表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

171/648

171【キューピッド】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


少し長いため、3話連続投稿します(2話目)

 ヘッジホッグは逃した。あとで、どこかに通報すれば大丈夫だろう。

 全員が回復したが、少し麻痺が残っている部分もあるらしい。

 だから、ウーちゃんが四人、ラキエルがふたりを乗せて、屋敷に戻すことになった。ウーちゃんは少し大きくなって乗せた。ちょっと驚いたが、もとの大きさを考えれば、驚くほどのことでもなかったな。

 残ったオレは、キャンプに残されたものをアイテムボックスに回収する。地面から上の、石と雪以外、と指定して。うん、変なのは入っていない。


 それから広場を出て、冒険者ギルドへ。もちろん、歩いて。


 ギルド内は閑散として……なんでこんなにいるの? 騒がしいんだけど? まぁ、飲んだくれてるから、受付嬢はヒマそうだけど。

「あっ、サブさん、こんにちは」と受付嬢が笑顔で迎えてくれた。

「えっと、報告ね。広場で冬場の訓練をしていた仲間が、今朝、パラリシスポイズンヘッジホッグにやられてね」

「だ、大丈夫なんですか?」と慌てている。

「大丈夫。もう毒消しポーションを飲ませて、屋敷に帰したから」

 ホッとする彼女。

「で、ヘッジちゃんは?」

「ん? ちゃん呼び?」

「いえ、あそこに住んでいるヘッジホッグは、有名なんですよ」と笑む。「悪さもしませんし、手を出さなければ、針も出しませんから」

「そうなのか。でもこっちは知らなかったから、手を出したのか。ふむ」

「あの、それで?」

「ヘッジちゃんね。どうやらこちらの食料が美味そうだったから近付いてきたみたい。もう逃したよ」

「そうですか。よかった」とホントに安堵している。

「あれでも魔獣だよね。最初は騒動になったんじゃないの?」

「最初は」とうなずく。「でも町の人が昔からいると言って、討伐対象から外すようにと」

「そういうことか。じゃぁ、本当にマスコット的な魔獣なんだな」

(さわ)れませんけどね」と苦笑。

 まぁ、地球でも公園にいる小動物を愛でて、ほっこりするところもあるからな。わからなくもない。近付いても逃げちゃうけどね。


「逃して正解だな。ところで、あちらの冒険者たちはなんで酒盛りを?」

「宿屋で騒ぐわけにはいかないので。まぁ、受付嬢目当ての人も多いですけどね」

「あぁ、なるほどね。みんな、可愛いかったりきれいだったりするもんな。わかるわかる。でもちょっかいは出されないの?」

「ヘタなちょっかいは、身の破滅なんです。冒険者資格の剥奪になるんですよ。まぁ、最悪ですけどね」

「あらら。でも真剣に付き合いたいという人もいるでしょ?」

「はい。そういう場合は、手紙を渡してもらっています。私はまだもらえていないんですよね」と残念そう。

「みんな、君には彼氏がいる、と思い込んでいるんじゃない? 身のまわりに、そんなふうに見える相手って誰かいない?」

 彼女が考え込む。それから、ああ、と小さく叫ぶ。

「パン屋のヤコブだ。よく(かよ)って、ちょっと長く話しているんです。そうか、それで彼氏だと思われていたんだ。そうかそうか」

「そのヤコブさんとは、そういう感じにはならないの?」

「ありませんね。だって、ヤコブには結婚予定の彼女さんがいますもん」

「なるほど。となると、君が彼氏募集中ということを表明しないと、手紙は来ないことになるね」

「そうですね。どうしましょう?」

「なんかないの? そういう、わかりやすい印とか。まさか、彼氏募集中っていう札を立てるわけにもいかないよね」

「さすがにそこまでは」と苦笑い。

 そこでこちらを睨んでいる視線に気付いた。索敵で相手を特定。詳細情報を得る。

「ねぇ、ベイクって冒険者は、君に気があるんじゃない?」

「ベイクさん? どうしてですか?」赤くなってる。気がある?

「いや、こっちを睨んでいるからさ」

「えっ、よくわかりますね。真後ろですよ?」

「そういうのは敏感でね。声をかけても大丈夫かな? 君が彼氏募集中だと」

 えっ、と本当に真っ赤になる彼女。それから、うなずいた。可愛いね。

「了解。じゃ、またね」

 手を振って、その場を離れ、カウンターへ。


 カウンターに銅貨を置いて、エールを頼む。

 もらったエールを持って、ベイクのところへ。

「おい」と声をかける。

 ベイクがオレを睨む。

「おまえ、ベイクってヤツか?」

「そうだが?」

「受付嬢から名前を聞いた。おまえ、彼女に惚れてるのか?」

 おっ、真っ赤になった。そこはポーカーフェイスだろう?

「人の自由だろうが」とそっぽを向く。

「自由だよ。そんなこと、誰が咎めるか。で、なんで彼女に惚れてますって、言わないんだ?」

「そ、それは……アイリさんには彼氏がいる、からだ」

「なぁ、それ、誰から情報だ?」

「みんな、知ってる」

「本人に確かめてないんだな」

「あ、ああ」

「いいことを教えてやる。おまえらが彼氏と思っている男には、結婚予定の彼女さんがいる。意味わかるよな」

 その場にいたほぼ全員が呆然となった。

「で、今、本人に確認を取ったが、彼氏募集中だとさ。さぁ、どうする?」

 オレは彼の前のジョッキを持ち上げた。

 言外に、行け、というサイン。

 それを汲み取ったベイクは、立ち上がり、目当ての受付嬢の前へと走っていった。

 そして、大声で。

「アイリさん、オレと付き合って欲しい!」と。

 そのあと、小さく“はい”と聞こえた。

 そこから、ベイクが雄叫びを上げ、みんなが祝杯を上げる場に変わった。

 オレはとっとと、ギルドを出た。受付嬢に手を振って。


 屋敷に到着すると、みんながリビングにいた。もう痺れはないそうだ。ひと安心。

 で、どうして、そうなったのかの話を聞く。


 S級冒険者であるふたりも初めて見た魔獣だったそうで、対応しようとしたら、針を打ち出され、すぐに身体が痺れて倒れてしまった、と言う。


 で、オレが魔獣の正体を教え、また地元でも有名なマスコットだったことを話す。

「いや、マスコットって」とダルトン。「あんな危険な魔獣を放っとくかぁ?」

「存在を知っていれば、対処は簡単だ。いい勉強になったな、ダルトン」

「それにしても」とランドルフ。「サブが来てくれて助かった。ヘタをすれば、凍死していたからな」

「礼ならハルキに言ってくれ。ハルキが外に出てくれたから、異変に気付けたんだからな」

 ハルキに礼を言う面々。

「いやぁ、痛みを感じて、すぐに針を払ったんで、毒が少しだけで済んだんだと思います。でも動かせるのが、腕だけで大変でした」

「たったそれだけだけど、こっちには大きかったよ。だって、行動をはじめたと思ったら、ひとりだけ。しかもちょっと離れたら動かなくなって。状態を見たら、毒で状態異常だとわかって。焦ったよ、あれは」

 そのあと、夕食に。もちろん、ネイリンさんだけで料理を作った。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価をお願いします。励みになりますので(汗)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ