181【ラジオ体操と子犬】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
少し長いため、3話ではなく2話連続投稿します(2話目)
不織布製ブラジャーを欲しがる人物が、翌日、現れた。というか、キヨミたちに連行されてきたのだが。
「あの、わ、私にも、いただけません、でしょうか?」と恥ずかしげにチラチラとこちらを見るヤルダさん。
「ゆうべ」とマナミ。「お風呂を出たときに着けているところを見られまして」と笑み。
「それで」とキヨミ。「ヤルダさんにも、と思って」
「連れてきたのね。うん、いいよ」
鑑定さんに型紙作成を頼む。指示が出てきた。
「そういえば、ヤルダさんのことをちゃんと見たことなかったな。そこで身体を動かしてもらえるかな? ふたりとも、ラジオ体操は覚えてる?」
ふたりが微妙な顔をする。
「やってみて。だいたいでいいから。ヤルダさんはふたりを真似て」
オレがラジオ体操のイントロを口遊む。
それに合わせて、ふたりが動き、ヤルダさんが真似する。
深呼吸して、終わり。
「うん、これで型紙ができるよ。あっ、ショーツもセットだよな?」
もちろん、とふたり。ヤルダさんはなんのことかわからず、首を傾げる。
「サーリさん、どうします?」とキヨミ。
「待って」鑑定さんに依頼。「やっぱり動いてもらわないとダメだな。よし、三人で行ってこよう」
やった、とよろこぶふたり。
なんで、そこでよろこぶ?
「ん? 何?」
「《人狼亭》の子どもを見たくて」「エイジが見たきりなので」
「あぁ、忘れてた。オレも見たいな」
《人狼亭》でサーリさんを呼んでもらう。
そのあいだに子どもを見せてもらった。母親の足につかまり立ちする子ども。後ろ足で立つ姿はヨロヨロしている。服装は灰色のチュニック。
「つい、先日、つかまり立ちができるようになったんですよ」と母親。
「うれしいでしょう」
「はい」と笑顔。
女子ふたりは、腰を屈め、子どもの視線に合わせて、ニヤニヤしている。
そこへご主人に連れられて、サーリさんが降りてきた。彼女だけでなく、ほかの面々も。
「サーリさん」とマナミ。「先日の依頼、受けられることになりました」
「ホント?」と笑顔。
「なんだ?」とバッケルたち。
「えと」とオレ。「乙女の秘密を知りたい?」
その言葉が意味するところに気付いたのか、全員が首を振る。
「素晴らしい。まぁ、ここではほとんど関係ないことをするから、見てても大丈夫だよ。さっ、ふたりとも頼むよ」
はぁい、とサーリさんにこれからすることを説明するふたり。それからラジオ体操をはじめた。
全員が見守る中でのラジオ体操に、サーリさんはちょっと恥ずかしげ。
それを見ていた子どもが母親の足元で、ラジオ体操を真似はじめた。つかまり立ちではあるが。可愛い。
両親もうれしそうに微笑んでいる。両親だけではなく、全員が子どもを見て、微笑んでいた。
途中、子どもがバランスを崩して、前転したときには、全員で笑った。そのことに、子どもは目をパチクリしていたが、笑っていることに気付いて、アンアンと鳴く。笑っているのだ。
母親が立たせると、またラジオ体操の真似をはじめた。
それがうれしくて、女子三人は何度も踊りを繰り返した。
しまいには、女子三人ともに額や頬に汗を流していた。
どうやら、ラジオ体操で疲れたようで、子どもがウトウトしはじめた。母親がそっと抱き上げ、奥へと連れていく。
みんなの顔が緩んでいる。
オレたちは、またな、と挨拶して屋敷に向かった。
夕食後に、ハルキとエイジに詰め寄られる結果になった。もちろん、子どもについて、だ。
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