫。
「ふむ。少しピリリとするね」
「もしかしたら、スープの方がいいかも」
オレがスープにコショウを振り入れる。それを食す。
「うん、サラダよりこっちの方がいいな」
すぐさま真似するシファーさん。
「ほぉ、なるほど。こりゃ、確かに。コショウは身体に害はあるのかい?」
「聞いたことはないなぁ。でもなんでもそうだけど、取り過ぎはダメですよ。コショウの味になっちゃうから」
「ふふふ、過ぎたるは及ばざるが如し、か」
「そういうこと」
「面白い。コショウはどうやって採れる?」
「植物のタネだったかな。それを加工してある。たぶん、もとの植物はこのへんにはないと思うよ。国外からの輸入品だから」
「そうか。残念だな。育ててみたかったが」
エルゲン国にあるかな?
鑑定さんが反応。
「エルゲン国に行くから、買えたら買ってきますよ。栽培方法も含めて。それとこのペッパーミルもね」
「それは助かる。お金はどうする?」
「立て替えておきますよ。それなりにあるから」
「頼む。楽しみだ」
お茶をしていると、キンバリーさんが迎えに来たので、シファーさんに別れを告げた。
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