184【調味料】
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少し長いため、3話ではなく2話連続投稿します(1話目)
ある日、オレは、マナミに、とあるものを渡した。瓶に入れたもの、ふたつ。
「これで腕を振るってくれないか?」
どちらも透明ガラスなので、中身もわかる。が、微妙に欲しいものとは異なるので、マナミが首を傾げる。
「味見は済ませたし、鑑定もしてある」
そして、両方の名前を言う。
それだけで、彼女は何も言わずに、両方を味見する。
彼女が目を見開く。
オレを見る瞳が輝いている。
それを使った料理が出てきたのは、夕食だった。
料理が並ぶ前に、マナミがひと言。
「今日は、サブさんから提供されたものを使いました。サブさん、ありがとうございます」
オレは笑顔で首を振る。
ほかのみんなは、なんのことか、わからない。それでも料理を楽しみにしているのは、確かだ。
「では、ヤルダさん、ネイリンさん、お願いします」
彼女は自分の席に座る。
ヤルダさんとネイリンさんが、料理の皿をそれぞれの前に置いていく。
皿はフタがされていて、肝心の料理が見えない。
「フタは全員で一斉に取ってください。まずは、いただきます」
いただきます、と全員。
それからフタを取る。
途端にその香りが室内に広がる。
「なんだ、この香ばしいニオイは?」とダルトンがクンクンとニオイを嗅ぐ。
「ま、まさか」と男子ふたり。
「えっ、ウソ」とキヨミ。
キヨミにも言ってなかったか。
「ホントは、ゴハンがあれば、よかったんだけど」とマナミ。「これで我慢してね」
「醤油と味噌だぁ!」とエイジ。
「肉じゃがだぁ!」とハルキ。
「いつからですか?」とオレに問うキヨミ。「いつから作っていたんですか?」
「運動場を作ったときにね。期待させたくなくて、言わずにいたんだ。とにかく、いただこう」
オレたちのやり取りに、目をパチクリさせるダルトンとランドルフ。
「どゆこと?」
「あっ、もしかして、以前にみんなで言っていた調味料か?」
「そうだよ」とオレが答える。若者四人はガツガツ食べている。「醤油と味噌は、オレたちの世界の、オレたちの国の調味料でな。まわりにふつうにあったものだ。食べてみろ。特にランドルフは気に入るんじゃないかな。両方とも塩が入っているから」
それを聞いたランドルフは、とにかく食べはじめた。止まるどころか、若者に負けないくらいのがっつき具合。
それを見ていたダルトンが、恐る恐る食べはじめる。こちらは味を確認する感じ。
「うん、美味い。マナミの今までの料理と同じだけど、この香りがいいな。食欲が増すよ。こっちも濃厚な味だね。うん、美味い。これはエールが欲しくなるね」と上機嫌。
「わかるけど、ないよ」
ムグッ、と唸ったダルトンだが、諦めて、食べることに集中することにした。
マナミの料理は、肉じゃがとドレッシングに醤油を使ったサラダと味噌漬けにした薄切り肉を焼いたもの、それから出汁と味噌で作ったスープ。それにパン(屋敷で焼いたいつもの)。
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