187【魔導具だらけ】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
少し長いため、3話ではなく2話連続投稿します(2話目)
魔獣の襲撃はなく、翌朝を迎えた。
湯を沸かし、簡単な食事(黒パンと干し肉とお湯)を摂り、焚き火に土をかけ、火を消す。
支度を整えると、出発。
今日は、前を行く馬車のスピードが上がっている。どうやら、荷物をマジックバッグに収納して、重量軽減したようだ。
ちなみにオレたちの馬車は、見かけはたくさんあるが、中身はそんなに入っていない。バッグも膨らませてあるだけだ。だから、馬車自体は重くない。それでも浮遊はさせていない。軽いとラキエルがスピードを上げようとするからだ。
夕方。野営する。
「じゃぁ、今日はこちらのやり方で進めさせてもらうよ」
「わかった。楽しみにしているぞ」
まずは焚き火。魔導ライターで小枝に火を点ける。それを彼らのやり方どおりに移していき、火を大きくする。
「なんだ、それ?」とライターを指す商人のひとり。オックス。
「魔導ライター。商業ギルドに委託してあるから、購入可能だよ。値段は魔石なしで銀貨十枚」
「いいな」
オレたちの後ろで、マナミが魔導コンロ(点火するタイプ)を起動する。炎が出てくる。
それを見て、驚く彼ら。
「あれは、魔導コンロ。あれも委託してある。魔石なしで銀貨三十枚」
「欲しいな」
魔導コンロに鍋を出すマナミ。魔導飲用水ポットを出して、水を注ぐ。
いっぱいに注ぐと、オレに渡してきた。
オレは中身を確認してから、焚き火にかける。
「ん? カラじゃないのか?」
「いや。ちゃんと満たしたよ。魔導飲用水ポットだ。これは魔石なしで銀貨十五枚」
「魔導具ばかりじゃないか」
「うん。オレは魔導具師なんだよ」
「あぁ、そういうことか。でもどれも欲しい魔導具だ」
「旅は少ししていたから、そこで、あったら便利だろうな、と思って作ったんだ」
「なるほどな」
マナミの手際のいい調理で、料理が出来上がった。
食べた彼らは、もちろん絶賛した。
今回は、コショウは使っていない。代わりに醤油と味噌を使っている。
「塩のようだが、香ばしいニオイが、食欲を刺激するな」「肉も柔らかい」「はじめて食べた。美味い」
「今」とオレ。「調味料を作っていてな。まだ試食レベルなんだ」
「すぐにでも売れるぞ」
ほかのみんなもうなずいている。
「残念ながら、作り出すのに、結構な時間が必要なんだ。素材も身のまわりにはないから」
「素材? なんです?」
ムカゴの入った瓶を出す。
「これって、ムカゴですか?」
おっ、知ってる人がいたよ。
「おや、ご存知で?」
「ええ。でも食用になるとは思いませんでしたね。こんなに集めるのも大変だったでしょう?」
「具体的には?」
「知り合いの薬師が、薬を作る際に使う、と言っていました。なんでも薬草の不要な部分を沈殿させるのに必要なのだとか」
「ほぉ。じゃぁ、ムカゴは冒険者に採取依頼を?」
「採取は下位冒険者とか子どもに依頼するそうですが、栽培しているんだそうです。だから、町を出る必要がないので、下位冒険者でも充分な作業が可能なのだとか」
その薬師を教えてもらった。ムカゴの栽培方法を教えてもらえれば、生産量を増やせる。
「いい情報をいただきました。ありがとうございます」
オレは頭を下げた。なぜか、若者四人も頭を下げた。
それを見て、クスクス笑うダルトンとランドルフ。
彼らは、どういうことなのか、理解できず、首を傾げた。
「彼らは」とダルトン。「その調味料の信者になったんだよ。オレたちも好きだけどね」
それで理解したようだ。
「あぁ、それでムカゴの栽培ができることがわかって、調味料が作れるようになる、とよろこんでいるわけか」
みんなでうなずく。
「まぁ、確かに美味いからな。オレもできれば欲しいな」
その意見にほかの彼らも同意する。
その日の夜。
不寝番がちょうど《商いの風》たちの時間に、それは起こった。
「ウルフだ! みんな、起きろ!」
その声に、ほかのみんなも目を覚まし、武器を手にする。オレはすでに索敵でウルフの接近に気付き、剣と魔導具を手にしていた。
索敵では、十五匹。焚き火に照らし出されたのは、そのうちの六匹。しかし、その奥に光る目は多い。
「ウルフ、十五匹!」とオレが報告。「結界を張るぞ!」
結界の魔導具を起動する。
「張った! 閃光弾、用意!」
オレたち《竜の逆鱗》全員が、閃光弾を手に持った。扇型に布陣している。
「みんな! 目をつぶれ! 眩しいぞ!」
オレたち以外が慌てて目を閉じた。
「投擲!」
六人が閃光弾を投擲した。それを確認してから、オレも目を閉じた。
次の瞬間、マブタの裏が真っ赤になった。すぐに暗くなる。
マブタを開く。
ウルフたちが、目を焼かれ、その痛みで転げまわっている。
「片付けろ!」
ひとりが一匹二匹の首を斬る。
それで終わった。
自分が狩った分をアイテムボックスやマジックバッグへと収納する。
それから閃光弾を回収した。
商人ふたりと《商いの風》の三人は、あまりの手際の良さに、呆然としている。
最後に結界の魔導具を止めた。
もちろん、索敵には、ほかの魔獣の反応はない。
オレたちは、もといた場所へと戻った。
「おいおい、なんなんだ、おまえたち?」
「今のが、オレたちのふつう」
「前なんか」とダルトン。ローブを羽織る。「サブがひとりで、魔導具を使って、倒してた。しかもそんなことがあったなんて、朝になるまで、わからなかったし、言わなかったんだぜ。信じられないよな」
「そういうことだ」とランドルフ。「危険と判断したら、迷わずに起こしてくれ。討伐するから」
「不寝番」とエイジ。「お願いしまぁす」
オレたちは、すぐに眠りに着いた。
呆然とする五人を残して。
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